自分の過酷な運命を知ってしまったあと、追っ手から逃げるトンマンにはかつての勇敢さ、ポジティヴさが失なわれてしまい、ここ数話のストーリー展開には少々重苦しいものがあった。その挙句に先週のチョンミョンの死である。こんなに早い段階で主要人物のひとりが亡くなってしまうとは。脚本家を恨んだりもしてみたが、そうは言っても仕方があるまい。
しかし、実の姉チョンミョンの死を目前にして、ようやくトンマンの心に火が点いたようだ。それは恨み、憎しみをエネルギーとするものだが、それにしても、今週(第25話)のトンマンの変貌振りには目を見張るばかりである。自決を図ろうとするアルチョンを諭す様は、既に王者の威厳を見せ始めている。いや~、ますます面白くなってきた。
25話にはそのほかにも注目すべきエピソードがいくつかあった。
●ピダムとトンマンは幼少時に会っていた。
赤ん坊のトンマンを連れて逃げるソファに、ムンノがトンマンの重要な役割を話す場面。トンマンのそばに寄る小さな子供がピダムである。実はピダムには隠された(驚くべき)素性があるのだが、それは後日明らかにされるだろう。間違ってもWikipediaなどで調べてはいけない。将来の楽しみが減ってしまうことになる。
●ミシルに呪いの言葉を投げかける王妃
チョンミョンの葬礼のため宮殿にやってきたミシルに対し、王妃が鬼のような形相でこんな言葉をなげつける。
おまえはきっと死ぬ
持っているものはすべて失い、奪われ、踏みにじられ
一人孤独に震えながら死ぬであろう
墓石も無く、墓も無く、跡形もなくお前は死ぬ
この国の歴史に、お前の名は、ただの一文字も残ることはないであろう
以前のネタにも書いたが、朝鮮の三国時代を伝える歴史書で正史とされる「三国史記」、「三国遺事」にはどこにもミシルの名前はないのである。
ドラマ「ヨンゲソムン」第13話のナレーションに寄れば「花郎世紀」という史料にその名があるらしいが、「花郎世紀」は一般には偽書とみなされる。従ってミシルの実在性には疑問がある、ということらしい。