高槻成紀のホームページ

「晴行雨筆」の日々から生まれるもの

もくじ

2018-12-31 08:21:00 | もくじ
プロフィール
日々の自然日誌はこちらをどうぞ

最近の動き new

 モンゴル 2018

 今進めている生き物調べの報告 new!

私の著書
最近の論文 
それ以外の著作 new
最終講義
退職記念文集「つながり」
唱歌「故郷」をめぐる議論


研究概要
 研究1.1 シカの食性関係
 研究1.2 シカと植物
 研究1.3 シカの個体群学
 研究1.4 シカの生態・保全
 研究2 調査法など
 研究3.1 その他の動物(有蹄類
  その他の動物(食肉目)
  その他の動物(霊長目、齧歯目、翼手目、長鼻目)
  その他の動物(哺乳類以外)
 研究3.2 その他の動物(海外)
 研究4 アファンの森の生物調べ
 研究5 モンゴル(制作中)
 研究6 野生動物と人間の関係
 研究7 教育など
 研究8 その他

業績
 論文リスト 2010年まで
 論文リスト 2011年から
 書籍リスト
 総説リスト
 書評リスト
 意見リスト

エッセー
 どちらを向いているか:小保方事件を思う 2011.4
 皇居のタヌキの糞と陛下 2016.10
 バイリンガル 2018.6.11

2017年の記録
2016年の記録
2015年の記録
2014年の記録
2013年の記録
2012年の記録 6-12月
2012年の記録 1-5月
2011年の記録


その他
コメント (2)

フクロウ・ワークショップ

2018-12-15 20:08:13 | 講演


12月15日に麻布大学いのちの博物館のイベントとしてワークショプ「フクロウの巣からネズミの骨を取り出す」を実施しました。親子連れを中心に31名の参加がありました。

 はじめに当日の内容の解説をしました。それは次のようなものでした。フクロウはネズミを食べることに特殊化した鳥である。八ヶ岳では八ヶ岳自然クラブが長年巣箱をかけて観察をしており、麻布大学で10年くらい巣に残されたネズミの骨を分析している。それによってわかったのは牧場に近い巣ではハタネズミの割合が高く、森に近いとその割合が低くなること。ハタネズミは牧場のような草原にいて草の葉や根など消化しにくいものでも食べるが、アカネズミは森林に住んでおり、果実や動物質など栄養価の高い食物を食べること。フクロウの巣に残った下顎でハタネズミとアカネズミは区別できることなどでした。
 それからネズミの骨の解説をしました。これには昨年の企画展示で使った粘度模型などを紹介しました。
 もう一点、今年特別に説明したことがあります。それは弘前のリンゴ園のフクロウのことです。12月2日にNHK総合テレビで弘前のリンゴ園のフクロウのことが紹介されました(「青森のリンゴ園 救世主はフクロウ!」こちら)。それはリンゴ園で働く人が高齢化したためにリンゴの大きい木が伐られて、作業のしやすい若い木に植え直したらネズミにかじられる被害が出るようになった。それに困って、殺鼠剤などで駆除しようとしたが効果がなかった。それは大きい木にはウロ(樹洞)があってフクロウが住んでおり、フクロウがネズミを食べてくれていたのに、それがなくなってネズミが増えたのではないかと考えてフクロウの巣箱をつけたら、フクロウが営巣し、その周りではネズミが減ったという話でした。私(高槻)はこの研究を指導した弘前大学の東先生と長年の知り合いで、相談の結果、そのリンゴ園の2つの巣から巣材を提供してもらうことになり、このワークショップで分析することにしました。
 この説明の後、6つのテーブルにおいた巣材を分析してもらうことになりました。


分析を始める


皆さんたいへん熱心に分析し、小さい子には長すぎるのではないかと心配しましたが、退屈することなく、集中して分析をしていました。


作業のようす

「これはなんですか?」
という質問に行ってみるとモグラの手だったので、標本を持って行って
「ほら、これと同じでしょう?足に比べてこんなに大きい」
「掘るからだ」
「そうだね、トンネルを掘るから手が特別大きいんだよ」
というと、歓声が上がりました。
しばらくすると小さな男の子が取り出したものを持って来たので、見るとサワガニの体の腹部でした。これはK2という場所の巣から出たもので、周りが湿地なので、毎年サワガニが検出される場所です。

子供達は学校でも理科の勉強をしますが、学校では主に理解して覚えるということをすると思います。でもここでは現物を目の前にして、実際にフクロウが何を食べていたかを自分が明らかにするということですから、楽しくて仕方がないようでした。
 そのほか、鳥の羽毛、胸骨、卵の殻なども出て来ました。弘前のサンプルからはハタネズミが多く出て来て、テレビに内容と符合する結果でした。
 途中で田中さんに八ヶ岳のフクロウを観察し、撮影した写真で、巣立ちの様子などについて解説してもらいました。


八ヶ岳のフクロウの観察結果を説明する田中さん


 初めて出会った人が会話をし、大人が子供に説明したりするなど、楽しい雰囲気で作業が進みました。


大人が子供に説明する


作業が進み、調べ終わった巣内の細かな物質が増えて来た


そうこうするうちにあっという間に終了時間の3時が近くなりました。それで感想文を書いてもらい、感謝状を渡しました。


感謝状を手渡す


最後に記念撮影をしました。


記念撮影


コメント

丹沢のシカの糞分析

2018-12-14 20:04:18 | 研究
2018. 9.22更新

丹沢のシカの糞分析の試み


高槻成紀(麻布大学いのちの博物館)・梶谷敏夫(丹沢ブナ党)


目的
 丹沢大山は1970年代からシカ問題に取り組んできた。これは我が国でももっとも初期のことである。戦後は狩猟が解禁になってシカは激減したが、その後徐々に回復し1960年代後半には有害獣駆除がおこなわれ、1980年代を通じて植物への影響が顕在化した。その後、個体数管理の努力が続けられ、徐々に植生回復が認められるようになったが、場所によってはシカの過密状態を脱しておらず、低山帯への拡大傾向もあり、問題は続いている。
 シカの頭数調査や植生のモニタリングなどは神奈川県の事業としておこなわれているが、シカの食性については不明な部分が多い。ニホンジカの食性はおもに糞分析によっておこなわれ、北海道から九州にいたるおよその傾向が明らかにされている。この方法を採用すれば、非侵襲的に(シカを殺すことなく)、繰り返し調査ができるという利点がある。現在の丹沢では20年ほど前にシカの強い影響を受けて林床植物が退行し、とくにスズタケが大きく減少した。現在は徐々に回復しているといわれる。また山頂部にはミヤマクマザサが生育する。このような高密度な場所のシカは植物が枯れる冬に食物不足に陥り、常緑のササがあれば集中的に利用する。ササは表皮細胞が特徴的であるため、糞分析で確実に識別できる。
 一方、丹沢は垂直的にいえば高地には落葉広葉樹林がひろがり、中腹ではそのほかにおもにスギの人工林がひろがり、低地は落葉広葉樹の二次林の占める割合が大きい。したがってシカの食性にも垂直的な変異があることが想定される。一般にスギ人工林は暗いために林床植物が貧弱であることが多く、シカの食物供給という意味では不適であるといえる。このような状況下にあるシカがおもに何を食べているかを知ることは現状の丹沢のシカの置かれた状況を食性を通じて知ることにつながる。
 本調査はこのような背景から丹沢のシカの食性を丹沢の高地、中腹、低地で調べる。食物供給という視点からは季節変化を知ることが重要であるから、それぞれの高さでの季節変化を明らかにする。

方法
 標高による違いを比較するために、2本のラインをとった。1本は高地が檜洞丸(中H)、中標高が西丹沢教室周辺(中M)、低地が丹沢湖北東岸(中L)で、これを「中ライン」とした。もう1本は高地が塔の岳(東H)、中標高が岳の台(東M)、低地が名古木(東L)のラインで、これを「東ライン」とした。このほか東西比較として切通峠(西H)でも糞を採取し、これを「西」とした(図1、表1)。


図1 シカ糞採集地の位置関係


表1 シカの糞採集地点


 シカ生息地で代表的な群落を選び、新鮮なシカの糞を10の糞塊からそれぞれ10粒拾った。糞サンプルは0.5mm間隔のフルイ上で水洗し、残った植物片を顕微鏡でポイント枠法で分析した。カウント数は200以上とした。

結果

 食物は次の9つのカテゴリーに分けた。ササ、イネ科、双子葉(双子葉植物の葉で、顕微鏡下では網目の葉脈やモザイク状の表皮細胞が認められる)、枯葉(不透明な葉脈だけが残り、表皮細胞はない)、果実・種子、繊維(木質繊維と樹皮)、稈(イネ科の茎)、その他(等価性はあるが識別不能、不等価なため識別不能など)である。


本分析で用いた糞分析結果の判例


場所ごとの垂直比較
 場所ごとに低い場所から高い場所に糞組成を比較する。西は高地かないので中ラインと東ラインを記述する。
 中ライン:冬には垂直的な変異は非常に小さかった。どこでもササと双子葉、繊維が多かった。ササは中標高がやや少なかった。春になるとササは減少し、稈が非常に多くなった。高地ではイネ科が多く、繊維も多かったが、中標高と低地では稈が非常に多く、繊維は少なく、ササが10%前後あるという違いがあった。夏には低地でサンプルが得られず、垂直比較ができるのは中ラインの高地と中標高のみであった。春と同様、高地でイネ科・稈が多く、中標高では繊維が多かった。秋には垂直的な違いがあり、高地では春、夏と同様イネ科・稈が多かった。中標高ではササが増え、低地では春よりも稈が減り、繊維が増えた。
 東ライン:冬は垂直の違いがあり、高地ではササが多く、中標高ではササがさらに多く、低地ではササが少なく、双子葉、繊維も多かった。春の高地でイネ科・稈が増え、中標高ではササが大きい値を維持し、繊維と稈が増えた。低地ではササと双子葉がへり、稈が増えた。夏には高地しかサンプルがなかった。秋には垂直的な違いが大きく、高地はイネ科が多く、中標高はイネ科・稈が多く、低地は双子葉と繊維、稈が多かった。


冬の場所ごとの垂直変異

春の場所ごとの垂直変異

夏の場所ごとの垂直変異

秋の場所ごとの垂直変異

 以上、場所による違いがあったが、概して高地ではイネ科・稈が多く、低地では双子葉が多い傾向があり、中ラインでは変異が小さく、東ラインでは変異が小さい傾向があった。

標高別の東西比較
 次に高地、中標高、低地について、東西の比較をする。
高地:冬は西でササが少なく、双子葉と繊維が多いが、中ラインではササが多く、繊維がより少なく、東ラインではササがさらに多く、双子葉と繊維はもっとも少なかった。春には場所ごとの違いが小さくなり、どこでもイネ科・稈と繊維が多かった。夏は西ではイネ科と双子葉が多く、中ラインでは稈と繊維が多く、東ラインではイネ科・稈が多かった。秋には西では双子葉と繊維が多く、中ラインでは稈が多く、東ラインではイネ科が多かった。
中標高:冬は中ラインではササ、双子葉、稈が同程度を占めていたが、東ラインではササが非常に多かった。春になると中ラインでは稈が非常に多くなり、東ラインではササがやや減ったものの多く、繊維と稈が増えた。夏は中ラインしかサンプルが得られなかった。秋には中ラインでササ、繊維、稈が多かったが、東ラインではイネ科・稈と繊維が多かった。
低地:冬には中ラインでも東ラインでもササ、双子葉、繊維がある程度多く、違いは小さかった。春には中ラインでは稈が大きく増加したが、東ラインではさほどでもなく、双子葉が減り、繊維が増えた。夏にはサンプルがなかった。秋には中ラインでは繊維と稈が多く、東ラインでは双子葉、繊維、稈が多かった。
 このように、高地では西で双子葉が多く、中ラインと東ラインではイネ科が多く、冬にはササが増えるという傾向があった。中標高では一定の傾向が認められなかった。低地では冬と秋に双子葉がより多く、中ラインでは稈が多い傾向があったが、夏のことはわからなかった。


冬(左)と春(右)の標高別の糞組成の場所比較

夏(左)と秋(右)の標高別の糞組成の場所比較

場所ごとの季節変化
西:冬と秋に双子葉と繊維が多く、春と夏にはイネ科・稈が多くなった。
中ライン:低地では冬にササと双子葉が多く、春には稈が非常に多くなり、秋は春と似ていたが、繊維が多くなった。冬よりは稈が多かった。中標高では冬と秋がササと双子葉が多いという点で共通していた。春には稈が非常に多くなり、夏には繊維が非常に多くなった。高地では冬だけがササと双子葉が多く、それ以外はイネ科・稈が多く、春と夏は繊維が多かった。
東ライン:低地は冬と秋しかデータがないが、双子葉と繊維が多いことで共通していた。中標高では冬と春はササが非常に多く、春は冬より稈が多かった。夏はサンプルがなく、秋はイネ科・稈が多く、冬、春とは違った。高地では冬だけがササが多く、そのほかではイネ科・稈が多く、春には繊維が多かった。


西の季節変化

中ラインの季節変化

東ラインの季節変化

考察
検討中

コメント

最近の調査結果

2018-12-10 06:25:22 | 報告


タヌキの食性
 津田塾大学のタヌキの糞に出てくる食べ物の推移 2018.10.28 更新 new
 タヌキの糞からドングリ 2018.3.8
 タヌキの糞からシカの毛が出た 2018.3.10
 裏高尾のタヌキの食性 2018.11.19 更新 new!

シカの食性
 丹沢のシカの糞分析  2018.12.12更新 こちら
 鳥取県若桜町のシカの糞分析 2018.11.25更新 こちら new

その他
 都市における鳥類による種子散布の一断面 2018.2.20
 アファンの森のフクロウの食べ物 2018.6.21
 柵をした乙女高原の訪花昆虫 - 2018年 - 2018.9.20
コメント

最近の動き

2018-12-08 02:09:17 | 最近の動き
12月15日
麻布大学いのちの博物館でワークショップ「フクロウの巣からネズミを取り出す」を実施しました。 こちら

12月6日
小平市民奨励教室で講演しました。こちら

12月2日
モモンガの標本が手に入ったので、調べました。外観観察
基本情報 こちら
手足 こちら
剥皮 こちら 見ても平気だと思う人、どうぞ
飛膜 こちら
胃 こちら
全身骨格 こちら

11月17日
ムササビの標本が手に入ったので、調べました。
 外観観察 こちら
 基本情報 こちら
 脱がしたムササビ こちら 見ても平気だと思う人、どうぞ
 飛膜 こちら
 「小指」は骨ではなかった こちら
 針状軟骨はバテン? こちら
 滑空 -- 針状軟骨の使われ方 滑空 -- 針状軟骨の使われ方
 胃内容物 こちら
 頭骨 こちら

11月11日
丹沢の自然に関心を持つ人たちに招かれて講演をしたことがあります。そのことをきっかけに、丹沢のシカの食べ物を解明しようということになりました。各季節に丹沢の3箇所で高いところ、中くらい、低いところで糞を拾ってもらい、私が分析をすることになりました。興味ふかい結果が得られていますが(こちら)、秋の糞からはかなりの頻度でヤマボウシの種子が出てきました。現地にも多いそうです。他にも色々な果実があると思いますが、これだけが目立って多く、高頻度で出てきました。


丹沢のシカの糞から検出されたヤマボウシの種子

10月12日
科学技術振興機構のポータルサイト(サイエンスポータル)に私を取材した記事が載りました。こちら

9月28日
鳥取県若桜のシカ糞を分析していますが、これまで知られているどこよりも劣悪で、夏でも枯葉を多く食べていることがわかりました。こちら

9月27日
小平市にある津田塾大学のタヌキの食べ物を調べていますが、9月になったら急に糞が見つかるようになり、中身も昆虫が激減してカキを主体とし、ムクノキなどが混じる「秋モード」に入ったようです。こちら

9月16日
玉川上水の9月の観察会を小金井で行いました。こちら

9月7-10日
日本哺乳類学会が伊那市の信州大学農学部で行われ、参加して来ました。若い人の活気を感じるる学会です。

9月6日
森林インストラクター東京会で「玉川上水の生き物しらべの愉しみ」という講演をしました。


質問に答える

8月30日
サクラサイエンスというプロジェクトで麻布大学で研修中のアジアの若手獣医研究者が麻布大学いのちの博物館に来館しまし他ので、解説しました。こちら

8月26日
玉川上水の観察会をしました。こちら

8月25日
「玉川上水にはフン虫がいるよ」を実施しました。こちら

8月21日
明治神宮にタヌキの糞を探しに行きましたが、見つからずがっかりでした。

8月19日
乙女高原で訪花昆虫の調査をしました。大きな柵を作ってシカの影響を排除したおかげで花が戻ってきて全体でポリネーション(花に昆虫が受粉にくること)が咲く設置前の5階程増えていました。花と昆虫にに囲まれてとても幸福感のある調査でした。

8月16日
「3.11」後の仙台の海岸に戻ってきたタヌキの論文が朝日新聞の宮城県版に載りましたが、その英訳ができたそうです。

http://www.asahi.com/ajw/articles/AJ201808110001.html

7月31日-8月11日
モンゴル調査

7月27日
私は仲間と東日本大震災の後、仙台の海岸に「戻ってきた」タヌキの糞分析をして、「保全生態学研究」という学術誌に論文を書きました。それを朝日新聞の宮城版が取り上げてくれました。研究をこういう形で発信することも大事だと思います。



7月24日-26日
7月24-26日、麻布大学いのちの博物館で小学生を対象とした夏休み子ども教室をしました。子供達の真剣な眼差し、ユニークなスケッチ作品を見れば、あれこれの評価は無用であることがわかります。

スケッチする子供達

(写真の公開は了解を得ています)もっとみる

子供ならではの作品ができました。

もっと見る

 小学生に解説をしていると、自分の言葉が子供の心に入って行くようで、まさに「語れば応える」が実感できます。スケッチの仕方や動物の見方をアドバイスすると、驚くほどの効果がみられます。自分は大学の先生より、小学校の先生の方が向いていたかな、と思うくらいです。



 アオダイショウの骨の説明をする時、南米でアナコンダにおばあさんが食べられた話をしました。その時はホワイトボードにヘビの頭を描いて大きく開けた口に丸い人の頭だけを描いておきました。その後、感想文を書いてもらっているときに、人の顔に目や口を描き、体も描き加えて、男の子にしました。そうしたら子どもたちが目ざとく見つけて、笑顔が見られました。それを見て一人の子が「さっき、おばあさんって言ったのに」と言いました。そこで男の子の頭の上に丸い髪の塊りを描き、口の脇にほうれい線を引きました。それから半ズボンをスカートにしました。子どもたちは大喜びでした。
 落書きが得意なのもこういうときは役に立つものです。




7月16日
「玉川上水を守るには?」という集会で講演をしました。こちら



7月8日
玉川上水観察会
内容 津田塾大学でタヌキのタメフンを観察、回収し、水洗してマーカーの検出をします。マーカーとはソーセージに入れたプラスチック片で、キャンパスの外に置いてあり、タヌキの動きを調べようとしています。
無事完了しました。報告はこちら

6月27日
武蔵野美大三鷹ルームで「人による動物の勝手なイメージ:イタチも知らずにイタチごっこ」
人間の偏見、動物の言い分」について話しました。




関野先生と対談


話が終わってから子供たちもお話にきました。写真は豊口信行さんによる。


6月25日
「人間の偏見、動物の言い分~動物のイメージを科学する」イースト・プレス社 こちら
武蔵野美術大学で最近出版した上記の本の解説をしました。


人は動物に勝手なイメージを作ってきた


ハーツォグは実験のために「下等な」動物から「高等な」動物の順に熱湯に入れた。さて、高等下等とは??

++++++++++++
当日は武蔵美大の学生を主体に一般の方も聞きに来てくださいました。


動物のイメージを板書して説明(棚橋早苗さん撮影)


6月16日の「高尾の森づくりの会」での講演
同会で「森と動物たちのかかわりについて」という講演をしました。

6月10日「人間の偏見 動物の言い分」の書評
宮部みゆきさんの書評 こちら

6月10日の桐生での実習指導
桐生の自然の森で食肉目(タヌキやテン)の糞分析の実習指導をしました。


作業室


記念撮影

異変
 このブログを訪問する人はだいたい100人前後です。ところが、今朝(5月13日)、そのブログを見て我が目を疑いました。なんと8800人もの訪問者があったのです。桁違いです。これはどうしたことかと思っていましたが、友人がメールをくれたので、そのわけがわかりました。
 それによると、私が2年前に書いたあるエッセーがツイッターで話題になったのだそうです。それは天皇陛下が書かれた皇居のタヌキの糞分析の論文についてのものです。こちら 興味のある人にはゆっくり読んでもらうこととして、そのとき私が作った次の歌はどうでしょう。

 故ありてタヌキが糞を分析しけむが、広きこの世にかくなる行なひを為す者、幾人ありなむとこそ思ひけれ。
 しかるに、あらむことか、帝がこれを為されけむと知り、いみじう驚きたりて作りたる歌・・



 それにしても、なぜ今頃話題になったのかはいまだにわかりません。もしご存知の方がおられたら教えてもらえると喜びます。

5月20日の観察会
気持ちの良い天気の中で終えました。全体の報告下生え調査の結果

2018.5.3 モンゴルの放牧圧の論文
 2002年からモンゴルに通っています。最初はモウコガゼルの調査から始まったのですが、その後家畜と草原の関係を調べるようになって今日に至っています。モンゴル中央の北部はモンゴルとしては比較的降水量があり、山の北斜面には森林があるので「森林ステップ」と呼ばれています。もっと北のロシアに行けばタイガになる、草原と森林の移行帯です。その一つとしてブルガンという場所があり、そこで放牧影響を調べた調査結果が論文になりました。こちら

モンゴル北部の森林ステップの草地群落への放牧の影響:放牧と非放牧の比較
高槻成紀・佐藤雅人・森永由紀

モンゴルでは牧畜のあり方が移牧から定着に変化したため、草原が過放牧になり、群落に変化をもたらしている。この調査はモンゴル北部の深林ステップで長い時間家畜を排除した好例を見つけたので、放牧が草原にどのような影響をもたらすかを示そうとした。ブルガン飛行場は1950年代から柵をしてきたので、放牧された場所とされていない場所を比較できる。そこで群落構造、種組成、生育形に着目して柵の内外を比較した。植物量は柵外で40 g/m2であり、柵外(305 g/m2)の7分の1にすぎず、出現種数も半分ほどだった。柵内では草丈は30-40cmあったが、柵外では10cm未満だった。柵内では直立型、分枝型、大型叢生型が多いが、柵外では小型叢生型と匍匐型が優占的だった。柵内では微地形に応じて優占種に違いが見られたが、柵外ではCarex duriusculaというスゲとPotentilla acaulis(キジムシロ属)という匍匐型が優占していた。すなわち放牧影響はもともとある微地形の影響を「マスク」すると言える。この調査は、放牧による群落への影響を生育型を用いることで有効に示せることを示した。


A: 柵内外の比較、B:柵内の様子、C:柵外の様子、D: Potentilla acaulis

Effects of grazing on grassland communities of the forest-steppe of northern Mongolia: a comparison of grazed versus ungrazed places

Seiki Takatsuki, Masatoshi Sato, and Yuki Morinaga

Abstract
Overgrazing of grasslands in the Mongolian steppes resulting from a transition from pastoral to sedentary livestock production has led to significant changes in the plant communities. This study aimed to show how livestock grazing affects steppe vegetation in northern Mongolia by a good example of a long-termed exclusion of grazing. The Bulgan Airport in northern Mongolia has been fenced since the 1950s and thus is suitable to compare grazed and ungrazed plant communities. We studied plots both inside and outside the fence with reference to community structure, species composition, and growth form. Plant biomass for the outside plots averaged (40 g/m2) less than one-seventh of that inside the fence (305 g/m2), and average species number per plot was about half of that inside the fence. Height of plants inside the fence ranged from the ground surface to 30 - 40 cm, whereas most of the plants outside were less than 10 cm tall. Erect, branched, and tall tussock form plants were reduced outside the fence, and short tussock and prostrate form plants became dominant. Microtopography resulted in different dominant plants inside the fence whereas only Carex duriuscula, a sedge, and Potentilla acaulis, a short growing prostrate forb, prevailed outside. That is, grazing as a factor effecting plant communities prevailed and "masked" microtopography outside the fence. It was shown that the use of growth form is effective to evaluate vegetation changes by grazing.

2018.4.22 骨格標本
2018年4月10日、麻布大学のキャンパスでモズの死体を見つけました。状態がよかったので、骨格標本を作ることにしました。


モズの死体


骨格標本



2018.5.17 新刊出版
「人間の偏見 動物の言い分」という本がイーストプレスから出版されます。



私は長いあいだ動物の研究をしてきて、動物の立場から見たらこの世はずいぶん理不尽だと思うだろうなと想像することがよくありました。それが本書で言いたいことなのですが、その主張のために2つの工夫をしました。
 一つは「動物」というときに、ペットも家畜も野生動物も区別がされないために「動物のいのちを大切に」というとき、多くはイヌ・ネコのイメージをしますが、食肉用のウシやブタのことは考えないし、野生動物の絶滅のことも考えません。そこで動物を類型しながら説明しました。
 もう一つは現代の都市生活と動物の関係を考えるために、大胆とは思いながら、狩猟採集時代、農業時代、都市生活時代という時代区分をし、それぞれの時代に人が動物にどう接してきたかを考えたということです。
 その作業をすることで、都市生活が下手をするとかなり深刻な問題を生む危険性があることにも言及しました。出版は2018年5月17日で、定価は1700円(+税)です。

株式会社イースト・プレス


2018.4.12 講演
4月12日に武蔵野美大の「三鷹ルーム」で講演をしました。これは関野義晴先生が地球永住計画というプロジェクトの活動の一つとして行なっておられる連続講座で、さまざまな分野の研究者や専門家が関野先生と対談をするというものです。私は「リンク(生き物のつながり)を求めて」という話をしました。
 関野先生からは、最近行っている玉川上水の話ではなく、これまでの研究を振り返るような話をして欲しいということだったので、シカとササ、タヌキとテンの食性比較、シカの多面的生物に及ぼす影響、アファンの森の訪花昆虫などの話をしました。
 それら研究の話の前に、子供の頃の写真を紹介し、中2の時にアゲハ蝶類と食草の対応関係に気づいて、愛読していた図鑑の監修者であった九州大学の白水先生に手紙を書いたこと、そして返事をもらったことを紹介しました。そのことが、動物の食べ物を調べることに関心を持ったことと繋がっているかもしれないと思うからです。
 話の最後にはアイヌ民話の「ミソサザイとサマイクル」の話を紹介し、小さく、顧みられることのない生き物への配慮をする文化の素晴らしさを話しました。






豊口信行さん撮影

2018.4.4 子どもイベント「シカ、サル、タヌキの骨比べ」 こちら





2018.3.17

動物園講演会「タヌキのウンチ 生き物のつながりを探る」@武蔵野公会堂
動物園に関心のある人が主催する講演会でお話をしました。動物好きの人が多く、タヌキに限らず、動物のいのちについて様々な意見が買わされました。[Believe」を一緒に歌いました。


質問に答える


一緒に「Believe」を歌う


2018.2.25
講演 「日本の山とシカ問題
山と渓谷社による「日本山岳遺産サミット」で話しました。
 

2018.2.19
NHKテレビの「視点・論点」で「身近な自然をじっくり眺める」を話しました。内容はこちら

月~金 午前4時20分~午前4時30分 [Eテレ] 月~金 午後1時50分~午後2時


2018.1.13
講演 「タヌキのポン?!」予告
多摩動物公園でタヌキの話をしました。こちら
感想など こちら





2018.1.8
「玉川上水花マップ」と称して花の分布を調べていますが、1月8日にシンポジウムを開催しました。こちら
動画は こちら


コメント (9)

小平市民奨励学級

2018-12-06 19:46:33 | 報告
小平市民奨励学級というものがあり、そこで玉川上水の動植物についての連続講座をすることになったそうです。私にはタヌキの話をして欲しいという依頼がありました。

 そこで津田塾大学のタヌキを調べているのでその話をしました。正確にいうとタヌキの話ではなく、タヌキがいることで関連する他の生き物とつながり(リンク)を持つことの話です。
 まず玉川上水は細長い緑だということ、そのことは周辺の孤立緑地と比較すると、センサーカメラによるタヌキの撮影率が2倍以上高かったことでタヌキにとって良い生息地であることが確認できたということから始めました。


玉川上水と孤立緑地でのタヌキの撮影率


以下要点を書きます。
 玉川上水は細いが、まとまった緑地が接していると幅が広くなるので、そういうところにはタヌキがいる確率が高いはずだと思って、代表例である津田塾大学にセンサーカメラをおいたらすぐに撮影されました。そしてタメフン場が見つかったので、食べ物を定量的に調べました。それでわかったのは、春と夏は昆虫、秋と冬は果実、冬は相対的に哺乳類と鳥類が増えるというものでした。こちら


津田塾大のタヌキの糞組成


ここで2つの気づきがありました。
 ひとつは、タメフン場にたくさんの芽生えがあり、タヌキが種子散布をしていることが確認されたことです。このことから、動物は自分が果実を利用しているつもりだが、実は植物が動物を利用して種子を散布させているということがわかります。
 もうひとつは津田塾大学のタヌキが食べるギンナン、カキ、ムクノキ、エノキはいずれも高木であるが、これは関東地方の里山に住むタヌキでヒサカキ、キイチゴ、ヤマグワなど明るい場所に生える低木が多いのと違うということです。


津田塾大学のタヌキがよく食べる果実の種子(上)と里山のタヌキがよく食べる果実の種子(下)


それは津田塾大学のキャンパスの植生と関係があるはずなので調べたら、90年前に防風林として植えたシラカシが育って鬱蒼とした森林になっていることを反映したものだということがわかりました。

 タヌキの糞分析ということから少し横道に逸れました。それは仙台の海岸が2011年の3.11大震災で津波に襲われて壊滅的被害を受けたのに2年度にタヌキが「戻って」来たことです。その糞を分析したら、海岸に生えるドクウツギとテリハノイバラがたくさん食べられていました。


3.11大津波のイメージ


仙台の海岸に「戻って」きたタヌキの糞から種子がよく出てきた海岸低木


 これらは地上部が破壊されても地下部が残っていたので、2年後には開花結実したのです。この他ヨウシュヤマゴボウなどの外来種、コメやムギなどの農作物なども食べていました。このような融通性のおかげでタヌキは激変する環境でも生き延びているのだと思います。

 我が家には各地のタヌキの糞が送られてきます。家族は呆れ顔ですが、実は天皇陛下が皇居のタヌキの糞分析をして立派な論文を書かれました(こちら)。それ以来、私は「こんな地味で誰も興味を持たないような作業をしている人がもう一人ある、それは天皇陛下だ」と胸を張るようになったということを紹介しました。



そして陛下と美智子皇后様の生き物に関する短歌を紹介しました。

 玉川上水のタヌキにもどります。タヌキがいれば糞を利用する糞虫がいるはずだと思って調べたら、コブマルエンマコガネという糞虫がたくさんいることがわかりました。これは私の新発見です。このようにタヌキがいることは様々な生き物と関わりを持っていることがわかりました。

 この勉強会には子育て中のお母さんも来ると聞いていたので、こども観察会のことも紹介しました。こども向けの観察会のうち、糞虫の観察会をしたときの様ことです。まずトラップをかけたらうまく糞虫が採れたこと、それを観察して、スケッチしてもらったら素晴らしい作品ができたことを紹介しました。


子供達による糞虫のスケッチ


 この時に、発泡スチロールでタヌキの人形を作ったり、糞虫の粘土作品を作って解説したことなどを紹介しました。



最後に犬の糞と糞虫をプレゼントしたら、あとで「森には動物がいて糞をするから臭いはずだけど、糞虫が分解してくれるから臭くありません。だから糞虫は大切です」という意味の手紙が来たことを紹介しました。

 これに続けて、アイヌのミソサザイの民話を紹介しました。その中に「相手のことを知らないで見下してはいけない」、「神様はこの世に無駄なものは1つもお創りにならなかった」という言葉があることを紹介しました。それから、R. カーソンの「沈黙の春」の中に書かれている「地球は人間だけのためにあるのではない」という言葉を思い起こしてもらいました。これと同じ言葉はアイヌの民話の中にもあります。

 そのあとで道路の話をしました。市街地を流れる玉川上水は連続していることに大きな意味を持つが、現実には道路が横切っており、その程度によっては孤立緑地と同じようにタヌキが住めなくなる可能性が十分あります。最近の調査で、府中街道をタヌキが横切っている証拠をつかみました。交通事故の犠牲者もいるはずです。タヌキにとって最後の砦のような玉川上水が厳しい環境になってるようです。私は小平にタヌキがいること、そのタヌキが交通事故にあっていることを市民に知ってもらうための動きをしたいと思っています。


タヌキが道路を横断していることをアピールするためのイラスト

 私たちが都市に住むということは自然に迷惑をかけるということです。それは避けられないことではありますが、それを前提としたとしても、さらなる大きな道路が本当に必要であるか、道路が持つ、人にとってのプラス面と、道路をつけることで起きる自然破壊というマイナス面との折り合いをどうつけるかということは十分に考える必要があると思います。
 
 少し早く終わったので、司会のリーさんがご自身のエピソードを紹介しました。私がおこなっている観察会で訪花昆虫の記録をした後で、朝ごはんの時にパンにハチミツをつけようとして、今までなかったことだけど、その蜜を吸うミツバチの姿や動きが見えるようだったそうです。彼女は知識として知ることも大事だけども、実体験することで生き物との距離が近づくということを伝えたかったのだと思いました。
 それから、参加者から質問を促しました。具体的なタヌキの性質などに関するものや、どこどこでタヌキを見たという話が多くありました。おそらく「タヌキの話をする」と聞いた人は、私をタヌキそのものをよく知っている人と予測したのだと思います。しかし私は -- もちろんタヌキのことも一通りは知っていますが -- 興味の中心はそこにはなく、自然界におけるタヌキの存在の持つ意味にあるのですが、そのことはわかりにくいのだろうと思いました。
 タヌキのことではなく、人間と動物がどう共存するかということについて意見がないかと私が聞いたとき、ある男性が「自分であればもっとラディカルに主張するが、先生(高槻)は調べてわかった客観的事実を伝え、穏やかに話したのが印象に残った」という発言がありました。これに対して私が答えたのは、
「私は70年代の学生運動が盛んだった頃に大学に入りました。政治活動がありましたが、イデオロギーだけに基づく運動は真の力にならないという思いがあります。そうではなく事実に基づいて客観的に事実を伝える、動植物については素晴らしさを伝える、そうすれば、それを破壊するのは良くないと言わなくても、伝わるのだという確認のようなものがあります」ということでした。私が言いたかったのは、人が都市に住んで利便性を追求するのは当然のことかもしれない、しかしこの土地は人間だけのものではないという気持ちを少しは持ったほうがいいということです。

 玉川上水を横切る道路建設の反対運動をしている水口和恵さんは「この話をもっと多くの人に聞いてもらいたいと思いました」と言ってくれました。そして、後でメールで「人間の利便性だけを優先する人たちに聞いてほしいです」と伝えてくれました

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モモンガの全身骨格

2018-12-02 21:24:42 | 研究
毎日少しずつ作っていた標本がようやく出来上がりました。これから滑空している状態にしないといけませんが、骨格はできたということです。針状軟骨もなんとかうまくできました。


2018.12.14 骨格完成
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2018-12-02 18:40:01 | 研究
ムササビは胴長に対する胃の長さが38%もあって大きいなという印象でしたが、モモンガは24%でした。長さの割に幅が広いので、長さによる数字の意味はあまりないかもしれませんが、モモンガの方が胃は小さい印象です。


モモンガの胃と、その内容物

中身を取り出して顕微鏡で覗いて見ましたが、よくわかりませんでした。不透明なモワモワしたものが多く、葉と認められたものは10%以下でした。でんぷん質のようなので、ドングリなどかもしれません。保存はしておきます。
 ムササビはサルナシばかりだったので、どちらも葉食専門ではないということだけは言えます。


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飛膜

2018-12-02 17:06:33 | 研究
安藤・白石(1985)の「ムササビにおける相対成長と滑空適応」という論文を読みました。ムササビが主体ですが、モモンガを含め、新生児から成獣になるまでに体がどう変化するかを論じた論文で難しいところもあるので、要点をわかりやすく説明しておきます。

 リスの仲間であるムササビ、モモンガは飛膜で滑空しますが、同じことをする哺乳類でヒヨケザルというのがいます。私も去年ジャワで見ました。ヒヨケザルはムササビなどに比べて顔から手までに飛膜があり、後肢から尾にも飛膜があり、6角形の飛膜を持っています。針状軟骨はないため、手足の先までは飛膜がありますが、それ以上ではありません。そのため面積を稼ぐために必然的に手足は長くなっています。その結果、木を移動するのは苦手です。


飛膜の比較


ヒヨケザルは四肢が長いので樹上を歩くのは苦手 https://plaza.rakuten.co.jp/yamashoubin/diary/201407190000/ 


このことを考えると、ムササビの針状軟骨は手足を短いままで、樹上の移動にも支障が少なく、いざ飛ぶときにピンと「指代わりの骨」である針状軟骨を伸ばして飛膜面積を大きくしているということです。


モモンガ。四肢の長さはリスなどと同じ程度であり、樹上でも支障なく移動できる。https://hb-l-pet.net/small-animals/


 針状軟骨については柔らかくて「たわみ」を持っており、そのために飛膜の前端縁がカーブを描きますが、それは角張っているより飛ぶために好都合だといいます。そういえば飛行機の翼も半円形にカーブを描いています。
 また柔らかいことは上に反り返りを生みますが、これは横滑りを少なくするそうです。確かにトビやアホウドリなどの翼の先は反り返っています。


アメリカモモンガの飛翔を写真から描く。飛膜の前の端に長い毛があり、滑空時には反り返る


 安藤・白石( 1985)は、ムササビの尾は鳥の尾とは違うことを指摘しています。鳥の尾は低速飛行するときは広がって揚力になり、滑空するときは方向舵になりますが、ムササビの尾は全く違い、重心を後ろに置き、抗力を生んで滑空姿勢を安定させるためだとしています。確かにムササビの滑空写真をみると尾はまるで横広のブラシのように広がって空気抵抗を生んでいるように見えます。


滑空するムササビ。尾は水平に開いて空気抵抗を大きくしている。https://troutinn.exblog.jp/24748009/




 
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基本情報

2018-12-02 11:28:24 | 研究
モモンガの計測値など(体重以外はmm)
場所  神奈川県丹沢湖近く
年月日 2018.11.26
性別  メス
体重  104g
鼻から尾の付け根  153
肩から尾の付け根  90
尾         140
肩から針状軟骨の縁 212
上腕        32
ひじ-手先     59
前足        22
大腿        31
膝から足先     36
脛骨        51
後足        36
耳         13
ヒゲ        52
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剥皮

2018-12-02 11:13:33 | 研究


皮を剥いだところです。この段階では針状軟骨の外側にある毛をつけたままです。



毛を外したとことです。ムササビと同様、「鎌を持った」ような特異な姿です。
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手足

2018-12-02 10:57:59 | 研究


手は、まあリスの手に近いです。広げなければ針状軟骨も目立ちません。下の写真は骨標本にするために水につけていたものを取り出したものです。針状軟骨はかなり下についています。手根骨との位置関係は表面からはわかりませんが、手首に近いあたりから出ています。






足はこんな具合で、取り立てて特別なものではないようです。



注目は針状軟骨です。腕の長さと比べるとそれと同じほどの長さがあります。その前側に長めの毛が生えています。
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モモンガ 外観の観察

2018-12-02 09:29:00 | 最近の動き

 ムササビを入手して、その処理も終わらないうちに同じ半場さんから「今度はモモンガを手に入れたよ」と連絡がありました。山で愛犬が拾ってきたということです。それを送ってもらいました。
 体重は104グラムで、ムササビの10分の1、胴長も90ミリでムササビの3分の1ほどしかありません。目が大きく可愛いのですが、ヒゲが52ミリもありました。


モモンガの横顔 目が大きく、ヒゲが長い

また、尾が長くて、ムササビで205ミリだったのですが、モモンガで140ミリあり、半分以上でした。つまり胴長に対する尾の比はムササビで0.79であったのに対して、モモンガは1.56もありました。



 背面を見るとムササビとさほど違わない印象ですが、針状軟骨を広げて飛膜を最大限に開くと「座布団」ではなく前半で広くお腹のあたりでは狭くなる形になりました。






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ムササビ後日談 2

2018-11-28 18:03:37 | 最近の動き
 ムササビの死体を提供してくださった半場さんはヨットの心得があるとのこと。針状軟骨の話をしたら「それならヨットのバテンのようなものだな」ということでした。聞いたことがなかったので調べてみたら、ヨットのメインセール(主帆)に水平に入れる「骨」で、やはり柔軟性があるもののようです。これがないと風が吹いた時に帆がパタパタとなるのだと思います。それを抑えるのに芯になるのがバテンということのようです。そうであれば、ムササビの針状軟骨はまさにヨットのバテンに相当すると思います。


ヨットの部分の名前。バテンはメインセールの芯として機能


ムササビの「バテン 」である針状軟骨。イラストでは針状軟骨を強調しており、実際には皮下にあってこのようには見えません。


 もう一度バテンと針状軟骨を比較してみます。ヨットではマストがあって、そこに帆を張る。帆は風をはらんでヨットが動く力になるが、そのためにはブームとマストで三角形の帆を固定する必要があります。三角形であることで力が下に集中し、ヨットは安定するわけです。
 一方、ムササビの飛膜は滑空するためですから、広ければ広いほどよいわけで、前後の脚に最大限付いています。だからヨット本体に対応する胴体にマストである前肢、後肢が2本あると見做すことができます。前肢をマストとみて少し違うが後肢をブームと見ることもできなくはありません。そうすると針状軟骨はまさにバテンに対応します。ただ、ヨットの場合は風を孕むことと、安定することが帆の構造を決めたのに対して、ムササビ ではできるだけ空気をはらんで対空時間を長くすることが必要条件になります。そのために針状軟骨は飛膜のバタバタを安定させるというより、被膜の面積を拡大するということの意味が大きいと思われます。もし針状軟骨がなければ、前肢に続く皮膜はダラリと垂れさがったりするでしょうが、それが針状軟骨でピンと広がるはずです。つまり小指と針状軟骨で三角形上の芯を作って、飛膜を外側に広げ、安定性をもたらしているのだと思います。

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頭骨

2018-11-28 15:57:02 | 研究
ムササビの頭骨の標本ができました。やはり、げっ歯類としては大きく、なかなか見事なものです。
 全体はうっかり加熱しすぎてバラバラになり、うまく組み立てられるかやや自信がありませんが、なんとか頑張るつもりです。





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