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「晴行雨筆」の日々から生まれるもの

カモシカ

2019-06-20 06:15:27 | 標本
山中湖の近くに住んでおられる半場さんがカモシカの死体を見つけたと連絡をくださり、頭骨を送ってもらい、標本にしました。



ニホンカモシカ、オス
2019年6月1日
山梨県山中湖北部
半場良一

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動物の食物組成を読み取るための占有率−順位曲線の提案  −集団の平均化による情報の消失を避ける工夫−

2019-06-19 16:13:27 | 最近の論文など
2018.6.30
動物の食物組成を読み取るための占有率−順位曲線の提案 
−集団の平均化による情報の消失を避ける工夫−

高槻成紀,高橋和弘,髙田隼人,遠藤嘉甫,安本 唯,野々村遥,菅谷圭太,宮岡利佐子,箕輪篤志
哺乳類科学, 58:49-62

 動物の食物組成は平均値によって表現されることが多いが,同じ平均値でも内容に違いがあることがある.ニホンジカ(以下シカ),ニホンカモシカ(以下カモシカ),イノシシ,タヌキ,アカギツネ (以下キツネ),ニホンテン(以下テン)の糞組成の食物カテゴリーごとの占有率を高いものから低いものへと曲線で表現する「占有率−順位曲線」で比較したところ,さまざまなパターンが認められた.シカとカモシカでは占有率が小さく,頻度が高い例(「高頻度・低値」)が多く,イノシシでも同様であった.これに対して食肉目では占有率も出現頻度も多様であり,1)供給量が多く,栄養価が低い(あるいは採食効率が悪い)と想定される食物では「高頻度・低値」が多く,2)供給量が限定的で,高栄養と想定される食物では「低頻度・高値」(占有率−順位曲線はL字型)が多い傾向があった.テンでは果実が「高頻度・高値」であった.このパターンには供給量,動物種の食物要求や消化生理などが関係していると考えられた.この表現法の特徴などを整理し,その使用を提唱した.


非常に重要な食物で集団のほとんどが食べており、占有率は大から小まで続く


一部の個体にはよく食べられるが、半分くらいの個体は全く食べていない


ありつける個体がごく一部


 これは「大論文」で、かなり長くなりました。ある動物の食べ物におけるある食物の平均占有率が50%だったとします。その数字を出すのに10のサンプルがあったとして、平均値が50%になるのは色々なパターがあるはずです。全部が50%のこともあれば、半分が100%で残りの半分が0%という場合だって平均値は50%です。これは意味が違うのに「平均」されると同じ50%になってしまいます。私はこのことを問題と考えました。それで、サンプル全てを占有率の大きいものから小さいものへと並べ、そのカーブを「占有率−順位曲線」と名づけました。日本人10人の食事を考えた時、米は大体誰でもある程度食べていますが、肉だと食べる人と食べない人がいるはずです。そうするとこの曲線はコメではなだらかなカーブになり、肉では急カーブになり、ゼロ値のものもるはずです。これを動物について試みました。そうするとシカなどの草食獣では横長のグラフになるのに対して、肉食獣だと様々で、L時型になるものもあれば、低空飛行するものもありました。そのことは食物の供給量と動物の「食べたさ」にもよるし、シカのように反芻するかしないかにもよります。
 このことを麻布大学で指導した学生の皆さんのデータを計算し直してこの論文を書きました。高橋君はシカ、髙田君はカモシカ、遠藤君はこれらに加えてイノシシ、安本さんと宮岡さん、箕輪くん(帝京科学大)はテン、菅谷君はタヌキ、野々村さんはタヌキとキツネを調べてくれました。だから、この論文は私の麻布大学での指導の一つの集大成と言えると思います。その意味でも「大論文」と言ってよいと思います。
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