映画の萌芽期を楽しむ
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時は大正期・・・、ざっと今から100年ほど前の物語。
子どもながらに活動写真の弁士になることを夢見る俊太郎と、
女優になることを夢見る梅子は仲良くなりましたが、やがて別れの時が来ます。
それから10年後、俊太郎(成田凌)はニセ弁士として泥棒一味の片割れになってしまっていましたが、
嫌になって逃げ出します。
そしてある田舎町の寂れた映画館・青木館の雑用係の職を得ます。
また、女優となった梅子(今では松子)(黒島結菜)と再会。
そんなとき、俊太郎はピンチヒッターで務めたカツベンが人気を博し、
いよいよカツベンの仕事にのめり込んでいきますが・・・。
俊太郎を追う昔の泥棒仲間(音尾琢真)、
その泥棒を追う警察(竹野内豊)等が入り乱れて大騒動に。
サイレント映画に楽士の音楽とともに独特の語りで内容を説明する弁士、
というのは日本独特のものなんですね。
その美声で女性客を虜にしたりもする。
しかしやがて登場するトーキーによって、
弁士たちは用なしとなり消えていくわけです。
そんな伝統の語り手たちへのオマージュが本作であります。
この無声映画の撮影シーンが面白い。
どうせセリフは入らないのだけれど、何かしゃべっている風に俳優は口を動かさなければなりません。
そこで「イロハニホヘトチリヌルヲ・・・」なんてしゃべったりしています。
そして、作中で上映されるサイレント映画は、
本物の古いフィルムを使っているものとばかり思って見ていましたが、
よく見ればなんとシャーロット・ケイト・フォックスさんだったり
上白石萌音さんだったりするじゃありませんか!!
だまされるところでした。
今時、よほどのご老体でなければサイレント映画が懐かしい等という人はいないでしょうけれど、
映画ファンとしてはその萌芽期を彷彿とさせるこんな作品も面白いなあ・・・。
キャストそれぞれの持ち味全開、楽しめました!
「カツベン!」
2019年/日本/127分
監督:周防正行
出演:成田凌、黒島結菜、永瀬正敏、高良健吾、音尾琢真
映画の歴史発掘度★★★★☆
満足度★★★★☆