竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
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紫陽花や帰るさの目の通ひ妻 石田波郷

2019-06-07 | 今日の季語


紫陽花や帰るさの目の通ひ妻 石田波郷

波郷の句が苦手だという人は、意外に多い。いわゆる「療養俳句」の旗手だからではなく、描写が「感動を語らない」(宗左近)からである。この句もそうだ。見舞いに来た妻が、つと紫陽花に目をやったとき、その目が「帰るさ(帰り際)」の目になっていたというのだが、それだけである。妻の目が、作者にどんな感情を引き起こさせたのかは書かれていないし、読者に余計な想像も許さない。冷たいといえば、かなり冷たい感性だ。しかし、私は逆に、長年病者としてあらねばならなかった男の気概を感じる。平たく言えば、人生、泣いてばかりはいられないのだ。寂しい気分がわいたとしても、それを断ち切って生きていくしかないのだから……。(清水哲男)



【紫陽花】 あじさい(アヂサヰ)
◇「四葩」(よひら) ◇「七変化」(しちへんげ) ◇「刺繍花」(ししゅうばな)

ユキノシタ科の落葉低木。額紫陽花の園芸用改良種とされる。色は青から赤紫、また白色もある。花の色が変化することから「七変化」また4枚のガクが目立ち花びらのように見えることから「四葩」とも呼ばれる。

例句  作者

あぢさゐや生き残るもの喪に服し 鈴木真砂女
紫陽花の雨に濃くなる蒙古斑 石田玲子
紫陽花に霧くづれ舞ふ強羅の灯 横光利一
田に水を張つて紫陽花あかりかな 山上樹実雄
四葩切るや前髪わるゝ洗髪 杉田久女
あぢさゐに倖の色つひになし 殿村莵絲子
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