映画と本の『たんぽぽ館』

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誰も守ってくれない

2019年12月19日 | 映画(た行)

あまりにも過剰な誹謗中傷

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15歳沙織(志田未来)は父母・兄との4人暮らし。
ある日突然家に警察が乗り込んできて、兄が殺人犯として逮捕されてしまいます。
大変なのはそれから。
家の周りにはマスコミが押しかけ怒号が飛び交う等の騒ぎに。
とても外へ出られる状況ではありません。
そんなところへ被疑者家族の保護を命じられた刑事・勝浦(佐藤浩市)が来て、
沙織を密かに連れ出します。


その間、母親は自殺・・・。
しかしその後も勝浦と沙織への探索・追跡は続き、
ネットでもこの事件と家族の逃走のことで大炎上。
こんな過剰なバッシングの中、孤立し追い詰められていく沙織・・・。

 

15歳の少女にとってはあまりにも過酷な状況でした。
でも本作はかなり現実に近い物語なのでしょう。

はじめの方で、いきなり家に乗り込んできた警察は、
これから犯人が実名報道されるので、すぐにあなたたちの名前を変更してもらいます。
といって離婚届を差し出し、強引に署名捺印を迫ります。
一度離婚してから、妻の旧姓で新たに結婚するという手はず。
そうでもしなければどこへ行っても「殺人犯の家族」という世間の目から逃れられないというのです。
警察の親切心とはいえ、あまりに悲しい現実・・・。

 

一方勝浦にも、捜査上のミスで一人の子どもを死なせてしまったという苦い過去があり、
その思いを今も引きずっています。
そして多忙な毎日の中、自らの妻と娘との関係も崩壊しかけている・・・。

 

八方塞がりの中、数日間を沙織と勝浦は「世間」から逃げ惑うことに。
突然の出来事に呆然として麻痺したような少女を志田未来さんが素晴らしく演じています。
しかしこの少女が最後にまたひどい裏切りを受けてしまう、
というのも、実に残酷。
けれどこの数日で彼女は確実に成長しますね。

 

それにしても、被疑者家族への過剰な誹謗中傷については、憤りを感じるばかり・・・。

 

WOWOW視聴にて>
「誰も守ってくれない」

2008/日本/118

監督:君塚良一

出演:佐藤浩市、志田未来、松田龍平、石田ゆり子、佐々木蔵之介

 

被疑者家族への誹謗中傷度★★★★★

満足度★★★★☆