たびびと

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アルゼンチンの罠

2012年04月28日 | アルゼンチンの風
コスタリカ勤務時、一週間の休暇をとり、アルゼンチンとウルグアイの観光旅行に行く。

観光3日目、ホテル近く、アルゼンチン旧市街地区の繁華街を歩いていた。
おみやげの店、飲食店、高級ブティックなど、いろいろなお店が立ち並ぶ。巨大な歩行者天国ゾーンもある。

数年前、通貨危機があり経済が破綻したアルゼンチン。
今はどうだろう。もう活気を取りもどし、市民は平静に生活しているように見える。新規通貨が発行され、旧通貨は価値を失った。
他人ごとではない。日本も膨大な借金がある。デフォルト、通貨切り下げ以外に切り抜ける道はあるのだろうか。今のままの財政支出状況を継続することは物理的に不可能だ。

時間は11時半。どこで昼食を食べるか、ブラブラしながら考えていた。
ホテルでの無料の食事があきていた。

「今なら昼間で特別料金だよ」
お兄さんに呼び止められた。
体格のいい、平たく言えば太っている、パンチパーマのお兄さん。天然パーマだ。中南米ではコロッチョという愛称で呼ぶ。

「どう、今。昼間だからすいてるよ」

左手を見上げるとナイトクラブのようだった。派手な看板は出ていない。
昼間なのでデイクラブと呼ぶほうが正しいのかもしれない。

昼間からやっているとは驚いた。
その日一日は首都ブエノスアイレスですごす予定。急ぎの用はなかった。

中米ホンジュラス、コスタリカとナイトクラブは何か違いがあるのだろうか。

「昼間なのにやってるの?」
彼は説明を始めた。

悪い人ではなさそうだ。

店内を見せてもらうことにした。
「中で休んでいく」とは言っていない。ハッキリとそのことを伝えた。

「いいよ。さあさあ」

入口を通り、階段で2階にあがる。左へ曲がり店内に入る。
もう一人の男性定員にぼくをバトンタッチして、彼は入口にもどっていく。

大きな部屋。中は豪華。赤いじゅうたんが敷かれている。でも、メキシコの新市街地区の設備ほどではない。
奥へ歩いていく。
日中だから、客はいない。当然だ。サラリーマンは仕事をしている時間である。

女の子が数人、店内でおしゃべりをしている。化粧をしている女性も一人。昼前なので、空気はよどんでいない。タバコの煙もない。

店を一周し下見は終了。
特に目新しいこともないようなので、帰ろうと向きをかえた。

「まあ、座って座って」
途中から案内に加わっていた女性が椅子をすすめた。

考えることなく、安易にすすめられたソファーに腰を下ろした。
豪華な黒いレザー調のソファー。すわり心地はよかった。

いきなり、カーテン後方から女性が5人やってきた。
ぼくを待っていた感じではなかったが、他に客がいない。暇なのだ。

女性陣がテーブルを囲む。

「飲み物注文するわね」
「…」

女性が右手をあげ、親指と中指で大きな音を鳴らす。
すぐにボーイが現れ、ぼくと女性全員の飲み物がテーブルに置かれた。

ぼくは了承していない。というよりも、一言も口をきいていない。

一瞬の出来事。あまりの展開の速さに、頭がついていかなかった。
ハッキリ断ることも忘れていた。
「こんなの頼んでいいと言っていないよ」
この言葉がでなかった。

置き引きにあった人がテレビインタビューに答えていた。
「最初は何が起こったのかよくわからず、あっけにとられちゃうのよ」
そんな感じだ。

「やられた」
我に返る。

恐怖感、不安感がぼくを襲う。
のんびり飲み物を飲んでいる場合ではなかった。

すぐに立ち上がり、階段に向かう。
突然男性2人が現れ、ぼくの前に立ちふさがる。

「これはまずい展開だな」
などと考えているゆとりはなかった。


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