広く浅く

秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

太い桜・古い桜

2009-04-28 18:07:33 | 津軽のいろいろ
弘前公園の桜の記事の最後として、その管理技術の高さを象徴する2本のソメイヨシノを紹介します。

公園東側の北寄り、中央高校口を入るとすぐ、市公園緑地課や公園緑地協会が入る「緑の相談所」という茶色の建物がある。建物自体目立たないが、その裏手にひっそりと大きなソメイヨシノがある。


実は通りにこういう看板が立っているのだけど、日本最大幹周(日本一太い)のソメイヨシノ


説明板を抜粋すれば「地上1.3メートルの幹周:537センチ、樹高:約10メートル。環境省の調査で日本最大幹周のソメイヨシノとされた。植栽時期は明治15年の可能性もあるが、少なくとも明治34年には植栽されていたものと思われる。」
確かに太い

もう1本は内濠越しに天守閣を見上げる東内門の前。
右が東内門
目立つ案内看板はなく、ごく普通のソメイヨシノの1本だと気に留めずに通り過ごしそうだが、この木は現在の「さくらの町弘前」の原点とも言える、「日本一古いソメイヨシノ」。
花はいっぱい付いてる
説明板には「幹周:410センチ、樹高:約9メートル、植栽:明治15(1882)年、旧藩士の菊池楯衛から寄贈されたもので現存するソメイヨシノでは日本最古。ソメイヨシノは生長が早いわりに寿命が60年から80年とされていたが、弘前公園のソメイヨシノは樹齢100年を越すものが300本以上あって立派に花を咲かせていることから、その管理技術は多くの専門家から日本一と絶賛されている。」と自画自賛気味。
弘前公園の桜の歴史は弘前市のサイト(http://www.city.hirosaki.aomori.jp/kanko/matsuri/haru1.html)に詳しいが、江戸時代に25本植えられたのが最初。しかし本格的には明治15年にこの木を含むソメイヨシノ1000本を旧津軽藩士が寄付したのがきっかけで、その後賛同した市民が続いて今日に至るようだ。
こちらも立派な幹
その旧津軽藩士菊池楯衛(きくちたてえ)という人は、植物に興味を持ち、明治になってからは青森をリンゴ産地にするのに尽力した人物。一方で荒れ果てた旧弘前城を見兼ねて桜を寄贈したようだ。つまり彼なくして、「さくらとりんごの町弘前」はあり得なかったわけだ。

ちなみに楯衛の息子の菊池秋雄氏は園芸学者でナシの品種改良を手がけ「梨の神様」と呼ばれ、孫の菊池卓郎氏も果樹園芸学者で再び弘前に戻り弘前大学教授を定年退官後、現在は同名誉教授と、親子3代で果樹園芸学に関わっている。
僕が在学中、孫の菊池卓郎先生は農学部(現・農学生命科学部)長をされており、講義を受ける機会があった。果樹分野に限らず農学全般に広い知識をお持ちで、分かりやすくお話をされていた。「私の祖父が植えた桜が公園に残っているとかで(子孫の私が)市から表彰を受けましてね…」と1度お話しされたことはあったが、それ以外にはこんなに功績のある人物であること(自分がその孫であることも)は語らず、穏やかで物腰の柔らかい先生だったのが印象に残っている。
卓郎先生は、今まで経験に頼っていたリンゴの「剪定」を科学的に研究されていたが、弘前公園の桜の管理にはそのリンゴの剪定技術が活かされている。因縁めいたものを感じてしまう。
さらにひ孫(弘前出身)は菊池誠氏という物理学者、テルミン奏者、「ニセ科学フォーラム」実行委員だそうだ。
最古のソメイヨシノと天守閣
それにしても、2本とも、支え棒などがあるとはいえ、まったく衰えを感じさせない見事な咲きっぷり。大事に育てれば植物はちゃんと応えてくれる。

とはいっても、弘前以外の場所でこのように管理をしろと言っても難しいだろう。やはりソメイヨシノの寿命は100年以下なのであって、それを延ばすにはそれなりの技術も人手もおカネも必要なのだから。
でも、寿命前の木ならば、できるだけ長く若さを保って、きれいな花を見てもらうために、弘前から学ぶべき点は多いのではないかと思う。近い将来、植え替え後がされるであろう秋田の千秋公園も。

後日、弘前公園以外の弘前の様子をアップします。


【2022年4月24日追記・日本最古のソメイヨシノについて】
2022年4月22日、東奥日報サイトに「弘前の最長寿ソメイヨシノ「日本最古」の座譲る 」がアップ。「近年、福島県郡山市のソメイヨシノの樹齢が約150年と判明し、最古の座を譲ることになった。」という。
弘前市の桜守は「樹齢を競うつもりはないとした上で「花の豊かさには自信がある」と胸を張る。」。

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