8月の訪花昆虫調査
活動の様子と結果の取りまとめ(こちら)に分けて報告します。以下は活動の様子です。
2022年8月11日に訪花昆虫の調査をしました。今回は夏休みと言うこともあってか子供が参加することになりました。それから乙女高原で訪花昆虫の調査で学位論文を書いた国武陽子さんが久しぶりに来て調査に参加したいということでお嬢さんと来てくれました。いつものように塩山駅で一足先についていた国武さん親子と一緒に植原さんに車に乗せてもらい、乙女高原を目指しました。着くとシシウドの花が目立ちました。ロッジ前には皆さんが待っておられました。全体で13人になったということです。
ロッジ前で植原さんの説明を聞く
<参加者>
・植原さん
・国武さんとそのお嬢さん(小5)
・奥平さんとその息子さん(小4)
・春日さんとその息子さん(小2)
・小澤さんとそのお孫さん(中)
・鈴木さん
・井上さん
・芳賀さん
・高槻
自己紹介をしてから調査法の説明をし、記念撮影をしました。
記念撮影
10時半過ぎには各班に分かれて調査を始めてもらいました。
手分けしてそれぞれのコースに分かれる
遠くからはススキ原に見えましたが、中に入るとタチフウロ、ワレモコウ、オミナエシなどが咲き乱れ、うっとりするようでした。
咲き乱れる野草たち
「涙が出そう」
国武さんが言いました。シカに食べられてなくなっていた野草が柵の中で回復してくれたことに感激したようで、私も同じ気持ちでした。
私は今回も芳賀さんとのペアで、林を通るコースAとBを担当しました。明るいところではヨツバヒヨドリが目立ちました。時々見えるオニユリが「夏だな」と感じさせました。
7月よりは花が多いと感じました。上の方に行った時に、見慣れない赤い色の塊が見えました。なんだろうと思ったら、遠目でわからなかったのですが、フシグロセンノウが重なって塊のように見えたのでした。ほとんど見られなくなっていたオオバギボウシもたくさん開花しており、マルハナバチが潜っていました。同じ花に何度も出入りしていました。
オオバギボウシとマルハナバチ
コースAが終わったら12時を回っていたので、お昼にすることにしました。ロッジ前に戻ると国武さんたちがいました。それから少しずつ戻ってくる班があり、テーブルが賑やかになってきました。雑談をしていると、一時をかなり回ってから小川さんたちが戻ってきました。よほど昆虫が多かったようです。
「どうぞ」
と芳賀さんが漬物とスモモを出してくださいました。「太陽」とか「貴陽」とか品種名がついているらしく、違いがあるようでした。いただいたら甘みと酸っぱみが絶妙でとても美味しかったです。
お弁当を食べ終わったら子供たちが昆虫ネットを持って虫取りを始めました。
一人の子が
「ルリボシカミキリ」
と言ってとってきました。
「えー、すごい!」
とみんな撮影モードになりました。そうしたら国武はるかさんがもう1匹のルリボシカミキリをとってきたのでさらにびっくりしました。こちらはオスでひとまわり大きいものでした。生き物好きが集まっていたので、みんな嬉しそうでした。
「それにしてもヤナギランが増えたよね」
「ちょっとピークを過ぎたんですよね。ちょっと前、あそこの斜面の下のところにたくさん咲いて感激しました」
「柵を作ってすぐに戻ってくるのと、少し遅れるのとあるんだね」
お菓子が配られたりしてお腹がいっぱいになりました。
「午後は何時からにしますか?」
「そうね、まったりしてしまったから、一時半くらいでどうですか?」
「それはいくらなんでも遅いんじゃない?」
「そうか、じゃあ一時10分でどうですか?」
「そうしましょう」
ということで午後の調査を再開しました。
私たちはコースBを始めましたが、ここは尾根に近づくと林が切れて花が増えます。ヒメトラノオ、シモツケ、タチフウロ、ツリガネニンジンなどがたくさん咲いていました。
芳賀さんは花にマルハナバチ がきていると
「かわいー!」
とひとりごとのように口にするので、本当に好きなんだなと思いました。
終わってからコースJの上まできたら、下から老夫婦が登ってきて、いかにも植物が好きなようで、すれ違いざまに
「素晴らしいところですね」
と言われました。上から見ると良い天気で、遠くまできれいに見えました。
ロッジ前に戻ると、皆さんが次々に戻ってきました。
「あー疲れた」
という子もいましたが、充実した顔をしていました。大人がする調査についてきているというのではなく、子供自身が昆虫を見つけたり、採集をしたり、中には記録を書く子もいて、文字通り大人も子供もなく、同じ立場で調査に参加していました。
戻ってきた人はデータをわたし、採集してきた昆虫も渡してくれました。皆さん手慣れたようすで腕章や双眼鏡など調査道具を戻し、箱に詰めてロッジに運びました。こうしたことも植原さんが長年こうしたイベントを繰り返し実施してきて、こうした作業が自主的に行うものだということを自然な形で伝えてきたおかげなのだと思いました。最後に挨拶をして私にも一言と言われたので話しました。
「今日は子供も参加してくれたのでとても楽しくできました。柵ができて数年経ちました。おかげで花が戻ってきましたが、こういう調査は珍しい植物が回復したで終わることが多いのですが、花だけでなく、花と昆虫のリンク(結びつき)が戻ってきたことを記録することが大切だと思います。それが子供を含めて多くの人の協力でできたことはとてもいいことだと思います。調査そのものとしてもとても意味がありますが、このことは乙女高原の保全のための資料としても価値があると思います。今日はありがとうございました。」
と締めくくりました。
帰りの車の中では国武さんの現在の研究活動の話を聞きました。千葉県の東金にいてそこではマルハナバチが種類も限られるのであまり調査をしておらず、それよりもいい里山があり、大学も地元との結びつきを重視しているので、トウキョウサンショウウオの保全がらみの調査をしているということでした。そのことは両生類であって水も陸も良い状態であること、それは里山の農業の営みと深く結びついているので、高齢化して農作業も変わってしまった現状ではサンショウウオにも悪影響が出ているということでした。環境変化に対する脆弱性はイモリ、サンショウウオ、カエルの順だそうです。こうなると生物の調査だけでは足りなくて、農業のあり方や行政との関係も不可欠になりそうです。
子供たちを含めて様々な人の参加があり、久しぶりに国武さんとも話ができて充実した、楽しい一日になりました。帰りの電車では眠りこけました。