2015.12.28
朝日新聞の夕刊に「となりの野生動物」(ベレ出版)がとりあげられました。
また「シカ問題を考える」(ヤマケイ新書)はアマゾンの「環境問題」ジャンルで入り上げ一位になったそうです。
2015.12.25以下の本が1月6日に出版されます。
『
たぬき学入門-かちかち山から3.11まで』2016, 誠文堂新光社
タヌキのポンタといえば愛らしいキャラクターですが、「かちかち山」に出てくるタヌキはおばあさんを騙した上に鍋にしておじいさんに食べさせるというひどいことをする動物と描かれています。この違いは何を意味しているのでしょうか。いずれにしてもタヌキはわれわれになじみの深い動物で、里山だけでなく大都会にでも生きています。私たちはタヌキの食性や種子散布について調べ、タヌキのおもしろさに気づきました。玉川上水という都市緑地での群落利用や東京近郊での交通事故の実態も調べましたし、東日本大震災で津波で全滅したはずの仙台の海岸に2年後にはもどってきたことの意味も考えました。こうした体験を通じて、タヌキと私たちがこれからどういう関係を築いていけばよいのかを考えてみました。この本を読むと分類学、形態学、生態学、動物と植物の関係、保全生態学などが学べるように工夫しました。
以下もくじです。
序章
1章 タヌキの基礎知識
2章 タヌキのイメージを考える
3章 タヌキの生態学
4章 東日本大震災とタヌキ
5章 タヌキと私たち
タヌキのQ & A
さらに興味のある人へ、以下は本文の最後の部分です。
タヌキに関する情報をまとめてみて、タヌキという動物の存在は、我々日本人にとってなかなか大きいものだということことが改めて確認できた。同時にタヌキが時代、時代で違う動物になってきたこともわかった。もちろん動物学的な意味でのタヌキは不変であり、変わったのは我々のほうだ。憎き害獣とみた時代もあれば、人を化かすあやしい動物をみた時代もあり、平和な現代はかわいい動物とみるようになった。その意味で動物に抱くイメージそのものが、人間社会を投影しているといえる。
タヌキの持ついくつかの性質があるから、現代の都市でも生息が可能になっている。トキやコウノトリの復活に一喜一憂し、ゴリラやホッキョクグマなどの絶滅を心配する私たちは、一方でタヌキを珍しくもないありふれた動物だとみなし、その将来のことを思うこともない。だが、私はそういう姿勢が、あれだけいたメダカを絶滅危惧種に追いやり、気づいたら雑木林がなくしてきたのだと思う。
本書でながめてきたように、タヌキは実におもしろく、またすぐれた動物でもある。私は植物にしても動物にしても、貴重だから守るのではなく、ありふれたもの、身近なものの存在意義を考えて大切にするということのほうがよほど大切だと思う。それは災害があって初めて平凡な日常のありがたみがわかることと似ている。今ありふれていると思われているタヌキも決して安泰ということではない。その未来は我々がいかなる社会を作ろうとしているかにかかっている。私がこの本を書きながら到達した思いは、私たちはタヌキの生活を思いやる程度にはゆとりを持ちたいということであった。
2015.12.15
川崎市のかわさき市民アカデミーで「唱歌フルサトの生態学」という講義をしてきました。受講者は私より年配の人が過半数なので、がんこおやじの話が通じやすくてよかったです。一番反応があったのは、「1日どのくらい水をつかていると思いますか?」という質問をしたときでした。「5リットルくらい?」というのからはじまって、「飲むだけじゃないですよ」というと、「50リットル」という声。「実は世界平均が50リットル」といったら、「じゃあ100リットル」という声。「なんと320リットルなんですよ」というと「エーッ!!」というどよめき。「私はがんこおやじだから、ペットボトルの水は買いません。ああいう水商売にだまされてはいけません。」私は実際専門家に質問して確認しましたが、今の東京の水道水はペットボトルとまったく遜色のない水質だそうです。浄水技術が飛躍的によくなったのだそうです。そう説明してから、「日本は水が豊かな国なんですから、フランスの水を買うなどという馬鹿なことはやめましょう」というと、頷く人が多かったです。ギターを持参して、最後にみなさんと合唱しました。
2015.12.7
「シカ問題を考える- バランスを崩した自然の行方」(ヤマケイ新書)が出版されます。
。
http://www.yamakei.co.jp/products/2814510090.html
最近、シカが増えており、野生動物管理あるいは自然の保全シーンでも重大な問題になっています。本書ではシカが増えると何が起きるのか、その何が問題なのか、そもそもシカはなぜ増えたのかといった問題を広い読者層に知ってもらうために書きました。そのために動物学的、植物学的、生態学的に重要な項目をできるだけ具体的に解説しました。シカの増加の背景には温暖化、森林伐採、オオカミの絶滅、ハンターの減少などさまざまな要因が考えられていますが、そのどれもシカの増加とはタイムラグがあり、うまく説明できません。こういう解析を通して、私は農山村の人口減少による土地管理など農業形態の変容がキーポイントになることに気づきました。そしてシカ問題の解決はこのことの解決なしにはありえないことを指摘しました。
2015.11.29
静岡にある日本平動物園に招かれて動物の話をしました。この動物園で「動物園博士」になった子供を含む人にお話をしてほしいということででかけました。自分の子供の頃のことをふくめ、動物に関心をもちつづけることの大切さを話しました。
2015.11.21
「となりの野生動物」が出版されました。9種の動物を紹介します。動物の解説をしながら、その動物に対して我々がもっているイメージがどこから来ているのかを考えるという試みをしました。
その上で、動物の言い分を語らせました。たとえば、アライグマ
「おれっちはペットじゃないからさ、イヌやネコみたいに人間にべったりはしないわけよ。そうだろ?野生動物ってのはそういうもんさ。いつまでも尻尾をふれっていわれても、そいつはできないね。そしたらさ、「もう、いらない」だと。ひどいもんだぜ、手放すってわけ。・・・。おれっちは、目の前にある環境でせいいっぱい生きるしかないんだ。遠慮なんかしていらんない。遠慮しろって言うくらいなら、はじめから日本なんかに連れてくるなってんだ。そうだろ?連れて来といて、増えちゃいかんとは道理が通らないだろうよ。こういうのを、なんだろ、ジゴウジトクとかいうんじゃないの?日本語、よくわかんないけどさ。」
あるいはサルは
「・・・人がおいしいものは俺たちにだっておいしいさ。だけど、人は、俺たちだけじゃなく、動物と見ればなんでも捕まえて、殺したりする。野獣とか猛獣とかいうけど、野蛮なのはどっちだい。・・・昔は絶対農家の周りには行かなかったけど、最近じゃあ、それもできるようになった。なんせ、人がぐっと少なくなったもの。それにたまに見かけても、じいさんかばあさんだ。ダッシュすればどうってことない、カボチャのひとつくらいはくすねて来らぁ。あんまり悪気はないんだけどさ、ばあさんだったら、ちょっと唸ってやりゃあ、怖がってビビるから、そのスキに逃げればなんってことないのよ。・・・でも言っとくけど、俺たちの性格が変わったわけでもなんでもないぜ。おいしいものがあれば探して、できるだけたくさん食べる。できるだけそうするってのは動物ならみんなやってることさ。ようするに人間のほうのワキが甘くなったってことよ。・・・」
この2つはちょっとガラが悪い。東北のクマさんは
「おらたちは体がデケえから、腹が減る。とくに秋は冬眠さそなえて腹がへってしょうがねえ。んだからドングリのなる林さ行って食えるだけ食う・・・うまい。・・・悪い奴がいて、おらたちを蜂蜜でおびき寄せて檻でつかまえることを考えた。おらたちは蜂蜜には目がねえから、だめだ。蜂蜜の匂いがしたらフラフラと檻さ入ってしまう・・・困る。昔は里山さ人がいっぱいいて、怖くて行けなかったんだと。んだども、今はあまり人がいねえし、藪がたくさんあるし、カキの実やカボチャなどが残されてっから、ついつい里山さ行くことになっちまうだ。とくに山さドングリのなんねえ年は、しかたなしに里さ降りる。そうすっと、無理もねえが、人は大騒ぎをするのさ。山狩りをしておらたちを撃つ・・・困る。」
おもしろいもので、そのつもりになって書くと、ことばが出てくるんですね。ま、そういう動物の側からみたら、人間ってなんとも理不尽なんじゃない?という本です。文章も楽しみましたが、イラストも楽しみました。
こういうマジな図も
こういうユルいのもあります。
ご一読いただければ幸いです。ベレ出版です。
2015.9.29
「動物のいのちを考える」が出版されました。いまどき珍しい地味ともいえる表紙で、気に入っています。ぜひ手にしてみてください。下記の案内をみて注文いただくと、多少便宜をはかってくれるようです。
2015.8.1
文一出版から「シカの脅威と森の未来」という本が出ました。編集を手伝いました。シカの影響が日本列島を覆っていますが、私が研究を始めた40年前は予想もできないことでした。今では各地で深刻化し、植物研究者が調査地の継続に危機感を持つまでになりました。各地でさまざまな研究おおこなわれるようになり、柵を作って内外の植物を比較することもおこなわれています。そうした状況で、関係者がいま日本の森がシカによってどうなっているかをまとめて知ってもらいたいという思いでできたのがこの本です。私は編集をするとともに、「シカ学事始め」「シカという動物」「植物への影響」という3節と、前迫ゆりさんとの共著で「「シカ柵の有効性と限界」を書きました。前迫さんが「あとがき」に私のことをとりあげて「きびしい添削もされたが」と書いておられます。私にそのつもりはないのですが、学生でも大先生でも、腑に落ちないことは直言するようにしています。私は大学院生の頃に、のちにいっしょに英語のニホンジカの本を編集することになったD. R. McCulloughさんに論文原稿を読んでもらったことがあります。それは「真っ赤」になって返ってきました。日本では「けっこうな原稿でございます」と当たり障りのないことをいうほうが「礼儀正しい」とされますが、科学する精神からすればまちがっているといわなければなりません。そのとき以来、私はできるだけよいものにするために必要であれば、そうした「深謀遠慮」は捨てて、直言するようにしています。普段の私を知る人は当惑するようですが、気心が知れ、真意が理解されれば誤解はとけるものです。前迫さんは「あとがき」で、そのことばに続けて書いています。「それはこのテーマを真剣に考えておられるゆえんでもあると理解した」。ちょっと香辛料がききすぎたかもしれません。
内容でいえば、北海道から屋久島まで、各地での実情が記述され、力作が多く、読み応えがあります。植物研究者が書いているというのもユニークです。興味のある方はご一読ください。
2015.7.13
「たくさんのふしぎ」というシリーズがあり、わがやの娘たちが小学生のとき読んでいたので、ときどき目にしていました。良心的な出版物だと感心していました。2年くらい前に、シカと植物のことで書いてほしいという話をもらい、シバとシカについて書きました。福音館はずいぶん時間をかけて本を作るようで、絵描きさんと編集の人が金華山まででかけたり、何度もなんども修正をしたりして、ようやくこの9月に出ることになりました。表紙は印象的なシカの顔、中ではわたしが「登場」します。何がわかったかというより、そうしてわかったかの過程を書いたような感じです。子供がお世話になったことへのお礼のような気持ちもあるし、昔から考えていた子供に生き物のことを伝える本を書きたいということが実現したよろこびもあります。2015.7.5
「シカの脅威と森の未来」という本の準備をしています。副題は「シカ柵による植生保全の有効性と限界」となっており、北海道から屋久島まで、全国各地で植生調査をしている研究者に執筆してもらい、前迫ゆりさんと私が編集しました。たぶん今月中に出ると思います。
2015.6.6 オオカミのシンポジウムがあり、聴きに行きました。アメリカ(イエローストーン)とドイツでの再導入成功例が紹介されました。主催者である日本オオカミ協会の発表では、日本でのオオカミの再導入についてのアンケート調査は10年くらいまえは「再導入したほうがよい」という意見は1割くらいだったのに、今では6割を超えるほどになったそうです。その「意識」の内容はどういうものなのか、たとえばシカが増えすぎて起きている問題解決のために必要だというのか、もともといたのだからもどしてやるのが責務だというのか、オオカミという魅力ある動物がいたほうがよいというのか、そのあたりは知りたいところです。会場からの自由な発言を受けると収拾がつかなくなるとの判断からか、それが許されませんでした。また会長の丸山先生は「日本の研究者は呼びたくない」とのことでした。その意図もわかりかねましたが、それでは明るい展望はもてないのではないかと思いました。
2015.6.4 神奈川県環境審議委員会
2115.6.1-2 アファンの森で調査と会議。この春卒業して白川郷で働いている望月さんがわざわざ来てくれて、楽しくアファンの餅を歩きました。
5月30日 今日は、東京都公園協会の「緑と水の市民カレッジ」で講演をしてきました。日比谷公園にある「カレッジ」で「保全生態学で読み解く唱歌<ふるさと>ーウサギはどこへいったのかー」という講座名でした。25人くらいの受講者がきておられました。私としては「ふるさと」の内容を実感を持って感じられた70歳以上の人を想定していたのですが、50歳を境にそれ以上と以下が半々くらいでした。「ふるさと」の何番が好きですかという質問には1番が半分くらい、次は3番で、2番は2、3人でした。内容はヤマケイ新書の内容をわかりやすくスライドで説明しましたが、時間が足りない感じでした。ウサギを見たことがあるという人が11人もおられて驚きました。実はもっとご高齢の方が集まって、私が話すというより、私のほうから昔の東京や、ひとりひとりの「ふるさと」のことを聞きたいと思っていたのですが、それは叶わず、もしそういう機会があれば、ぜひそうしたいと思いました。
少しためらいがあったのですが、ギターを持参して、最後に皆さんといっしょに合唱しました。「恥ずかしがって歌ってくれないかも」というオーガナイザーの心配をよそに、皆さん楽しそうに歌ってくださいました。
2015.5.30 日比谷公園で「緑と水の市民カレッジ」があり、保全生態学で読み解く唱歌「ふるさと」ーウサギはどこへいったのかー」というテーマで講演をしました。
2015.5.24 明治大学でモンゴルの馬乳酒についての研究打ち合わせ会議がありました。
2015.5.21 日文教という出版社で私と樹木医の石井誠司さんの対談をしました。
2015.5.15-17 山梨県早川でシカの影響調査をし、研究室の親睦旅行に合流しました。
2015.4.30-5-4 金華山で調査をしました。
2015.4.26 「唱歌ふるさとの生態学」の書評(池内紀氏)が毎日新聞の「今週の本棚」欄にのりました。
2014.4.26 高尾の白山神社に植物の調査に行きました。
2015.4.24 アファンの森に調査に行きました。アズマイチゲやキクザキイチリンソウが溢れるように咲いていました。
2015.4.19 アースデーのニコルさんのサイトで対談しました。
2015.4.15 帝京科学大学で講義をしました。
2015.3.24 宮城県の牡鹿半島のシカの会議に出席しました。
2015.3.23 福島県でアドバイザー会議があり、イノシシの胃内容物分析の結果を報告しました。
2015.3.21 大正大学でアファン友の会があり、講演しました。
2015.3.17 アファンの森財団で今年度の調査報告会があり、岩田翠さんと望月亜佑子さんが発表しました。
2015.3.7 最終講義をおこないました。
2015.2.14 前田禎三先生を偲ぶ会に参列しました。前田先生とは鳥取県米子が同郷で、親しくしていただきました。
2015.2.1 乙女高原フォーラムで「シカが植物群落におよぼす影響:草原への影響は複雑」を講演しました。
2015.1.24 人の動物の関係学会関西支部主催の例会「野生動物から家畜への道」で発表しました。