映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「室町無頼」垣根涼介

2019年12月01日 | 本(その他)

時代を生き抜く力

室町無頼(上) (新潮文庫)
垣根 涼介

新潮社

 
 
 

 

室町無頼(下) (新潮文庫)
垣根 涼介
新潮社
 
 
 

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応仁の乱前夜。
天涯孤独の少年、才蔵は骨皮道賢に見込まれる。
道賢はならず者の頭目でありながら、幕府から市中警護役を任される素性の知れぬ男。
やがて才蔵は、蓮田兵衛に預けられる。
兵衛もまた、百姓の信頼を集め、秩序に縛られず生きる浮浪の徒。
二人から世を教えられ、凄絶な棒術修業の果て、
才蔵は生きる力を身に着けていく。
史実を鮮やかに跳躍させ混沌の時代を描き切る、記念碑的歴史小説。

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垣根涼介さんによる歴史小説。
ぐいぐい引き込まれます。
本作の舞台は室町時代後期。
応仁の乱前夜という、歴史小説でもあまり出てこないあたりです。

ならず者の頭目でありながら幕府から市中警護を任される道賢、
そして、百姓などから信頼を集める浮浪の徒・蓮田兵衛。
この二人が実在の人物のようです。
二人はやがて巻き起こる大がかりな土一揆で頭目として対決することになるのですが、
本作中では互いに奥底の理想が通じる関係。
というのもこのころ幕府の力は弱体化し、抑えの効かない社会では
かつてないほどに富めるものと貧者の格差が拡大。
干ばつによる飢饉で食い詰めた者や、職にあぶれた牢人が都に流れ込んでくる。
なんとかこの世の中の仕組み自体を変えられないものかと、双方考えているのです。


そんな中で双方から見込まれるのが才蔵という青年。
いえ、登場時はまだ少年と言うべき年頃なのですが、
牢人となった武士の子ですが、父親も亡くなり、天涯孤独で己一人生きるのに精一杯でした。
そんな彼が道賢に見出され、兵衛に預けられた後、
一人の老人の元で壮絶な棒術修行に取り組むこととなるのです。

この修行のシーンがとても詳しく描かれているのですが、なんとも壮絶。
命をも落としかねないものなのですが、
そこで死ぬのならばそこまでのものだった・・・と言うこと。

元々の素質もあるのでしょうけれど、
才蔵は期待通りの力と技を体得し兵衛の元に返ってきます。
やがて、怒濤のような土一揆が始まる・・・

 

戦国時代の幕開けを予感するような、血湧き肉躍るストーリー。
あ、そうそう、素晴らしく魅力的な女性も登場します。
彼女に翻弄される男たちは、
「結局こんな荒くれの自分たちも、女には到底かなわないのだ・・・」
などとぼやき会うシーンもあったりするのがお楽しみ。
面白かった!!

 

図書館蔵書にて(単行本)

「室町無」垣根涼介 新潮社

満足度★★★★★