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外国人記者が見たフランスの新聞。

2007-05-18 00:23:03 | 学校
ソルボンヌ文明講座は、今学期、“L'expression ecrite”(文章表現)というクラスを取っています。先日の授業で、いくつかの文章を一つにまとめるSynthese(まとめ)をやったのですが、その課題の一つが「三人の外国人記者の目を通して見たフランスのプレス」というものでした。フランスの新聞は、日本などの新聞とかなり違うと思ってはいたのですが、プロの記者の目にはどう映るのでしょうか、syntheseを書くよりも三つの文章を読むことに夢中になってしまいました。



日本、イギリス、イタリアの三人の記者がそれぞれフランスの新聞メディアについて端的に語っています。

・M. Suzuki(鈴木氏:NHK)
フランスの新聞記者の仕事ぶりは、日本の記者とはまったく異なる。フランス人記者は、出来事・事件の紹介ではなく、それらを分析し、それらについて自分の意見を述べることに精力を傾けている。しかも、しっかり論戦も張っていて、新聞というより雑誌のようだ。また、それぞれの新聞には特徴があり、個性的。ただし、発行部数は少ない。日本の新聞は部数が多いので、どうしても一般的な報道になってしまう。

・M. Bremmer(The Times:イギリス)
あまりに多くのスペースがフランスの国内政治に振り分けられているのが最も特徴的だ。記者や新聞にはっきりとした個性があり、そのコメントに差があるので、事実を知るには数紙を読まなくてはならない。もう一つの特徴は、非常に文学的だということ。18世紀の哲学者の文章を引きながら反論したりしている。そして、記者たちは、事実を追及するより、自分の意見を述べることに熱心だ。

・M. Guatelli(Corriere della sera:イタリア)
政治・経済および大事件以外については殆ど報道されないので、新聞を読んでいるだけでは今フランスで何が起きているのか分からない。また記事では多くの意見が開陳されており、ジャーナリズムというよりは、フランス文化の重要な一部となっている。その分、社会面的報道が少ない。もう一つの特徴は、記者たちが自分たちを特別な存在だと思っていること。アングロ・サクソンの国では新聞記者も普通の市民の視点で活動しているが、フランスではまだ自らを特別視している。



三人とも異口同音に言っているのは、フランスの新聞は事実の報道より、記者の意見の発表の場になっている。その結果、新聞だけではフランス社会の出来事がよく分からない。また各紙個性的なので、一紙だけでは事件・出来事の本質を知ることが容易ではない。どうも、記者の個人的意見は分かるが世の中全体の動きが見えにくい、というのがフランス新聞の特徴のようです。

こうした特徴には、誰もが何事にも一家言を持つ社会、というフランス社会の特徴が色濃く反映されているのかもしれませんね。そして、読者が記者の意見を読みたがっている、あるいはそうした役割を新聞に求めているのであれば、フランスの新聞はこれからも変わらないのでしょう。フランスは、どこまでもフランスであるようです。とは言うものの、変化を標榜し、アメリカ流の競争社会を目指しそうなサルコジ新大統領の下、フランス社会がどう変わっていくのか・・・いっそう目が離せませんね。

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