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「晴行雨筆」の日々から生まれるもの

もくじ

2025-12-31 03:56:31 | もくじ
このブログでは主に研究について紹介します。

最近の動き 

今進めている生き物調べの報告 
 シカの食性 こちら
 シカ その他 こちら
 タヌキの食性 こちら 
 フクロウの食性 こちら
 その他の動物 こちら
 植物・植生 こちら

  玉川上水の保全関連 こちら

 標本 こちら new
 海外調査
  モンゴル2018年の記録こちら
  モンゴル、フスタイ国立公園のタヒとアカシカの食性と群落選択 こちら
  
  野生馬タヒを復帰させたモンゴルのフスタイ国立公園の森林に及ぼす
   タヒとアカシカの影響 こちら
  インドネシア、西ジャワのパンガンダラン自然保護区でのルサジカの食性 
   - 同所的なコロブスとの関係に注目して こちら
 
最近の論文 2020-2022 
   2023
   2024 
   2025
私の著書 こちら
それ以外の著作 new
最終講義
退職記念文集「つながり」
唱歌「故郷」をめぐる議論


研究概要
 研究1.1 シカの食性関係
 研究1.2 シカと植物
 研究1.3 シカの個体群学
 研究1.4 シカの生態・保全
 研究2 調査法など
 研究3.1 その他の動物(有蹄類
  その他の動物(食肉目)
  その他の動物(霊長目、齧歯目、翼手目、長鼻目)
  その他の動物(哺乳類以外)
 研究3.2 その他の動物(海外)
 研究4 アファンの森の生物調べ
 研究5 モンゴル(制作中)
 研究6 野生動物と人間の関係
 研究7 教育など
 研究8 その他

業績
 論文リスト 2010年まで
 論文リスト 2011年から
 書籍リスト
 総説リスト
 書評リスト
 意見リスト

エッセー
 どちらを向いているか:小保方事件を思う 2011.4
 皇居のタヌキの糞と陛下 2016.10
 バイリンガル 2018.6.11

2017年の記録
2016年の記録
2015年の記録
2014年の記録
2013年の記録
2012年の記録 6-12月
2012年の記録 1-5月
2011年の記録

その他
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八王子市の滝山保全地域のタヌキの食性

2025-04-30 19:25:34 | 研究
東京都八王子滝山里山保全地域

豊口信行氏が東京都八王子滝山里山保全地域でタヌキのため糞があるのを発見したということで、2023年12月から糞を採集してもらうことになった。以下、逐次報告する。

調査地は東京都八王子滝山里山保全地域である(図1)。

図1 調査地の位置と空中写真

ここは里山として管理され、クリやコナラ、イヌシデなどの林が広がる(図2)。その東側にある竹林内で10個の糞を回収した(図3)。糞は0.5 mm間隔のフルイで水洗し、残渣をポイント枠法で分析した。

図2 保全地域の景観(棚橋さん撮影)

図3 竹林内のタヌキのため糞を採集する(棚橋さん撮影)

<12月>
結果は図4の通りであった。検出物の写真は図A-12に示した。


図4 タヌキ糞組成

2023年12月の糞組成で最も多かったのは果実で48%を占めた。種子は12%で、このうちエノキが10.4%を占めた。少量ながらヒヨドリジョウゴの種子も検出された。農作物は全てコメで、コメ、稲籾、糠層(果皮、種皮)を合わせて15.0%を占めた。人工物としては、3例からゴム手袋の破片、プラスチック片などが検出され、4%を占めた。その他、昆虫(4%)、支持組織(繊維、6%)などが検出された。
 このような組成をみると、本調査地のタヌキの12月の食性は、保全地域内の落葉樹であるエノキの果実などを主体に果実を食べ、時に農地でコメを食べ、場合によって人工物も口にするというものであると考えられた。


図A-12 2023年12月の検出物

<1月>
1月も基本的に似たフン組成であり、果実、農作物、種子が重要であった。果実でも種子でもイヌホオズキが大きい割合を占めた(図A-1)。種子としてはエノキが多かった。


図A-1 2024年1月の検出物

<2月>
2月になると、やや変化が見られ、果実はこれまでの40%台から24.3%に減少した。農作物が20%前後から31.7%に大きく増加したが、その主体はコメであった。コメには籾殻がついたものもつかないものもあったので(図A-2)、保全地域に隣接する田んぼ(図4)に残った落穂を食べている可能性がある。また人工物が5.8%に増加した。内訳としては化学繊維のネット、ゴミ袋などにある黒いポリ袋、ブヨブヨの柔らかいプラスチック製品などがあった。これらの結果は、林内のエノキなどの野生植物の果実が少なくなって、タヌキは田んぼに出て落穂を食べたり、人家に接近して人工物などを食べるようになったと考えられる。


図5. 保全地域(右側)に隣接する池と田んぼ(棚橋さん撮影)


図A-2 2024年2月の検出物

写真の一部は棚橋早苗さんの撮影によるものです。

<3月>
分析結果は図4に、検出物は図A-3に示した。分析結果を見ると、2月と似ており、果実が23.5%農作物が23.1%と多かった。農作物はやや減少した。逆に緑葉が増えたが、ほとんどはイネ科であった。種子にはエノキ、ヨウシュヤマゴボウ、センダンなどがあった(図A-3)。作物の多くはイネであったが、アズキも検出された(図A-3)。人工物としてはゴム手袋が検出されたが(図A-3)、量的には少なかった。
 このように3月は基本的に果実とコメを中心に冬の食物を食べていたが、昆虫とイネ科のはが少し増えたことは早春の到来を反映していた。

図A-3. 2024年3月の検出物

<4月>
 4月になると、いくつかの変化があった(図4)。検出物は図A-4に示した。一つは昆虫の増加で、3月には12.2%であったが、4月には20.4%になった。次に果実の減少である。タヌキは前の年の秋に実った果実を食べて、冬のあいだも食べるだけでなく、翌年の春にも食べ続けることがあるが、滝山では大きく減少し、エノキの種子が少数検出に過ぎなくなった。作物は3月(23.1%)よりやや増加したが、2月(31.7%)とほぼ同じレベル(29.4%)であった。内訳はコメが主体であった。人工物としてはティッシュとポリ袋が検出された。また不透過物が増え、「不明」が21.8%になった。
 これをまとめると、4月になって昆虫が出現してタヌキは昆虫を食べるようになったが、果実類は少なく、また作物も米くらいしか食べられないため、ティッシュやポリ袋など人工物も食べているという状況にあるようである。

図A-4. 2024年4月の検出物

<5月>
5月になると、大きな変化があった(図4)。検出物は図A-5に示した。これまで20-40%占めていた農作物はなくなり、羽毛(31.5%)と骨(24.1%)が多くなった。骨は空隙が多く、鳥の骨の可能性が大きい(図A-5)。骨は大きく、スズメ・サイズではなく、ヒヨドリやハト・クラスと思われる。昆虫は14.8%で4月とあまり違わない。種子ではクワが多かった(図A-5)。また人工物は全く検出されなかった。この結果は、これまでの農作物依存がなくなり、鳥の死体を食べ、昆虫や果実も多少食べたということを示している。ただし、これがタヌキの食物事情が良くなったのかはよくわからない。農作物と人工物がなくなったことを「食べる必要がなくなった」と解釈すれば、食物事情が良くなったといえるが、鳥の死体を確保するのは容易でないだろうから、安定的に良くなったといえるかどうか不明である。このサンプルは5月8日に確保されたものであり、質感から別の排泄と判断されたもの(n = 5)を採取したが、鳥の死体を食べた時の残渣が連続的に排泄されたのかもしれない。

図A-5. 2024年5月の検出物

<11月>
6月以降は糞虫の活動が活発になり、糞は回収できなくなった。ようやく11月になって確保できたので、分析した(図4)。2023年12月には果実が48.2%と多かったが、2024年11月は果実は18.8%に過ぎず、昆虫(17.2%)、支持組織(19.0%)などとほぼ同じく、多様な組成であった。種子ではエノキがやや多かった(図A-11)。作物はおもにコメであったが、米粒は残っておらず、粉砕された一部と多くの種皮(コメを覆う剥膜)が検出された。カキノキの種子は作物とした。カタツムリの殻も検出された(図A-11)。

図A-11. 2024年11月の検出物

<12月>
 12月は5つのサンプルが得られた。最も多かったのは作物でほとんどはコメであった。最も米粒は少なく多くは種皮であった。1例でカキノキの種子が見られた。果実も++と多かったが、種は特定できなかった。ムクノキの果皮は見られたが、種子は検出されなかった。昆虫は大幅に減少し、支持組織(おもに繊維)も減少した。イネ科の葉はやや増加した。人工物は全く検出されなかった。したがって、12月にはタヌキはおそらく田んぼに残された米への依存度を強め、そのほかカキノキなどの果実を食べ、食糧事情は悪くないように思われる。

図A-12. 2024年11月の検出物

<まとめ>
2023年12月から夏のデータは欠けたが1年間分析したのでまとめてみた。主要食物の季節変化を図6に示す。
 葉は量は少ないが安定的に検出され、春に多い傾向があった。これは各地のタヌキで見られ、葉が新しく柔らかいときにタヌキが食べるようである。果実と種子は糞では別々に検出されるが、タヌキが食べるときは果実を食べるので同じ図に示したが、冬に多く春から夏にかけて減っていった。種子としてはエノキが多かった。これは関東地方の里山でよくみられることである。ただ通常は秋に最も多く、それが冬にも継続するという形で見られるが、ここでは秋に糞サンプルが確保されなかったのでその点は不明であった。本調査地では作物が多いのが特徴的で、特にイネ(米)が多かった。田んぼに生えている状態で食べられるのか、落穂を探して食べられるのかはわからない。カキノキも栽培されるという意味で広義の作物に含めた。昆虫は冬に少なく春に多かった。通常は夏に最も多くなるのだが、ここでは夏のサンプルが得られなかったので、不明である。

図6. 主要食物の季節変化

これらをもとに「占有率-順位曲線」を描いた。これは、各糞における占有率をもとに、主要食物について最大値から順次小さい値を配置したもので、平均値だけからは読み取れない情報がわかる。もし多くのタヌキが好んで食べていればこのカーブは高頻度で高い値を維持する。もしタヌキが好んで食べるが、供給量が限られる良質な食物の場合、食べることができたタヌキの糞には大量に含まれるが頻度は低いので、カーブはL字型になる。逆に供給量は豊富だが、タヌキがあまり食べない食物の場合、カーブは低い値で長く尾を引くことになる。量も少なく、タヌキも好まない食物の場合は、カーブはグラフの左の小さいものとなる。
 本調査地の場合、「果実+種子」は高い値から減少し、ほぼ全サンプルに見られた(図7)。このことはタヌキはほとんどの個体が果実を食べたが、その程度は様々であったことを示す。作物もやや少ないもののほぼ同様の形を取ったから、ここのタヌキは作物への依存度が高いと言える。

図7. 占有率-順位曲線

 これに対して葉はL字型に近い形のカーブとなった。タヌキは葉を好んで食べるのは初夏であり、それ以外の季節は偶発的に食べるようである。支持組織は典型的な「低占有率・高頻度」で果実や葉を食べたときに同時に摂取されるためであろう。人工物は占有率も頻度も小さかった。

 こうした結果から分かるのは、滝山地区のタヌキは里山のうちでも農地への依存度が高く、米を中心とした農作物をよく食べ、併せてエノキ、ムクノキなど雑木林の樹木の果実をよく食べることがわかった。そして量は多くはないが、春と秋には昆虫が多くなったから、夏にはそれ以上に昆虫を食べている可能性がある。里山であるのに人工物は少なかったことは、農作物や果実に恵まれて、食糧事情が良いことを反映しているものと思われる。
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最近の論文2025

2025-03-12 22:24:20 | 最近の論文など
高槻成紀 ・川崎公夫 ・落合茉里奈 ・福地健太郎 ・石井敦司 ・河西 恒 ・鈴木大輔 ・千家典子 . 2025. 
日本中部のアファンの森のフクロウ Strix uralensis の
繁殖と食性の長期調査. 
Strix, 41: 33-45.

<摘要>
本州中部のアファンの森で 2002 年以来 21 年間,フクロウの巣箱の巣立ち雛数と巣に残された動物遺体を調べた.巣立ち雛数 は 0 〜 4(平均 1.9)の幅があり,動物遺体は齧歯類が主体で,森林生のアカネズミ属と草原生のハタネズミがほぼ半々(50.8 % と 49.2 %)であった.またその割合に年変動があることがわかった.2013 年から 9 年間,コナラのドングリ結実量とアカネズミ属の数を調べたところ,正の相関があった(R2 = 0.53).ドングリ結実量,ノネズミ個体数,フクロウの食性と繁殖という複雑な関係には明瞭な関係は見出せなかったが,局面ごとには弱いながら相関があり,アファンの森のように周囲を耕作地や牧場で囲われた環境ではフクロウはこれらの変動に応じてノネズミを選択的に採食している可能性があることを指摘した.

Takatsuki, S. and Suzuki, K. 2025. 
Sexual differences in skull and femur size and body weight of raccoon dogs of Japan.  日本のタヌキの頭骨、大腿骨サイズと体重の性差
Humans and Nature, 35: 1-5.

高槻成紀. 2025.
フクロウが木の実を食べた?
どうぶつと動物園, 2025 winter: 32-33.

高槻成紀. 2025. 
ニホンジカの増加と植生への影響の背景を長期的に捉える. 
地球環境, 30: 3-12.

<摘 要>
シカ (ニホンジカ)は1970年代までは生息が限定的で、その頃のシカと植生との関係の研究は特殊な現象と見られていた。しかし1990年代以降は全国的に拡大し、その影響も当初は農林業被害であったが、自然植生への影響と捉えられるようになった。シカの影響は採食による植物葉の除去によるものが大きく、植物側の反応の仕方により群落レベルで複雑な変化をもたらす。またシカの間接効果は広範に及ぶことを紹介した。シカ増加の背景となる要因を挙げたが、単独で説明できるものはなく、農山村の過疎化との同期性が強かった。長期的に見れば戦後の一次産業軽視と、長期的国土計画の欠如によるところが重大であり、野生動物と日本人の関係は今後とも更に深刻さを増すであろう。その解決には分野を超えた研究協力と、行政による総合対策の促進とマスメディアによる広報が不可欠であることを指摘した。

高槻成紀・阿部隼人・片山歩美. 2025. 
九州北部の低山地におけるニホンジカの食性. 
哺乳類科学, 65: 1-8. こちら

<解説>
先日、宮崎県椎葉村のシカの食性についての論文を紹介しましたが、同じ九州大学演習林で福岡にあるものでも調査する機会がありました。そしてここでもシカの急増によって植生が貧弱化し、シカは夏でもまともに植物の葉を食べられない状況にあることがわかりました。こうなると何が「本来のシカの食性」と言えるのか疑問に感じるほどです。

<要約>
福岡県篠栗町の九州大学農学部附属福岡演習林において2023年2月から2024年1月までの5回,ニホンジカCervus nippon(以下シカ)の糞を採集してポイント枠法で分析した.糞組成は2月は常緑広葉樹の葉を中心に生葉が42.1%を占め,残りは繊維と稈が主体であった.4月には生葉がやや減少し,繊維が大幅に増えた(45.8%).8月になるとイネ科の葉が11.2%,稈が56.5%に増え,シカが林外で採食することを示唆した.10月には葉がやや減少し,稈が減少(12.0%)して繊維が回復(39.0%)した.またツブラジイCastanopsis cuspidataと思われるドングリとヨウシュヤマゴボウPhytolacca americanaの種子が検出された.1月には生葉が最少(16.8%)になり,不明物質(35.1%)が増加した.調査地では2010年前後にシカが急増し,植生が貧弱になっており,シカの食性はそのことを反映して植物の生育期でも生葉の占有率が23-33%に過ぎなかった.

++++++++++++

Takatsuki S, Kawai T,  Tsuchiya R,  Bat-Oyun T. 2025. 
Diet of Siberian marmot in the forest-step zone of Mongolia: grass or forb? 
Mammal Study,
モンゴルの森林ステップ帯におけるシベリアマーモットの食性 - イネ科か双子葉草本か?

モンゴルには20年来、毎年訪問しています。ブルガンというウランバートルから半日西に行ったところで、植生は草原に丘の上に林がある、森林ステップと呼ばれるところです。丘の斜面に所々緑が濃い塊があり、近づくとマウンドがあります。マーモットが掘ったもので、周りと明らかに違う植物が生えています。マウンドの入り口にはマーモットの糞が落ちています。これまでヨーロッパや北アメリカ、それにヒマラヤでマーモットの食べ物を調べた研究はありますが、モンゴルのシベリアマーモットでは調べられていません。

<摘要>
 モンゴルの森林-ステップ地帯に生息するシベリアマーモット(Marmota sibirica)の夏季の食性を、ポイント枠法を用いた糞分析によって明らかにした。調査地の1つは植生が乏しく、イネ科植物が比較的多い乾燥した斜面、もう1つは植生が豊富で双子葉植物の割合が多い緩斜面であった。マーモットの糞(各所でn = 10)を採取し、ポイント枠法で顕微鏡分析した。全体として、糞組成の60-70%を双子葉植物が占め、これは他のマーモット種と同様であった。糞組成は生息地の食物の供給量を反映しており、イネ科植物が多い乾燥した斜面では糞組成にイネ科植物が多く含まれる傾向があった。また、2つの糞サンプルの組成は他の多くのものとは異なっており、1つはバッタ類が多く、もう1つは木質繊維で構成されていた。本研究は、モンゴルにおけるシベリアマーモットの糞中の食物の量的組成を初めて明らかにしたもので、双子葉植物(60-70%)の方が、イネ科植物(20-40%)よりも重要であった。この結果は、ユーラシアや北アメリカに生息する他のマーモットの食性組成と同様であった。
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標本

2025-01-04 07:07:23 | 標本

有蹄類
 カモシカ 2019.6.20 こちら
 
食肉目
 イタチ 2024.11.17 こちら

げっ歯類
 リスの陰茎骨 2019.3.18 こちら
 モモンガ 2018.12.20 こちら
 ムササビ 2018.11.17 こちら
 アカネズミ 2020.1.2 こちら
ヤマネ 2022.12.10 
こちら

食虫類
 アズマモグラ1 こちら
 アズマモグラ2 こちら
 アズマモグラ 2020 こちら
 ヒミズ こちら new!

鳥類
 アオゲラ こちら new!
 イカル こちら
 キビタキ こちら
 クロツグミ こちら
 シメ こちら
 ジュウイチ こちら
 ムクドリ こちら


両生類
 ヒキガエル こちら
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最近の動き

2024-12-30 23:06:49 | 最近の動き
2024.12.14 麻布大学いのちの博物館ワークショップの記録 こちら

2021.1.13 『シカ問題を考える』(2015、ヤマケイ新書)が韓国で翻訳されて出版さた。

2020.12.12 「はけの自然と文化をまもる会」で「 タヌキや身近な動植物と私たちの暮らし」という講演をした。こちら
2020.12.6 「木の実 草の実 たねしらべ」を実施した。こちら
2020.11.17 高尾山周辺のシカの糞分析例 こちら
2020.11.22 「はけの自然と文化をまもる会」で「花マップの調査からわかる玉川上水」という講演をした。こちら


2020.11.12 アファンの森でタヌキの糞のサンプリングをした。



2020.10.10 宗兼明香・南 正人との共同研究である以下の論文が
   「哺乳類科学」に受理された。
    長野県東部の山地帯のカラマツ林のテンの食性
2020.10.2 「麻布大学キャンパスのカキノキへの鳥類による種子散布」が
  「麻布大学雑誌」に受理された。
2020.9.21   石川愼吾氏、比嘉基紀氏との共同研究である以下の論文が
   「日本生態学会誌」に受理された。
   四国三嶺山域のシカの食性−山地帯以上での変異に着目して 
2020.8.30  稲葉正和氏、橋越清一氏、松井宏光氏との共同研究である以下の論文が
   「Mammal Study」に受理された。こちら
   Seiki Takatsuki, Masakazu Inaba, Kiyokazu Hashigoe, Hiromitsu Matsu.
   Opportunistic food habits of the raccoon dog – a case study on Suwazaki
    Peninsula, Shikoku, western Japan
   タヌキの日和見的な食性 - 愛媛県の諏訪崎での事例 -
2020.8.28 日本哺乳類学会特別賞の受賞 こちら 
2020.7.25 鏡内氏との共同研究である以下の論文が「Wildlife Biology」に受理された。
   Kagamiuti, Yasunori and Seiki Takatsuki.
   Diets of sika deer invading Mt. Yatsugatake and the southern Japanese
   South Alps in the alpine zone of central Japan
   中部日本の八ヶ岳と南アルプスの高山帯に侵入しているニホンジカの食性 こちら
2020.5.26  谷地森氏との共同研究である以下の論文が「哺乳類科学」に受理された。
   高槻成紀・谷地森秀二「高知県のタヌキの食性 – 胃内容物分析 – 」
2020.4.25 以下の論文が「植生学会誌」に受理された。
  高槻成紀「2018 年台風 24 号による玉川上水の樹木への被害状況と
   今後の管理について 」こちら
2020.3.25 「津波の来た海辺」が出版。このうち「タヌキも戻ってきた」を
   分担執筆。
2




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最近の論文 2024

2024-12-30 06:24:10 | 最近の論文など
信ヶ原佐保・金子弥生・高槻成紀. 2024.
食肉目の糞分析法の検討 – 簡易面積法の提唱 –
「哺乳類科学」 64:177-184. こちら


この論文は、方法の改良に関するものです。私は糞分析ではポイント枠法という方法を使っており、いい方法なのですが、時間がかかるため根気が必要です。それで、もう少しなんとかならないものかという思いはありました。農工大の金子先生から相談があり、テンのいい試料があるということで、信ケ原さんの卒論指導をすることにしました。
顕微鏡の格子をカウントするという時間のかかる方法をした上で、それとは別に、方眼紙に広げておよその被度(覆う面積)を記録する方法と比較したら、ほぼ正確で、時間の大幅短縮が可能であることがわかりました。従来のポイント法では大変なほど多量サンプルがある場合はこの簡易面積法がおすすめだという論文です。

<要約>日本の食肉目の食性の組成評価法としてはポイント枠法が用いられることが多いが,この方法は時間を要し,分析対象によっては光学顕微鏡が必要なので,改良するのが望ましい.そこで「簡易面積法」を考案し,テン(ホンドテン)Martes melampusの糞内容物を,ポイント枠法と簡易面積法で分析し,内容物の占有率(百分率組成) と所要時間を比較した.簡易面積法では内容物を広げて主に肉眼により,一部実体顕微鏡で補完して,各食物カテゴリーの面積を4 段階の「占有率スコア」で評価する. 占有率スコアは 0.1:<1%,1:1 ~ 10%,2:10 ~ 50%,5:>50%とする.このスコアを合計し,各食物カテゴリーの占有率(百分率組成)を得てポイント枠法の結果と比較したところ,占有率の大きい内容物はポイント枠法の結果に近い値となり,組成は 75%以上の類似度を示した.しかも所要時間は 1 サンプルあたり 5 分程度であり,ポイント枠法で要する 20 ~ 30 分の 13 ~ 15%に過ぎなかった.これらを総合すると食肉目の糞分析で大量のサンプルが得られた場合,主要内容物の占有率を知るには簡易面積法が有効であることがわかった.

12/29/2024
高槻成紀・前迫ゆり(2024)
奈良公園の飛火野と春日山原始林内のシカの食性 – シカと森林の保全を目指して
保全生態学研究 こちら

<解説>
シカといえば奈良公園が連想されるように奈良のシカはよく知られています。私は動物の食性を調べていますが、それは食べるという行為を通じて動物が他の動植物と繋がっており、そこに「生きる」ということの意味が集約されているからです。その研究の出発点は卒論に選んだ宮城県の金華山にありますが、その応用として行ったのが奈良公園で、半世紀も前のことになります。奈良公園と呼ばれるのは通常大仏殿などがある平坦地ですが、実は背後にある春日山も含まれます。春日山は常緑広葉樹の見事な林で、森林生態系として天然記念物に指定され、詳細な研究が行われていますが、そこに住むシカのことはわかっていません。平坦地のシカの食性はすでに明らかにしたのですが、春日山のシカは手付かずです。隣接するのだから平坦ちと同じようなものかもしれませんが、違う可能性もあり、調べてみないとわっかりません。そこで春日山の森林を調べておられる前迫ゆりさんの共同で調べることにしました。結論的にいうと、次に<要旨>に書いたように全く違っていました。そして、貴重な原生林の保全には、植物だけでなく、シカの視点も不可欠であることを指摘しました。

<要旨>
奈良公園の飛火野と春日山原始林のシカの糞を分析したところ、飛火野の糞では5月から10月までシバが30-40%を占める主要な食物であったが、1月には繊維が多くなった。春日山原始林の糞では葉は少なく、繊維と不明物(半透明な種子破片、芽鱗など)が多く、7月でも葉は少なかった。これらは調査地の下層植生の量を反映していた。春日山原始林のシカは、林外の草原を餌場として利用せず、林内の樹皮、下層植生の枝葉、枝、林床の種子・果実などを採食しており、森林の構造と更新に深刻な影響を及ぼしている。このことから奈良公園のシカの保護と春日山原始林の保全の両立の問題点を指摘した。

24.12/22
高槻成紀・大出水幹男. 2024. 
鳥類群集の調査回数と確認種数の関係−東京西部での事例. 
Strix, 20: A71-A82.

説明:大手水さんのすごいデータから小平の鳥類の特徴を記述した論文を書きましたが、今回はそのデータを解析したものです。通常、毎日のような調査を10年間続けることはできません。だから、別の場所での調査結果と比較するためには、同じ回数調査をしなさいとは言えません。そこで、逆にこのデータから少ない回数を抽出するという試みをし、それがどう違うかを検討しました。そのために、10年間のデータから毎月の第1回のデータを取り上げたもの、それを3年間、1年間と少なくして比較しました。回数が減れば種数が減るのは当然ですが、種数だけを比較するのではなく、その鳥が留鳥か、渡鳥か、旅鳥か、迷鳥かなどタイプ分けにしてみました(図3)。それを頻度が高いものから低いものへと並べると、高頻度の鳥というのはせいぜい20種ほどで、あとは低頻度でグラフは長く尾を引くのですが(図2)、その20種ほどは全て流暢、長い尾の右の方は迷鳥など滅多にみられない鳥でした。考えてみれば当たり前ですが、これは重要です。そして、種数ではなく個体数で同じグラフを描くと、もっと極端でした(図5)。そして上位種が調査回数に関係なく90%以上を占めていました(図6)。この上位種がその場所の鳥類の基本部分を作っていて、これに渡鳥や旅鳥、迷鳥が付け加わって鳥類群集ができているのだと思います。このことは、鳥に詳しい人はそのことを実感として知っていると思いますが、私にはとても新鮮な驚きでした。
 応用的には、毎月の調査を1年間行えば上位種は把握でき、それ以上調べれば渡鳥も補足でき、あとは多くすればするほど旅鳥なども記録できるということがわかりました。

24.12.15
大出水幹男・高槻成紀.2024.
玉川上水の鳥類 − 小平地区での10年間の記録 – 
山階鳥類学誌, 56: 180-193. (2024) (URLはまだ)

 この論文は大出水さんが小平の玉川上水沿いで毎年150回以上の調査を10年間実施して蓄積されたデータを解析したものです。それにより、84種、140,057羽の鳥が記録されたことがわかりました。この数は明治神宮や皇居などに匹敵するほど豊かなものです。またその内訳を見ると、森林に生息するものとジェネラリスト(さまざまな生息地を広く利用するタイプ)が主体で、都市型や農地型は少ない構成でした。このことはこの場所に状態の良い樹林があることを示唆し、その保全が重要であることを示唆します。私は、論文の最後に、そうであるからここに計画されている道路計画を見直すべきだと書きました。この道路は幅が36メートルもあり、開通すれば深刻な影響があることは確実です。「道路反対」をイデオロギーで主張するのではなく、その意味を動植物に成り代わって訴えたいと思います。大出水さんの超人的努力によって取られたデータはそれに値するものでした。

10/29 
Seiki Takatsuki, Eiichi Hosoi and Kazuo Suzuki. 2024.
Age-related changes in the body size and weight of sika deer (Cervus nippon): A comparison between northern and southern populations of Honshu, the main island of Japan
(本州のニホンジカ南北の集団の体格と体重の年齢別比較)
Mammal Study, 49: 299-307. こちら

若い頃に岩手県に通って調べたシカの体格などについて、その後、山口大学の細井さんが山口でとられたデータを比較した論文です。
ニホンジカは北の集団ほど大きいということはわかっていたのですが、この研究の新規性は年齢査定をして、成長のパターンを調べたことにあります。それによって北の方が成長期間が長く、性的二型が大きいことがわかりました。地味ですが、こういう事実重視の記載的論文が重要だと思っています。

摘要:ニホンジカは体サイズに南北変異があることが知られているが、成長パターンや性差は十分には調べられていない。本調査は本州北部の岩手(北集団、n = 1257)と本州西部の山口(南集団、n = 386)の集団について、後足長と体重の加齢的変化を比較した。後足長は北集団が南集団よりもオスで12%、メスで9%長く、2歳まで、南集団では1歳まで有意に成長した。体重は北集団では3歳まで、南集団では2歳まで有意に増加した。オス/メス比は北集団の方が大きかった。本調査は、1)北集団のシカの方が大きい、2)どちらでもオスの方が大きい、3)オスの方がメスよりも速く、長く成長する、4)性的二型は北集団の方が顕著であることを示した。


24.9.17
Takatsuki, S., Imaei, H, Sato, M. 2014. 
Seed dispersal of Zoysia japonica by sika deer: An example of the “foliage is the fruit” hypothesis. 
ニホンジカによるシバ種子の散布:<葉は果実なり仮説>の好例
Ecological Research, 2024: 1-10. こちら

私は学生時代から金華山島でシカと植物の関係を調べてきました。半世紀以上が経ちました。ある現象を短期的に記録することもありますが、シカと植物の関係では長い時間をかけて起きる変化もあります。金華山では神社境内に芝生があり、シカが高密度で暮らしています。私が島に通い始めた1970年代は牡鹿半島にコバルトラインという観光用の道路ができて、観光客が急増しました。その客は神社でシカに煎餅を与えるのでシカが増えただけでなく、周辺へも拡大していき、神社の北にある当時ススキ群落だった場所が草丈を低くし、1980年代の後半ではシバ群落になりました。シバは地下茎で拡大する高い能力を持っています。当時学生の今栄君を指導してシバの種子生産やシカの糞中の種子数のカウントなどを調べてもらいました。その後、それまでなかった尾根沿いにそれまでなかったシバ群落が出現しました。神社との間には森林が広がっているので、このシバ群落は地下茎の伸長で拡大したのでないことは確かです。今栄君には東北大の川渡農場で飼育していたシカにしば種子を食べさせ、糞を回収してもらいました。シバ種子は3分の一は粉砕されないで排泄され、発芽能力も保持していました。私はその排泄された種子を野外に置いて発芽を調べたら、明るい場所ではよく発芽しました。これらのデータから、尾根に出現したしば群落はシカによって種子散布されて出現し、その後シカの採食圧で維持されていると結論しました。Janzenは一部のイネ科植物はこういう種子散布をしているが、これは多肉果実が美味しい果肉を提供して鳥類などに種子散布させるのと同様に、イネ科の植物は葉を草食獣に提供し種子を一緒に食べさせて散布しているという「葉は果実なり」仮説(Foliage is the fruit hypothesis)を提示しましたが、その好例だと考えました。

最初の調査は1991年ですから33年後に論文になった「労作」みたいですが、実は最後の調査は2010年に完了したので、長いとはいえ実質は20年ほどでできたもの、14年の遅れは私の遅筆によるものです。

この論文は以下の2点で私らしさが出たと思います。1)動物の論文でも植物の論文でもなく、動植物のリンクの論文である、2)粘り強く長期継続することで記述が可能であった(ここは遅筆を棚に上げたい)。

24.6/18
高槻成紀・植原彰. 2024. 
甲州市菅田天神社のフクロウのペリット内容 – 市街地での1例. 
Strix,40: 129-135.

 日本のフクロウは森林に住むアカネズミ類を食べるというのが定説でしたが、わたしたちが八ヶ岳で調べたら牧場に近いところではハタネズミの割合が高いことがわかりました。その後、町中では鳥がよく食べられているという報告がチラホラではじめました。山梨の乙女高原で一緒に植物や訪花昆虫をしらべている植原さんと話していたら、以前に甲州市の神社の木立でペリットを集めていたということで、分析させてもらいました。そうしたら確かに鳥が多く検出されました。タヌキでもそうですが、融通のきく食性を持つ動物の場合、とにかく具体的な事例の蓄積が不可欠で、私はそういう事実の記録に役立ちたいと思っています。

<摘要>2001年5月に山梨県甲州市の神田天神社の森で採集したフクロウのペレット37個を分析した。げっ歯類、鳥類、食虫動物の出現頻度は、それぞれ26、24、4であった。この研究における鳥の出現頻度(64.9%)を以前の研究と比較したところ、森林や里山(約10 %)よりも高く、都市地(約70 %)と同様だった。本調査の結果は、都市域に生息するフクロウが獲物として鳥に依存する可能性を裏付けるものであった。

24.8/6 
信ヶ原佐保・金子弥生・高槻成紀
食肉目の糞分析法の検討 – 簡易面積法の提唱 –
「哺乳類科学」 64:177-184. こちら

この論文は、方法の改良に関するものです。私は糞分析ではポイント枠法という方法を使っており、いい方法なのですが、時間がかかるため根気強く行っていますが、もう少しなんとかならないものかという思いはありました。そこでテンのいい試料があったので、顕微鏡の格子をカウントするのではなく、方眼紙に広げておよその被度(覆う面積)を記録する方法と比較したら、ほぼ正確で、時間の大幅短縮が可能であることがわかりました。従来のポイント法では大変なほど多量サンプルがある場合はこの簡易面積法がおすすめだという論文です。

24.6.15
Takatsuki, S.,  Inaba, M. 2023. 
Food habits of raccoon dogs at an agricultural area in Shikoku, Western Japan. 
四国の農耕地のタヌキの食性
Zoological Science, こちら

松山で農耕地に近い場所に生息するタヌキの食性を1年を通じて調べた。果実が最も重要で、冬以外は30-40%を占めた。次に作物が重要で10-30%を占め、これまでの分析例に比べ、安定して検出された。作物にはコメ、ムギ、ゴマ、オランダイチゴ、キウイフルーツ、ギンナン、カキノキなどがあった。タヌキにとって作物が重要であったが、被害としては深刻ではなく、ここではイノシシ、シカ、サルなどは駆除されるが、タヌキは駆除されていない。タヌキは漢字で「狸」とされ、人里で人と共存してきたが、それにはこのことが背景にあるからかもしれない。

24.6.15
Takatsuki, S. and Kobayashi, K. 2023. 
Seasonal changes in the diet of urban raccoon dogs in Saitama, eastern Japan. 
埼玉県の市街地のタヌキの食性の季節変化
Mammal Study, 48: 1-11. こちら

この論文は浦和の市街地の中にある高校の一角にある木立のためフンを分析したもので、果実が主体ですが、種類が少ないこと、近くに池があるので、カエルやザリガニなど水生動物を食べていることが特徴的で、急速に市街地化され、限られた緑地で細々と生き延びていることがわかりました。

<摘要>市街地のタヌキの食性分析例として、埼玉県さいたま市の高校の敷地に隣接する雑木の木立ちのタヌキの糞分析を行った。この木立ちは白幡沼という沼に隣接している。ここのタヌキの食性は、冬は食物組成が多様で、春はアズマヒキガエルと昆虫が増え、夏はエノキの果実、昆虫、アメリカザリガニが増え、秋はエノキ、ムクノキの果実が優占した。特徴的なこととしてヒキガエルとアメリカザリガニが検出されたことで、このことはタヌキの食性の日和見的性質を示している。検出された種子はカキノキ、ウメe、ビワなどの栽培種を含め10種にすぎず、関東地方の里山環境で検出されるキイチゴ類、クワ属、ヒサカキなどがなく、種数が貧弱であった。さまざまな人工物が検出されたが、平均占有率は4.0%にすぎなかった。これらの結果は緑地に乏しい市街地にある学校の敷地内外という、生育する樹木の種数が限定的で、沼に隣接する環境をよく反映していた。


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アオゲラの骨格標本

2024-12-28 17:03:15 | 標本
長野県北部の信濃町にあるアファンの森ではときどき鳥がガラス窓にぶつかって死ぬことがあるそうです。その中にアオゲラがあったので標本を作りました。

アオゲラの死体

羽毛を除き、内臓を摘出し、皮膚、筋肉を外した後、ポリデントにつけ、数日水を取り換えると骨格標本のもとができます。それを針金の軸で支えて組み立てます。
仮に組み立てたアオゲラの骨格

 それから尾羽をつけて、円柱に取り付けました。アオゲラは樹上をす早く歩いて移動しますが、その時に体が安定するように両足と尾翼の3点で安定支持します。そのためアオゲラの尾羽のうち中央の2本が太くがっしりしています。

完成したアオゲラの標本

 この標本で注目したのはアオゲラの舌です。キツツキ類は木の幹を突いて穴を開け、中の昆虫を食べることが知られています。そのために長い舌を持っていますが、その舌は口から喉のほうを通りますが、そこで二股に分かれます。そして後頭部を越して頭頂部を経て嘴の付け根に達します。驚くべき長さです。

 アオゲラの舌

このことは知っていたのですが、実際に見ると驚かずにはいられません。頭骨の皮膚を剥がす確かに頭に枝分かれした舌が見えました。

頭頂部から見た舌

それを慎重に取り出しました。

舌と頭骨

 ともちろん舌そのものは筋肉です。その中に舌骨が入っていますが、骨といっても柔らかい膜状のものです。舌の筋肉を収縮させると、この舌骨が一瞬で前に押し出されて舌がビュンと飛び出す仕掛けです。舌には粘液がついていて昆虫類をくっつけるようになっています。
 舌の筋肉を丁寧に除去して舌骨を取り出しました。これを再び頭骨に戻してボンドで接着しました。

舌骨をつけた頭骨


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鹿児島県高隈演習林のシカの食性

2024-12-28 16:40:35 | 報告
鹿児島大学高隈演習林のシカの食性

高槻成紀(麻布大学いのちの博物館)
川西基博(鹿児島大学・教育学系)

ニホンジカは北海道から沖縄まで日本列島に広く生息し、その分布域は亜寒帯から亜熱帯に及ぶ。この多様な生態系を反映して、シカの食性も一様ではなく、大きく見れば冷温帯の落葉広葉樹林帯ではササを主体とするグラミノイドが多く、暖温帯の常緑広葉樹林帯では常緑樹や果実などが多い傾向がある(Takatsuki 2009)。ただし、後者の情報は不十分であり、屋久島や山口などに限定的であった。特に九州では情報が乏しかったが、福岡と宮崎で分析例がある。福岡では駆除個体の胃内容物を分析した例があり(池田 2001)、双子葉草本が多く,夏には落葉樹が,冬には常緑樹が多くなる傾向があった。宮崎県では落葉広葉樹林での調査があり、グラミノイドが多く、落葉広葉樹がこれに次いだ(矢部ほか 2007)。その後、福岡県の九州大学福岡演習林と宮崎県の九州大学椎葉演習林で糞分析を行ったが、いずれもシカの密度が高いために、常緑、落葉を問わず広葉樹の葉、イネ科の葉ともに非常に少なく、九州の常緑広葉樹林帯でシカが低密度の場所での情報はいまだに不十分なままであった。
 今回、鹿児島大学の川西氏から鹿児島大学農学部附属高隈演習林でシカの糞が確保される可能性があると連絡をもらったが、秋までは発見ができなかった。2024年の2月以降、糞が確保されるようになったので分析したので、報告する。

方法
調査地は大隅半島基部の桜島の東側にある鹿児島大学農学部附属高隈演習林で(図1)、林内は巨樹の中に常緑低木類が多い(図2a, b)。詳しくは鹿児島大学のサイトを参照されたい(こちら)。方法はこれまでの他の場所と同一のポイント枠法なので省略する。


図1. 調査地の位置図

図2a. 高隈演習林の景観(2024年2月)

図2b. 高隈演習林の景観(2024年3月)

結果と考察
- 2024年2月上旬
シカの糞組成は常緑広葉樹の葉(図3)が60.3%を占め、優占していた(図4)。その多くはアオキの葉と思われ、実際調査地ではアオキに食痕が見られる(図5)。ただし、類似の表皮もあるかもしれないので種の特定は控える。これに次いで多かったのは繊維で34.4%であった。そのほかは微量であり、この結果は調査地のシカは林内に豊富にある常緑広葉樹の葉を食べ、その時に必然的に食べる葉の基部の枝部分の繊維が糞中に出現したと思われる。


図3. 検出された常緑広葉樹の表皮細胞. 格子間隔は1 mm.


図4. 高隈演習林における2024年12月までのシカ糞の組成(%)

図5. アオキの食痕(2024年3月20日)

- 2024年2月下旬
2月23にも同じ場所で糞が確保された。下旬になると常緑広葉樹がさらに増えて、66.4%に達した(図4)。また繊維は減少した。

- 2024年3月下旬
3月20日に採集した糞の組成は2月とあまり違わず、常緑広葉樹の葉がやや増えて71.2%と優占していた。2月下旬に11.2%を占めていた稈は0.9%に減少し、繊維が23.7%に増加して2月上旬と近い値になった。したがって3月になっても2月と同様、常緑広葉樹を食べている状態が維持されているといえる。

 今後、春から夏にかけては草本類、落葉広葉樹、イネ科などが増える可能性はある。ただし、シカ低密度の場所では糞の密度が低く、しかも夏には糞虫によって糞が分解するので、さらに発見がむずかしくなることが予想される。今後も糞が確保されるのが望ましいが、冬に常緑広葉樹の葉が60%以上検出されたことは意味が大きい。現在はシカが高密度になっている宮崎県の椎葉演習林でも、シカが低密度の時代にはこのような糞組成であった可能性がある。

- 2004年4月
4月15日にはサンプルは2つしか確保できなかった。その糞の組成はこれまでとほとんど違わず、常緑広葉樹の葉が63.7%と優占していた(図4)。繊維が27.0%で、これまでとほぼ同じレベルであった。果実は5.7%とやや多くなった。したがって4月もこれまで同様、常緑広葉樹を食べている状態が続いている。ただしサンプル数が少ないので、参考程度としておく。

- 2024年6月
 5月はシカの糞を発見できず、6月も11日に1糞塊が発見されたにすぎない。元々シカ密度が低く、おそらく糞虫の分解活動が活発なため、新鮮な糞が残っていないためと推察される。参考までに分析したところ、ほとんどが繊維と常緑広葉樹の葉で占められ、それぞれ54.5%と31.5%であった。これは繊維が増加し、常緑広葉樹の減少したということだが、サンプル数が1つだけなので、参考記録としたい。減少したとはいえ常緑広葉樹が30%ほどを占めたということは、ここでは常に常緑広葉樹が重要な食物であることを示唆する。

- 2024年7月
 7月9日にはサンプルは2つしか確保できなかった。ひつとは演習林102林班、もう一つは103林班である。その糞の組成はこれまでと違い、常緑広葉樹が少なく、葉でない支持期間が多くなった(図1)。この傾向は6月から認められ、常緑広葉樹が半減し、繊維が半分ほどを占めた。7月になると常緑広葉樹はさらに減少して15%にな理、稈が40.2%と大幅に増え、これまでほとんどなかったイネ科が11.9%になった。このことはシカが道路沿いの林縁などにはえたイネ科を食べるようになり、葉は消化率が高く、稈が消化率が低いため糞に反映されている可能性が大きい。このことは宮城県の金華山島や山梨県の早川町でも認められている。
ただしサンプル数が少ないので、参考程度としておくが、常緑広葉樹林では一年を通じて常緑広葉樹が多いわけではなく、夏になるとシカの食物においてイネ科が増えて常緑広葉樹が減るということであれば興味お深く、十分にあり得ると思う。

- 2024年12月
10月にはシカ糞が1サンプルしか確保できず、11月はシカの糞が発見できなかった。12月は24日には糞が発見できたが、2群に過ぎなかったので、これらは参考程度に記述する。10月は支持組織が大半を占めた。12月は大きく変化して、常緑広葉樹が51.2%と非常に多く、2月頃の組成に似たものになった。

 本調査地のようにシカ密度が低い場所では、夏の糞は確保が難しく、サンプル数が少ないので、結果は参考程度に捉えるしかないが、6月、7月と常緑広葉樹が減少し、10月には4.3%に過ぎないまでに低下し、12月には大きく増加した。これから、冬から春までシカが常緑広葉樹を食べることは間違いないと言えよう。夏、秋にはイネ科の葉や支持組織が多くなったが、この時期に生息地内の常緑広葉樹が減少するわけではない。このことから、常緑樹が減少するのは、草本類が豊富になって、シカはそれを食べて消化率の良い葉は糞にはあまり出ないで、消化率の悪い茎などが多く残るものと推察される。
 シカ密度が高い場所では糞サンプルの確保は良いだが、そういう場所はすでに食性が変化しているために、本来のシカの食性とは違うものになっている。一方、九州の本来の常緑樹林でのシカの食性を知るのは低密度の場所を探す必要があるが、そこでは糞の確保が難しいというトレードオフがある。したがって、本調査はあえてそのような場所でかろうじて実施したため、夏のサンプルが不十分であるという弱点はあるが、そこから得られる情報は貴重なものと言えると思う。


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感想文

2024-12-14 14:28:51 | イベント
(10歳未満)
ほねとるのがたのしかった。

(10歳未満)
ほねのかんさつがおもしろかったです!

(10代)
鳥のすの中の土を見て地面の土とはちがい、木くずや、はねなどが入っていておどろきました。一度栃木へ行きフクロウの声を聞いたことがありますがどこにいるか分かりませんでした。本物を見て、こうやってないていたのだと分かりました。このきかいをくださりありがとうございました。楽しかったです😀

(10代)
骨の形にあだなみたいなものがあってわかりやすかったです。一番きにいったのは「歌うおじさん」です。骨をさがすのはたいへんだったけれど、とても楽しかったです。またやってみたいです。

(10代)
下顎骨の歯が出し入れできるのが人間とは違う構造で興味深かったです。

(10代)
・ほねをみつけだすのが楽しかったです。
・歯がかんたんにぬけてびっくりしました。
・大腿骨がいっぱいでてきておどろいた。ママが「足はおいしかったんだね」と言っていたのでそうなのかな~とかんがえていました。
・容器に木くずを入れてすぐにほねがみえたのでワクワクしました。
・大きなはねもあったのでそれがなんのやつか知りたいです。
今日はありがとうございました。楽しかったです。

(30代)
息子と参加する機会を得ることができて楽しい一日となりました。
本日はありがとうございました。

(40代)
博物館ワークショップに参加するのは初めての経験でしたが、先生の説明もわかりやすく、フクロウの巣の中身を調べることでフクロウの食性についてだけでなく、フクロウが住む周りの環境のことも知れるのが大変面白かったです。フクロウがネズミを食べるのは知識として知っていましたが、モグラやドバトも食べていること、また吐き出したペレットがぎゅうぎゅうに圧縮されていることを実際に触れ、体験できたのはとても興味深いことでした。また博物館のワークショップが開催されたらまたぜひ参加したいと思います。今回は貴重な体験をさせていただきありがとうございました。


(40代)
フクロウの食性について興味深い体験だった。食性を固定することから、環境の変化を調査する過程を学んだ。なかなか骨を同定するのが難しい。貴重な体験でした。面白かったです。


(40代)
さまざまなネズミの生態がフクロウの巣をとおして知ることができて、とても興味深い内容でした。娘は歯のちがいがとても面白かったようでした。

(40代)
巣の中から出てきた少しの骨で、ふくろうの生活が分かる楽しい授業でした。分からないことや不思議なことも、質問すると分かりやすくお答えいただきありがとうございます。わたしの家の脇には川が流れていて、ネズミ、イタチ、ネコ、タヌキ、他にも多くの種類の動物がいます。巣箱を作ってみようかなと思いました。


(40代)
・想像を大きく裏切る(?)おもしろいワークショップでとても楽しかったです。じっくり宝骨探しできる時間があり、思いの外、骨がいっぱい容易に見つけられてこんな経験初めてでした。
・生き物のリアルな食生活をかい間見ることができワクワクしました。
・先生の下顎骨と歯の解説や、大きな骨から推測することなどのお話が分かりやすく、興味深かったです。
・資料も分かりやすく、作業もしやすいように、用具etcも用意されていて、スタッフさん達に感謝です。子供へのサポートもありがとうございました。
・麻布大学というところにも初めて来ました。キャンパス広くきれいで、話した学生さん達も好感がもてる方々でした。レベルの高い研究をこのように一般人に公開してくださり、ありがたいです。「学び」をみんなへ!!・・・というSDGs的だと思います。
・子供にも大きな刺激になったと思います。人生が変わるかもです(^^)
ありがとうございました。

(50代)
フクロウの巣の中など気にしたこともなかったが、そんな小さな場所からも色々なものが見えてくることを知り、日常の何気ない所にも様々な事があるのだろうと興味をもった。

(50代)
想像していたよりも多くの骨が出てきて驚きました。同じねずみだと思っていたけれど、歯の形が全く違うことはおもしろかった。細かな作業の積み重ねがあり、動物の生態、環境の変化までもがわかるのだなぁと実感しました。かめ虫がそのままの形で出てきたり、モグラや鳥の足が出てきたりと、驚きました。

(60代)
想像以上にネズミの骨が見つけられたことが一番の驚きでした。頂上捕食者のフクロウが住み続けられる環境にはネズミの量だけでなく多様な生きもののピラミッドの維持が必要なことを実感しました。
孫にも学ぶ機会を持てたことにも感謝しております。

(60代)
今回はお世話になりました。
感想ひと言“楽しかった。面白かったー!!”です。
フクロウはなかなか近寄り難い存在のイメージが強くて、実際、自分の目で自然界にいるフクロウを目撃したことはありません。
生きる為に一生懸命えものをつかまえて、上手に食べてヒナも養い、食べたえものの骨を残して我々人間にいろいろな事を教えてくれているんだなぁと感心いたしました。
このようなワークショップ、次回も参加したいと思いますし、他の方々にも伝えていけたらなぁと思います。

(70代)
とても興味深いワークショップでした。同じテーブルの皆さんと楽しく骨の分類ができ頭骨と骨がつながった時は、とても嬉しかったです。またイベントがある時は是非参加したいです。

(70代)
大変おもしろかった。
先生や、アシスタントの方が、分かりやすく説明、手伝って頂いた。
また、このような企画を続けて欲しい。
この近辺のフクロウ情報も集めて頂ければ、なお嬉しい。
ありがとうございました。

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麻布大学いのちの博物館でのワークショップ「フクロウの巣からネズミの骨を取り出す」の記録

2024-12-14 13:58:05 | イベント
「フクロウの巣からネズミの骨を取り出す」

麻布大学いのちの博物館名誉学芸員 高槻成紀

 <はじめに>
2024年12月14日に「フクロウの巣からネズミの骨を取り出す」というイベントを行いました。このイベントはしばらく休んでいたので参加者がどのくらい集まるか気になりましたが、11月25日に定員に達したということでした。
当日はご高齢の方から高校生、小学生そして幼稚園児まで広い年齢層が集まりました。

<フクロウの解説>
初めにフクロウという鳥の特徴を学んでもらいました。フクロウはネズミを食べることに特化した鳥で、そのために耳で「立体視」すること、音もなく飛べることなどを説明しました。

フクロウが耳でネズミの位置を知る原理

立体視の説明のために、両手を広げて人差し指を立てて、目の前まで移動させ、指先がつくかどうかを試してもらいました。初めに片目をつむっておこなうと半分くらいの人が失敗でしたが、両目でおこなうと全員がうまくいきました。フクロウはこれを耳で行っているということです。音もなく飛ぶために、翼の前にある毛に特殊な構造があって空気の流れを滑らかにして消音しており、これは新幹線のパンタグラフの減音に応用されているという説明をしました。

フクロウの羽にある消音構造

それからサンプルを提供してもらっている八ヶ岳での調査結果を説明しました。八ヶ岳では林の中に牧場がありますが、地元のグループが十数個の巣箱をかけていて、牧場に近いところでは巣の中に残されたネズミの内訳はハタネズミが多く、遠いところではアカネズミが多いことがわかっています。

フクロウの巣に残されたネズミの下顎の牧場からの距離
に対するハタネズミの割合

牧場と林でネズミをトラップ(罠)で捕まえると、確かに牧場でハタネズミが、林でアカネズミが多く獲れることがわかりました。
そのトラップは縦横5 cm、長さ20 cmほどのアルミの四角柱で、説明用に側面を切り抜いて内側が見えるようにしました。

トラップとその仕掛け

そして棒の先にネズミの模型をつけたものを中に入れて、餌台を踏むとドアが閉まるのをみてもらいました。「あとで自分でやってもいいよ」と言ったら「やったぁ!」という男の子がいました。

トラップの説明

アカネズミは林にすみ、ハタネズミは牧場のような草原的な場所に住むこと、その食べ物、消化器官が違うことなども解説しました。
それからフクロウが食物ピラミッドの頂点にいる頂点捕食者で、フクロウがいることはその環境が良いことを示しているという話もしました。

<作業の説明>
それから実際の骨取り出しの作業内容を説明しました。


初めにネズミの骨について、形の特徴から、例えば「歌うおじさん」などのニックネームをつけていることの説明をしました。「歌うおじさん」とは前肢の尺骨のことで、骨の端に円形の窪みがあり、それが人が口を開けているように見えるからです。

骨のニックネーム

それからネズミの下顎の骨の説明をし、アカネズミとハタネズミの下顎の違いを説明しました。

<骨の取り出し作業>
それから、八ヶ岳にかけられた巣箱から骨を含む巣材を4つを取り上げ、4班を作って1班に1つを受け持ってもらいました。班ごとに別の巣箱の巣材を担当してもらい、各人が少しずつ容器に取り出して、その中にある骨をピンセットで取り出してもらいました。
「あ、あった、あった!」と嬉しそうな声が聞こえました。寛骨や脛骨などは折れていることが多いため、説明通りでないものもあり、それは質問してもらって説明しました。中には鳥の脚がそのまま出てきたり、モグラの上腕骨が出てきたりして歓声が上がっていました。

取り出し作業をアドバイスする

ハタネズミの下顎骨から段ボール状の歯を取り出したり、アカネズミの下顎骨から切歯を抜き出したら、「オーッ!」と声が上がりました。

アカネズミの下顎とその中に入る切歯(上)

「もしこれが人の顎くらいの大きさだったら、ハノ長さは10センチ以上もあるわけです」と言ったら笑いが起きていました。
「ネズミの仲間は齧歯類と言って、齧る歯を持つ仲間ということで、硬いものを食べるために先がすり減るのだ、この長い歯が伸び続けるわけです」
「ヘエー」

この取り出し作業を1時間あまりしてもらい、感想文を書いてもらいました。それから一人一人に感謝状を渡して、イベントを締めくくりました。



<参加者の感想>
一部ですが、参加者の感想を紹介しましょう。そのほかは こちら

(10歳未満)
ほねとるのがたのしかった。

(10代)
骨の形にあだなみたいなものがあってわかりやすかったです。一番きにいったのは「歌うおじさん」です。骨をさがすのはたいへんだったけれど、とても楽しかったです。またやってみたいです。

(10代)
・ほねをみつけだすのが楽しかったです。
・歯がかんたんにぬけてびっくりしました。
・大腿骨がいっぱいでてきておどろいた。ママが「足はおいしかったんだね」と言っていたのでそうなのかな~とかんがえていました。
・容器に木くずを入れてすぐにほねがみえたのでワクワクしました。
・大きなはねもあったのでそれがなんのやつか知りたいです。
今日はありがとうございました。楽しかったです。

(40代)
博物館ワークショップに参加するのは初めての経験でしたが、先生の説明もわかりやすく、フクロウの巣の中身を調べることでフクロウの食性についてだけでなく、フクロウが住む周りの環境のことも知れるのが大変面白かったです。フクロウがネズミを食べるのは知識として知っていましたが、モグラやドバトも食べていること、また吐き出したペレットがぎゅうぎゅうに圧縮されていることを実際に触れ、体験できたのはとても興味深いことでした。また博物館のワークショップが開催されたらまたぜひ参加したいと思います。今回は貴重な体験をさせていただきありがとうございました。

(40代)
巣の中から出てきた少しの骨で、ふくろうの生活が分かる楽しい授業でした。分からないことや不思議なことも、質問すると分かりやすくお答えいただきありがとうございます。わたしの家の脇には川が流れていて、ネズミ、イタチ、ネコ、タヌキ、他にも多くの種類の動物がいます。巣箱を作ってみようかなと思いました。

(40代)
・想像を大きく裏切る(?)おもしろいワークショップでとても楽しかったです。じっくり宝骨探しできる時間があり、思いの外、骨がいっぱい容易に見つけられてこんな経験初めてでした。
・生き物のリアルな食生活をかい間見ることができワクワクしました。
・先生の下顎骨と歯の解説や、大きな骨から推測することなどのお話が分かりやすく、興味深かったです。
・資料も分かりやすく、作業もしやすいように、用具etcも用意されていて、スタッフさん達に感謝です。子供へのサポートもありがとうございました。
・麻布大学というところにも初めて来ました。キャンパス広くきれいで、話した学生さん達も好感がもてる方々でした。レベルの高い研究をこのように一般人に公開してくださり、ありがたいです。「学び」をみんなへ!!・・・というSDGs的だと思います。
・子供にも大きな刺激になったと思います。人生が変わるかもです(^^)
ありがとうございました。

(60代)
今回はお世話になりました。
感想ひと言「楽しかった。面白かったー!!」です。
フクロウはなかなか近寄り難い存在のイメージが強くて、実際、自分の目で自然界にいるフクロウを目撃したことはありません。
生きる為に一生懸命えものをつかまえて、上手に食べてヒナも養い、食べたえものの骨を残して我々人間にいろいろな事を教えてくれているんだなぁと感心いたしました。
このようなワークショップ、次回も参加したいと思いますし、他の方々にも伝えていけたらなぁと思います。

<私の感想>
私自身の感想も書いておきます。

・子供の参加
参加者は2時間ほどのあいだ、小さい子も含めて説明を聞き、休憩もしないで集中して作業をしていました。私が思うに、観察会などに行くと経験や知識が優先されるので、どうしても「大人が知っていて、子供は知らない」ことになりがちですが、この骨の取り出し作業では子供だからできないということがないどころか、むしろ子供の方がよく見つけるようで、「僕だってできる」「私の方がよく見つけた」ということがあるのだと思います。

・ホンモノに触れること
学校の理科は暗記をさせることが多いので、暗記が苦手な子は理科嫌いになりがちです。私の考えでは、教科書に紹介された知識を覚えることは理科、つまり自然を理解することと同じではありません。自然のことを知りたいという好奇心は本能のようなもので、誰にでもあるものです。子供は本物の動植物や石ころや雲などを好きです。その好奇心を育てるには、紙に書かれた知識ではなく、ホンモノに接するのが一番です。それに、現在ではバーチャルな体験が飛躍的に増えています。それはホンモノから遠ざかることで、そのことが子供の心や頭にどういう影響を与えるか、大変心配です。だから、私には、こういう活動をするのは、学校の理科でできない自然の魅力を伝えるのに、また疑似体験ではないホンモノ体験の力を伝えるのに役立つという確信があります。参加した子供たちは、その私の確信が本物であることを身をもって示してくれたと思います。
フクロウが食べたネズミの骨を自分で取り出したというワクワク感が、柔らかな子供の心に何かを残してくれたらいいなと思いました。

・市民科学と大学博物館
私がこういうイベントが大切だと思っているもう1つの理由は市民科学が重要だと思っているからです。八ヶ岳のフクロウの食べ物の調査を大学院生や研究者がおこなえば効率的であり、確実性もあります。遺伝学や生理学へ難しいだけでなく、特殊な機器や手法も使うので市民は参加できません。しかし、こういう調査はそういう特殊な人でなくてもでき、多くの人が調べることの楽しみを共有できます。科学の素晴らしさは、国籍や宗教や、いうまでもなく人種や性別を超えて人類が共有できるものであるところにあります。私の感想は子供が中心になりましたが、保護者の方も、高齢者の方も、みなさん楽しそうに作業をしていました。
「これみてよ」と鳥の足を取り出して見せてくれた年配の男性の表情は実に楽しげでした。また連れてきた小学生がすぐにネズミの下顎を見つけたのをみた保護者の方が「すごいじゃない」と言っていましたが、親子が一緒にこういう時間を共有することも得難い体験だと思います。

家族で作業をする

その意味で、こういう作業を研究者が独占することなく、市民と共有する機会を作るべきだと思います。それは広く言えば、大学が社会的存在であるということにつながります。現在の大学は地域とのつながりが重要だとしています。それは具体的には講演会という形で大学の先生が専門の話をするという形がとられますが、それは市民にとっては「聴く側」にまわることで、共有するという実感は持ちにくいことが多くなりがちです。その点、大学博物館は今回の作業のように、楽しく学ぶ機会を提供することで、地域の人々とのつながり作りを実現できるという重要な役割を果たすことができる存在です。大学はそのことを積極的に進めるべきだと思います。
このイベントは麻布大学いのちの博物館で久しぶりに実施しました。博物館は標本が展示・解説してあると思われがちで、もちろんそれは重要ですが、それは博物館のハード面で、車輪の両輪に例えれば、こうしたイベントはいわばソフト面で、博物館のもう1つの車輪といえます。麻布大学いのちの博物館では学生が「ミュゼット」というサークルで解説活動をしていますが、これもソフト面の活動です。今回のイベントでも、ミュゼットの木村充さんが参加して、必要なことによく配慮し、テキパキと、また子供にも優しく接してくれました。これからもこうしたソフト面が充実して来館者にいのちの大切さを伝えてもらいたいと思いました。

* 参加者の写真公開は了解を得ています。
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ムクドリ

2024-11-18 07:45:32 | 最近の論文など
ムクドリ 2022.4/28, 長野県黒姫アファンの森, 体重 90.1 g


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ジュウイチ

2024-11-18 07:41:56 | 最近の論文など
ジュウイチ 2015.2/26, 長野県黒姫アファンの森, 体重 105.2 g


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シメ

2024-11-18 07:38:19 | 最近の論文など
シメ 2004.4/4, 長野県黒姫アファンの森





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クロツグミ

2024-11-18 07:34:22 | 標本
クロツグミ 年月日不明、長野県黒姫アファンの森、体重 56.3 g





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キビタキ

2024-11-17 17:14:28 | 標本
キビタキ(オス) 2009.5.11 長野県黒姫アファンの森






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