壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

芙蓉

2010年09月29日 23時12分07秒 | Weblog
        霧雨の空を芙蓉の天気かな     芭 蕉

 異説が多いが、『笈の底』に、「快晴の日影にはややもすれば花萎み、葉までも塩垂る品なれば、陰雲の覆ひたる日は誠に此の物の天気と云ふべし」とあるのがよくあたっている。
 また、中七「空を芙蓉の」のしらべと、「を」の使い方とを学びたい。

 「霧雨」も秋季であるが、ここでつよく働くのは「芙蓉」なので、こちらが季語で秋。
 「芙蓉」はアオイ科の落葉灌木。高さ二~三メートルに達し、花は一日で萎(しぼ)む。ここでは白色のものを指していよう。
 別にこの「芙蓉」を蓮(はす)、あるいはまた富士山などと考える説もある。ちなみに富士山は、不二山・不尽山などとも書き、芙蓉峰(ふようほう)とも呼ばれる。また、不死の山とも。

    「空にはけぶるような重苦しい霧雨が降りこめている。その空模様が
     かえって芙蓉の花が咲き出るにはよい天気と見えて、次々と花をつ
     けていることだ」


      白芙蓉 朝の心経ゆるやかに     季 己