広く浅く

秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

泉外旭川 70km/h 834m

2022-12-21 23:28:00 | 秋田のいろいろ
秋田市のJR奥羽本線・泉外旭川駅の上りホームの先に、いつの間にか新しい表示(列車の運転士向け)が設置されていた。2021年春の開業時にはなかったかと思う。
上りホームから上り方向。今年10月撮影
ホーム端のすぐ先、左の電化柱(架線柱)に黄色い縦長のもの、盛りのススキで隠れるが、その手前の線路際の地面に、白いもの。

白いほうは大きく「70」と書かれた、「速度制限標識」。道路標識のそれと同じように、70km/h以下で走行しなければいけないことを示す。
下の小さい「834」は、その制限が適用される距離。列車の最後尾がここから834メートル先を通過するまで、70km/h以下で走らなければならない。
泉外旭川駅開業以前、旅客列車は、この付近ではほぼフルスピードで通過していた(貨物列車は、秋田貨物駅を出発して間もないため、加速途中)。標識設置後は、泉外旭川駅を通過する列車も含めて、以前より速度が遅くなったような気がする。
ここから834メートルの間が速度制限される理由とは?
速度制限される理由でよくあるのは、きついカーブ、ポイント、工事現場がある箇所だが、834メートルの間にはない。

その間には、架線に電力を供給する区分の境目(デッドセクション、交交セクション。その施設としてJR秋田泉き電区分所=関連記事。)がある。セクションでは、加速しながら通過してはいけない(壊れる)し、緊急時以外は停車してはならない(立ち往生する)ことになっているはず。しかし、そこを通過しても速度制限は継続する。
地図上の計測や、並行する自転車歩行者道を歩いて実測したところ、この標識から834メートル先付近にあったのは…
泉踏切だった!
速度制限については、また後ほど。


黄色いほうは、標識というより、注意書き的なものだろう。
イラストと「?」が入っているのは珍しいかもしれないが、全国的には「停車?」とかもある。
上の信号機の絵は、道路用の縦型交通信号機と比べると、上下が逆さだが、鉄道用信号機の配置はさまざまで、これも間違いではない(だだし、この先に実際にある信号機は4灯式=黄が2灯?)。
「現示」とは、信号機が今、示している指示、要は「今点灯している信号の色」のこと、かな(警察の道路用だと、また意味が少し違うのかも)。
つまり、「信号機を確認しましょう」と言っている。

泉外旭川駅は、本線上にホームを設けただけ(分岐や待避線がない)で、列車交換ができない「停留所」。したがって、駅を発車する時に従う「出発信号機」は存在しない。※出発信号機があるのは「停車場」。
下り線では、秋田貨物駅の中に、泉外旭川駅が位置する形。
泉外旭川を発車して下り方向へ進む列車は、秋田貨物駅の出発信号を見ることになるが、カーブがあって、ホームからは見えないため、その中継信号機が設置されている(開業前の記事)。

上り線は、秋田貨物駅の外にある。
ホームの先方にある信号機は、第一閉塞信号。
※「閉塞」とは、駅でない部分の線路をいくつかに区切った1つ1つの区間のこと。1つの閉塞には、1本の列車しか入ることができない。
しかし、泉外旭川駅上りホームからは、その信号機が見えず、中継信号機も設置されていない。

第一閉塞信号は、泉踏切の300メートルほど先、秋田工業高校のグラウンド脇のカーブの始まりに設置されている。泉踏切手前でも少しカーブがあるため、泉外旭川駅から見えない。
泉外旭川上りホーム先端から。すぐ先から右カーブしている

(再掲)上り列車後部から。右が第一閉塞信号

線路脇の道から、第一閉塞信号
調べてみると、鉄道の信号機は、600メートル手前から見えれば良いらしく、泉外旭川駅上りホームからは見える必要がないようだ。
でも、鉄道は、発車する時に、時刻、戸閉めとともに信号を確認するものだと思っていた。こういう条件では、信号確認は不要というか青(緑)信号とみなしていいってことだろうか?

とすれば、「信号現示は?」の看板は、「もうすぐ、この先で信号機が見えるから、忘れずに確認しなさい」ということ?

鉄道の信号は、道路の信号と、意味が違う点もある。
黄色点灯では、止まる必要はないが、減速しなければならない(点灯パターンと制限速度は複数ある)。赤信号の1つ手前の信号は、必ず減速を示している。など。
ここの第一閉塞の1つ先の信号は、秋田駅の場内信号。場内信号は、反対列車の遅延などにより赤になっていることもあるため、第一閉塞信号で減速を求められる場合が少なくないはず。
というわけで、漫然と運転していれば、第一閉塞信号を信号無視してしまう可能性が比較的高く、その注意喚起か。


さらに、834メートルの70キロ制限も、第一閉塞信号が関係するかも。
この区間で許容されるフルスピードの95km/hで走行中、第一閉塞信号が赤や黄だった場合、信号機手前で止まるまたは減速するのが難しい(あるいは条件によって、難しくなる場合がある)から、制限をかけたのでは。
834メートル地点ならば、第一閉塞信号は確実に見え、かつまだ300メートルあって、70km/hなら停止可能。※ネット上の情報では、一般に80km/hでブレーキをかけると270メートルほどで停止できるとか。
ただ、それだと、第一閉塞信号の600メートル手前=泉外旭川駅から500メートル先辺り=デッドセクション辺りまでの制限でいいような気もする。となると、デッドセクションを過ぎるまで、加速させない狙いもあるのか?


いずれにしても、線形も信号の位置も、泉外旭川駅ができる以前と変わっていないはず。
駅ができたことが原因で、速度制限されて表示が設置されたのではなく、たまたま時期が重なったのだろうか。ヒヤリハット事例などから判断して、念のための対策みたいなもので。
だけど、設置位置は、駅の停止位置を考慮しているだろうし、通過と違って、泉外旭川駅に停車して発車する場合だと、運転士の心理的に違うものがあって、それで設置したのかもしれない。

【31日追記・乗車して前面展望を確認】
上記の通り、泉外旭川駅のすぐ先で右カーブしているが、さらにその先で左カーブがあって、泉踏切。
第一閉塞信号は、左カーブ後、泉踏切の直前にならないと見えなかった。その付近に、小さな黄色い三角の標識があり、信号喚呼地点を示す「信号喚呼位置標」。
感覚としては、カーブが終わると、直ちに信号が見え、直ちに泉踏切に達してしまった。やはり、直前ギリギリにならないと信号が見えず、減速が間に合わない可能性があり、速度制限されたのではないかと思えた。
そして、黄色い看板のほうは、「この先に信号あり」を伝える予告ということになろう。


【2023年5月5日追記・もう1つの理由を推測】まったくの憶測ですが。
泉踏切の閉まる時間(車を待たせる時間)の調整という可能性もあるかも。
「広報あきた」2021年2月19日号によれば、泉外旭川駅開業に伴い「上り列車通過時の遮断機の降りている時間が、現状の1本あたり約1分から、開業後は、2分15秒程度になります」。
2分待ちはあんまりだと、車を待たせる時間を短くするため、列車の感知位置を踏切側へ移動させ、その分の“時間稼ぎ“として、速度を落としたということもなくはないかもしれない。※そもそも2022年時点での踏切の待ち時間は未確認であり、根拠はありません。
コメント (4)
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