竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
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死火山に煙なく不思議なき入浴 兜太

2018-06-24 | 金子兜太鑑賞
 
死火山に煙なく不思議なき入浴 兜太




昭和47年、「暗緑地誌」より

これは無季の句ですね。
どこで詠まれたのか分らないが、
「死火山に煙なく」というのだからどこか
温泉に来ているのではないか。
露天風呂に入っての感慨のように思う。
無季だが、死火山という荒涼とした言葉の景から、
木々は落葉し裸木を想像します。
冬季ではないか、荒涼とした露天風呂に入りながら、
ふと、戦地の露天風呂を思い出しているのではないだろうか。
「煙なく」は、戦場の合図の「狼煙」をふと思い出しているのだと思う。
「不思議なき入浴」が意味が深い。
「不思議な入浴」であれば、戦時中をまだ引きずっていることになる。
「不思議なき」では、すでにその記憶は生々しいせん痛ではないが、
疼痛のようにじわじわ想い出すのであろう。
「不思議なき」に戦後27年間が込められているように思う。
温泉に来て、露天風呂に入ってもそれにどこか酔いきれない、
兜太さんの悲しみが伝わってくる句である。


参照 http://www.shuu.org/newpage24.htm
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