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「おひとりさまの最期」上野千鶴子

2019年12月14日 | 本(解説)

在宅ひとり死への道

おひとりさまの最期 (朝日文庫)
上野 千鶴子
朝日新聞出版

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同世代の友人の死を経験した著者が
「いよいよ次は自分の番だ」という当事者感覚をもって、
医療・看護・介護の現場を取材して20年。
孤独死ではない、人に支えられた「在宅ひとり死」は可能なのか。
取材の成果を惜しみなく大公開。
超高齢社会の必読書。

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先に「おひとりさまの老後」で話題となった上野千鶴子さんの本、その続編です。
実は続編としてはこの前に「男おひとりさま道」というのがあるのですが、まあ、それはパス。

いよいよ、おひとりさまでどのように死を迎えるのかという核心を突きます。

つまり、「在宅ひとり死」は可能か。

いやいや、在宅ひとり死ってつまり、孤独死のこと? 
それ、社会問題じゃん、というあなたは
「おひとりさまの老後」から読み直しましょう・・・。

しかしまあ、それも無理はない。
今の常識では人は病院で死ぬのがアタリマエですものね。
けれど私は先に父母を看取りながら思っていました。
長く住んだちゃんとした自分の家があるのに、
最期はこんな病院のベッド周り一坪分くらいだけが自分の居場所で、
死ななければならないのか・・・と。
そして無理な延命措置は、本人にとってちっとも幸せそうではないということも・・・。

だから上野氏のいう、食べられなくなったら、胃ろうも点滴も不要。
人は次第に衰弱し、最期は脳からエンドルフィンが出るので苦しくない、
静かに息を引き取ることができる、
・・・ということには心ひかれるのです。

とりあえず、在宅死の要件としては

・本人の強い意志

・介護力のある同居家族の存在

・利用可能な地域医療・看護・介助資源

・あとちょっとのおカネ

 

あらら、これではやはり「ひとり死」は無理ということになってしまいますが、上野氏はさらに続けます。

・24時間対応の巡回訪問看護

・24時間対応の訪問介護

・24時間対応の訪問医療

この看護・介護・医療の多職種連携3点セットがあれば、在宅ひとり死が可能になる、と。

 

現在、地域によってはこのような実践がなされているところがあるといいますが、まだほんの少数。
けれど、これからはこのような考え方が広まっていき、
利用しやすいシステムもできあがっていくのだろうと思います。
・・・どうか、私の最期の時には私の居住地でもこんなシステムが利用できるようになっていますように・・・。

 

現在多くの高齢者施設は、最期の看取りまではしてくれなくて、
いよいよ最期の時は病院に送られてしまいます。
病院は本来救命の場所なので、延命措置を施そうとするのです。
下手をするとそこで寝たきりのままになり、あげくに病院を追い出されることに・・・。
せっかく立派な高額の施設に入ったとしても、これでは意味がない。
それなら一人でも最期まで自宅に住み続けて、
様々な看護・介護サービスを受けながら頑張った方がいいかな、と思えてきました。
自分のなじんだ家具や本や様々なものたちに囲まれながら、
その瞬間は一人であったとしても、静かに息を引き取れたらいいな、と。
(完全に夫が先に亡くなることを想定していますな(^_^;)

 

「おひとりさまの最期」上野千鶴子 朝日文庫

満足度★★★★★