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「晴行雨筆」の日々から生まれるもの

研究2 調査法など

2016-01-01 04:19:31 | 研究2 調査法
研究にとって技術や方法はきわめて重要です。直接使う方法について点検したり、改良したりしています。

調査法など

糞分析の妥当性
金華山でシカの食性を定量的に評価したくて、糞分析を採用することにしましたが、そのためにシカに既知量の飼料を与えて糞を分析する実験をしました。
Takatsuki, S. 1978.
Precision of fecal analysis: a feeding experiment with penned sika deer.
Journal of Mammalogical Society of Japan, 7: 167-180.

ヒグマでもポイント枠法
糞分析も胃内容物分析もポイント枠法という方法を採用しますが、これは食物の投影面積を評価するものです。ヒグマの胃内容物でこの方法の確認をしました。
Sato, Y., T. Mano and S. Takatsuki. 2000.
Applicability of the point-frame method for quantitative evaluation of bear diet.
Wildlife Society Bulletin, 28: 311-316.

ポイント法と頻度法
Takatsuki, S., M. Hirasawa and E. Kanda. 2007.
A comparison of the point-frame method with the frequency method in fecal analysis of an omnivorous mammal, the raccoon dog. Mammal Study, 32: 1-5. 
サンプルが多数ある場合はポイント法でも頻度法でも重要なポイントは読み取れる。ポイント法は頻度にも使え、時間がかからない利点があり、頻度法では量的評価に問題がある。大量のサンプルがあれば、両方の情報から安定的に重要である食物、頻度は高いが労的には少ない食物、一時期にしか出ないがその時期には量的にも多く食べられる食物などの傾向が読み取れる。

タヌキとハクビシンの食性分析とポイント枠法
高槻成紀・立脇隆文. 2012.
雑食性哺乳類の食性分析のためのポイント枠法の評価:中型食肉目の事例.
哺乳類科学, 52: 167-177. この論文は動物の食性分析法としてのポイント枠法の有用性をアピールしたもので、実は学生実習のデータです。タヌキとハクビシンの夏と冬の胃内容物をポイント枠法で分析すると、どのくらいの時間がかかるか、カウントするにつれて食物内容が増えていくが、どのくらいで十分といえるのか、食物ごとの出現頻度と占有率はどういう関係にあるか、ポイント枠法は食物の面積を表現する方法だが、その数字と重量はどういう関係にあるかなどを調べました。その結果、時間は重量法の3分の1くらいですむこと、200カウントすればほぼ満足がいくカテゴリー暴露ができること、組成も信頼性があること、「おいしいがなかなかない食物」と「どこにでもあるがおいしくない食物」の関係が頻度と占有率のグラフから明瞭に表現できることなどがわかりました。
 この方法が普及してほしいものです。分析した胃内容物は交通事故で死んだ動物から得たもので、よい論文を書くことで私たちなりに追悼の意味をもたせました。

頻度法だけでは限界あり
高槻成紀. 2011.
ポイント枠法の評価:コメント
哺乳類科学,51: 297-303.
日本の中型食肉目の食性分析は頻度法が使われてきたのですが、頻度法による評価は問題があります。このことを総説しました。

バイオマス指数の検討
Takatsuki, S. and M. Sato. 2013.
Biomass index for the steppe plants of northern Mongolia.
Mammal Study, 38: 131-133. 植物量は刈り取って重さを測定するのが最も正確であるが、非破壊的に継続調査する場合や、重量ほど正確でなくてもよく、大量のプロットを調査する場合などは簡便な方法が必要となる。そこで被度と高さの積によって「バイオマス指数」を求め、重量との関係を調べたところ、ほぼ満足にいく精度で推定できることがわかった。

頭数推定のための糞数調査
高槻成紀・鹿股幸喜・鈴木和男.1981.
ニホンジカとニホンカモシカの排糞量・回数.
日本生態学会誌,31:435-439.
シカの頭数を知ることは重要ですが、「動くもの」の数を知るのはむずかしいことです。そのため、間接法として糞粒あるいは糞塊数を数える方法が工夫されています。その基礎として、仙台の八木山動物園で飼育下のシカで1日あたりの排糞数、回数を調べました。同時にカモシカとの比較をしました。この結果はその後の糞塊調査によく引用されます。

金華山では密度がわかっているので、それと糞粒密度がよい対応をすることを示しました。
高槻成紀.1991.
シカ密度既知の場所における糞粒法の適用例-ハビタット利用推定法の可能性-.
哺乳類科学,30:191-195.

GPSの精度を確認する
Jiang, Z., S. Takatsuki, M. Kitahara, and M. Sugita. 2012.
Designs to reduce the effect of body heat on temperature sensor in board house of GPS radio collar.
Mammal Study, 37: 165-171.
この論文は野生動物保護管理事務所のジャン(姜兆文)さんがGPS発信器の機能について野生動物の動きを調べる前に予備調査をして得た知見を記述したものです。
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