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「46番目の密室」有栖川有栖

2019年12月18日 | 本(ミステリ)

第一作にして、シリーズ色満載

新装版 46番目の密室 (講談社文庫)
有栖川 有栖
講談社

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日本のディクスン・カーと称され、45に及ぶ密室トリックを発表してきた推理小説の大家、真壁聖一。
クリスマス、北軽井沢にある彼の別荘に招待された客たちは、作家の無残な姿を目の当たりにする。
彼は自らの46番目のトリックで殺されたのか
有栖川作品の中核を成す傑作「火村シリーズ」第一作を新装化。

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大好きな有栖川有栖さんの「火村シリーズ」第一作。
読んだことがあるはず・・・と思いつつさっぱり記憶にとどまっていなかったので、
このたび改めて読んでみました。

 

先に読んだ「カナダ金貨の謎」の作中に有栖と火村の初めての出会いのシーンがあって、
そのことはこの「46番目の密室」にもある、ということだったので、
気になってしまっていたのです。

大学の階段教室、講義中の出会い。いいですよね。

 

さて本作、雪の山荘というほどではないけれど、
夜に降った雪が別荘に出入りする人の足跡がないことを証明しているので、
隔絶されたこの別荘内の人物が犯人という前提があって、本格ミステリのまさに王道。
しかも密室殺人が1階と地下室で2件。
殺害されたのは、どこの誰ともわからない謎の侵入者と、
この家の主にして推理小説界の大家。
一体何がどうしてこうなったのやら、面食らうばかり。
火村シリーズ第一作としては申し分ありません。
しかも、彼が「人を殺そうと思ったことがある」ということについて、
その心中をかなり詳しく延べるシーンがあるのがうれしい。
具体的なことには触れられていないけれども・・・。

そんなわけで、今改めて読み直すのにも、なかなかおいしい作品だと思います。

 

作中でおや、と思ったのですが、有栖と火村は「皇太子」と学年が同じという文章がありまして・・・、
当時のことですから、今の天皇のことです。
実は有栖と火村はそんなご高齢?! 
これは文庫の後書きに説明があったのですが、
当初はそういう設定だったのだけれど、その後この二人は永遠の34歳になったのだとか。
なるほど~。
本作の初刊は1992年。
有栖と火村は永遠の34歳としてミステリの海を泳ぎ続けるわけですね・・・・。
本来なら有栖はとっくにミステリ界の大御所になっていて、
火村も教授になっていたのかも。

そういう二人を見たい気もしますが、
窪田正孝さんと斎藤工さんで演じられるあたりがやっぱりいいか。

46番目の密室」有栖川有栖 講談社文庫

満足度★★★★☆