映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

私をくいとめて

2021年06月05日 | 映画(わ行)

もう一人の自分と会話する女

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何年も恋人がおらず、一人暮らしを続けている31歳、みつ子(のん)。
自らをお一人様と称し、独身生活を満喫しています。
彼女の脳内にはもう一人の自分である相談役「A」(声:中村倫也)が存在し、
人間関係や身の振り方に迷ったとき、アドバイスをくれるのです。
あるとき、取引先の若手営業マン・多田(林遣都)に、恋心を抱きますが・・・。

みつ子は就職をしてからそれなりに恋愛もしたし、職場の上司からセクハラを受けたりもして、
一応は歴戦のOLという体。
けれども本当はそんな出来事に傷つき、再び傷つくことを恐れていたのです。
そんな彼女を慰めるのは、自分自身である「A」。
「A」は辛辣なことも言うけれど、決して致命的なことは言わない。
そりゃそうです、自分自身なのだから。

そんな彼女に接近してきた多田もまた、みつ子と同様に恋愛に臆病に見える。
自炊ができないという多田に、みつ子が手作りの食事を振る舞うことになるのですが、
彼は決して部屋には上がらず、パック詰めした食事を持ち帰るのみ。
みつ子は物足りなく思うわけですが、
でも実は、このときの彼女にはこれくらいがちょうどいい。

ついにある日彼が部屋に上がったときにも、彼女は思わず思ってしまう。
相手の気持ちを伺って緊張するよりも、自分一人の方がずっと気楽でいい、と。
人と人との距離感の取り方が非常に難しくなっている今日ならではのストーリーに思えます。

イタリアに住んでいる、みつ子の親友がなんと橋本愛さんだったのにはちょっと嬉しくなりました。

中村倫也さんの声はなんともソフトで、こんな声と毎日会話できたら、
確かに一人暮らしも天国のよう、かもしれない・・・。

<Amazonプライムビデオにて>

「私をくいとめて」

2020年/日本/133分

監督・脚本:大九明子

原作:綿矢りさ

出演:のん、林遣都、臼田あさ美、片桐はいり、橋本愛、中村倫也

生きづらさ★★★★☆

満足度★★★★☆