映画と本の『たんぽぽ館』

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酔うと化け物になる父がつらい

2021年06月12日 | 映画(や行)

ダメとわかっていても、止められない

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原作者菊池真理子さんの実体験に基づいたコミックエッセイの映画化です。

 

毎日のように酒浸りで正体なく帰宅する父(渋川清彦)と
新興宗教信者の母(ともさかりえ)を持つ、田所サキ。
母はそんな父と心をつなぐことができないことに絶望したのか、
自殺してしまいます。

その後、父は男手一つでサキと妹フミを育てるため、
ほんの少しの間お酒を断っていましたが、すぐに逆戻り。
長じたサキ(松本穂香)は、相変わらず酔うと化け物のように豹変する父に嫌気がさし、
いつしか自分の心にフタをするようになっています。
彼女は、父が泥酔して帰宅した日には、カレンダーに印をつけていたのですが、
最近ではほとんど毎日に印が付くように・・・。
父はそんな自堕落な生活がたたったのか、病に冒されて・・・。

この、カレンダーの印というのが、実は父に対する無言の圧力になっていたようなのです。
日々、父に刺すような視線を投げつけていて、
ろくに口もきかず、カレンダーのバツ印だけが重なっていく。
父は毎日娘に責め立てられていることを感じてはいたでしょう。
それなら飲むのを止めればいいと思うのですが、そう簡単にそれができれば苦労はしない。
依存症というのはそういうものです・・・。

こんな中でも、不思議と妹・フミ(今泉佑唯)は、さほどに父に嫌悪を見せず、
淡々と自分の生活を送っている。
姉への共感はもちろんあるけれど、どこか姉と父の関係を俯瞰的に見ているようでもある。
この家の出来事の責任を彼女は持っていない、
という幾分気楽な感じを彼女は抱いているからなのかもしれません。
漫画家という引きこもりがちな生活を始めたサキにとって、
彼女を理解する友人も貴重な存在です。

そしてまた私は思うのです。
本作を見る限りは、この家はさほど生活に逼迫はしていませんよね。
よくある“飲んだくれ”の父親の家は、少ない稼ぎが酒代に消えて、超貧乏、というのが定番。
でもここのお父さん、飲んだくれはしても、ちゃんと仕事に行って(サラリーマン)稼いでくる。
実はこれだけでもすごく貴重なことじゃないですか。

色々と、気持ちの持ちようということもあるのかなあ・・・と思ったりしました。

<WOWOW視聴にて>

「酔うと化け物になる父がつらい」

2019年/日本/95分

監督:片桐健滋

原作:菊池真理子

出演:松本穂香、渋川清彦、今泉佑唯、恒松祐里、ともさかりえ、浜野謙太

 

泥酔度★★★★☆

満足度★★★☆☆