50歳のフランス滞在記

早期退職してパリへ。さまざまなフランス、そこに写る日本・・・日々新たな出会い。

新「光の画家」。

2007-05-10 03:15:53 | 美術・音楽
今、Petit Palais(プチ・パレ)で“Peintres de la lumiere, Sargent & Sorolla”(光の画家~サージェントとソローリャ)展が行なわれています。



光の画家、というと、誰を思い浮かべますか。レンブラントがそう言われることもありますが、私にとってはラ・トゥール。暗闇のなかで、一本のろうそくに照らされた静謐な空間とそこに佇む人物。あるいは、そこで手仕事をする人物。暗闇に見出した一条の光。新たな時代の息吹。そんなことを感じさせる、闇のなかの光なのですが、今回はじめて出会った画家が描くのは、明るさのなかの光。海岸沿いを歩く女性たちの顔で、服の上で、跳ねる光、強烈な光、地中海の光・・・それを余すところなく描き出しています。画家の名は、Joaquin Sorolla(ホアキン・ソローリャ:1863-1923)。


カタログの表紙や会場入り口の大型ポスターに使われているのも彼の作品です。モデルは、彼の奥さんと娘。家族をモデルにした作品を多く残しています。

スペインのヴァレンシアに生まれ、ヴァレンシア、マドリッドそしてローマで絵の勉強をしました。もちろんパリにも一時住んだことはありますが、生活のベースはスペイン。マドリッドに構えた住居兼アトリエは、彼の死後、「ソローリャ美術館」として一般に公開されています。

生まれ故郷、ヴァレンシアの碧い空、紺碧の地中海、そして、いたるところにある「光」。その光を見事なまでに捉え、描き出しています。写真やプログラムからの複写ではとてもその素晴らしさをお伝えできないのが残念ですが、ないよりはまし、と何点かご紹介しましょう。







白がこれほどまでの見事な光を演出するとは・・・この光はやはりピレネーの向こう側のものなのでしょう。ピレネーの向こう側、アルプスの向こう側は、やはり光の国。パリやオランダの光とは、光が違います。こちら側の人たちが、向こう側へ憧れる気持ちがよく分かります。

光が違えば、色彩も変わってくる。昔、『源氏物語絵巻』のローマでの展示に携わった方から、「ローマで見ると全く別物に見えた、色が異なって見えた、光のせいなのだろう」、という話をうかがったことがあります。光が違えば、見えてくる色彩も異なる。この差は大きいのでしょうね。ソローリャの絵を見ていると、どうしても向こう側、光の国に住んでみたくなります。



もうひとりの画家、サージェント。John Singer Sargent(1856-1925)。アメリカ人の両親の下フィレンツェに生まれる。パリやロンドンに住みながら、肖像画や風景画を描く。もちろんアメリカでの制作も多い。作風がソローリャに似ているということで、二人の展示会となったようですが、似ているといえば言えるのかもしれませんが、サージェントはフィレンツェ生まれとはいえ、主に暮らしたのがアルプスのこちら側の人ですから、やはり作品に描かれた「光」が違います。フランスに住んだ画家たちの作品でよく目にする「光」です。上手いのは上手いのですが、特別な感動はありませんでした。なお、ヴェラスケスの影響を受けたという共通項も、ふたりにはあるそうで、このあたりからも二人展になったのかもしれないですね。

美術が好きだというフランス人にとっても、これだけソローリャの作品をまとめて見ることができるは初めてのようで、口コミでどんどん話題が広がり、まだまだ多くの観客が押しかけています。「光の国の、光の画家」・・・私にとっては、新鮮な出会いでした。因みにプチ・パレで開催される前に、去年秋から今年はじめにかけて、同じ二人展がマドリッドの「ティッセン・ボルネミック美術館」でも開催されたそうです。


“Peintres de la lumiere, Sargent & Sorolla”
プチ・パレにて、残念ながら5月13日まで(火曜休館)

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