長野県北部の信濃町にあるアファンの森ではときどき鳥がガラス窓にぶつかって死ぬことがあるそうです。その中にアオゲラがあったので標本を作りました。

アオゲラの死体
羽毛を除き、内臓を摘出し、皮膚、筋肉を外した後、ポリデントにつけ、数日水を取り換えると骨格標本のもとができます。それを針金の軸で支えて組み立てます。

仮に組み立てたアオゲラの骨格
それから尾羽をつけて、円柱に取り付けました。アオゲラは樹上をす早く歩いて移動しますが、その時に体が安定するように両足と尾翼の3点で安定支持します。そのためアオゲラの尾羽のうち中央の2本が太くがっしりしています。

完成したアオゲラの標本
この標本で注目したのはアオゲラの舌です。キツツキ類は木の幹を突いて穴を開け、中の昆虫を食べることが知られています。そのために長い舌を持っていますが、その舌は口から喉のほうを通りますが、そこで二股に分かれます。そして後頭部を越して頭頂部を経て嘴の付け根に達します。驚くべき長さです。

アオゲラの舌
このことは知っていたのですが、実際に見ると驚かずにはいられません。頭骨の皮膚を剥がす確かに頭に枝分かれした舌が見えました。

頭頂部から見た舌
それを慎重に取り出しました。

舌と頭骨
ともちろん舌そのものは筋肉です。その中に舌骨が入っていますが、骨といっても柔らかい膜状のものです。舌の筋肉を収縮させると、この舌骨が一瞬で前に押し出されて舌がビュンと飛び出す仕掛けです。舌には粘液がついていて昆虫類をくっつけるようになっています。
舌の筋肉を丁寧に除去して舌骨を取り出しました。これを再び頭骨に戻してボンドで接着しました。

舌骨をつけた頭骨
イタチ 2007.12.12, 長野県黒姫アファンの森(標本作成2024.11.17)



交通事故で割れていたのを修復

陰茎骨 30 mmほどあり、体長に比較すれば長いものでした。
アオゲラ
2022.7/5 長野県黒姫アファンの森(ガラス窓に衝突死)

死体

脱毛
キツツキ類の下が長いことは知識としては知っていましたが、実際に見て驚きました。この写真で下が嘴から突き出ていますが、その付け根は喉の奥を通って、そこで二股になって後頭部を上に伸び、そのまま頭頂部を進んで上嘴の付け根に達します。

頭骨側面
下の写真は頭部を後背部から見たところで、2本に分かれた下が見えます。

その舌を丁寧に取り出して頭骨と並べたのが次の写真です。

標本は現在(2024.11.17)クリーニング中ですが、腹を開いたとき、消化管を見てアリがないかと確認しようとしたら、アリはなくクワの果実が出てきました。アオゲラは昆虫を主体とし、秋冬には果実も食べる雑食性と書いてありましたが、これは7月の死体なので、果実があれば夏でも食べることがわかりました。何事も百聞は一見に如かずだと思いました。

検出された骨がヒキガエルのものである可能性があると考え、小林に連絡を取ったところ、白幡沼にはヒキガエルはいて、時々グランドでローラーに轢かれて死んでいたりするということだった(図1)。

図1. ヒキガエルの死体(2021.2/24 小林撮影)
そして新しいしたいを確保したということだったので、送ってもらった。そのヒキガエルは鼻先から大腿の付け根までが102 mm、体重71 gの大きさだった。


図2. ヒキガエルの背面と腹面
この死体から骨格標本を作った(図5)。

図3. ヒキガエルの骨格標本
その前肢の橈骨(とうこつ)を見ると、間違いなく検出されたもの(図4b)と同じものだった(図4b)。ただしこの中空構造は前肢だけでなく後肢の脛骨にもあった。

図 4a. 3月のサンプルから検出された骨

図4b. ヒキガエル標本の前肢の骨格
これは古いヨーロッパのイラストにもあった(図5)。

図5. カエルの骨格図.
アカネズミ メス 体重 55g
2019.12.13
東京都八王子市
最終:豊口信行
標本作成:高槻成紀

アカネズミ 撮影 豊口信行氏

アカネズミ 骨格標本 高槻成紀作成
2019.12.13
東京都八王子市
最終:豊口信行
標本作成:高槻成紀

アカネズミ 撮影 豊口信行氏

アカネズミ 骨格標本 高槻成紀作成
作り始めて1週間で完成しました。ネコにくわえられた時に背骨と肋骨が破損したようで、その点はやむを得ませんが、まずまずの仕上がりです。

アズマモグラ
これを見ると前足がいかによく発達しているかがわかります。それに比べると後足は貧弱です。それに頭が意外と細長いこともわかります。

右前足(手のひら側)

頭部

左前肢

上腕骨
写真中央に見える上がU字型にくびれた骨が上腕骨で、極めて特殊化しています。ここに力強い筋肉がつきます。

尺骨
肘から先の骨が尺骨で、これも普通の哺乳類にはない複雑さです。

前から
改めて前から眺めると前肢が大きく、モグラはまさに「掘る動物」だということが納得されます。

アズマモグラ
これを見ると前足がいかによく発達しているかがわかります。それに比べると後足は貧弱です。それに頭が意外と細長いこともわかります。

右前足(手のひら側)

頭部

左前肢

上腕骨
写真中央に見える上がU字型にくびれた骨が上腕骨で、極めて特殊化しています。ここに力強い筋肉がつきます。

尺骨
肘から先の骨が尺骨で、これも普通の哺乳類にはない複雑さです。

前から
改めて前から眺めると前肢が大きく、モグラはまさに「掘る動物」だということが納得されます。
ポリデントにつけて、筋肉を少しずつピンセットでのぞいていきます。

1日目

3日目

4日目

8日目 除肉はできたので、発泡スチロール板に載せて、形を整える。頭や腰はリフトするため、支えを作る。固定には昆虫針と爪楊枝を使う。

1日目

3日目

4日目

8日目 除肉はできたので、発泡スチロール板に載せて、形を整える。頭や腰はリフトするため、支えを作る。固定には昆虫針と爪楊枝を使う。

全身

頭部

口

前足
この大きい前足でトンネルを掘るわけです

後足
モグラは土の中で暮らしているので目が退化しているとは聞いていましたが、目のあるあたりを探してもそれらしいものが見つかりません。丁寧に探してようやくホクロのような黒い点が見つかりました。

あとで皮膚を剥がしたら文字通り黒い点が見つかりましたが、直径1mmもない小さなものでした。


これはタヌキの下顎骨です。タヌキはイヌ科に属し、れっきとした食肉目の1種です。実際には果実をよく食べるのですが、もちろん肉、つまり哺乳類や鳥の筋肉や内臓を喜んで食べます。そのため鋭く尖った歯を持っています。
ではこれは?タヌキとは比較にならないほどもっと高く尖った歯で、山と谷の落差も大きい、非常に鋭い歯を持っています。

実はこれはモグラ(アズマモグラ)の下顎骨です。写真ではわかりませんが、とても小さく長さは1cmほどしかありません。これでミミズを捉えて切り取るのでしょう。
この標本は
山中湖の近くに住んでおられる半場さんがカモシカの死体を見つけたと連絡をくださり、頭骨を送ってもらい、標本にしました。

ニホンカモシカ、オス
2019年6月1日
山梨県山中湖北部
半場良一

ニホンカモシカ、オス
2019年6月1日
山梨県山中湖北部
半場良一