白髪抜く枕の下やきりぎりす 芭 蕉
発想はまことに素直で、季感と心境とが渾然融合した、境涯の句とも言うべきものである。
枕や床の下のきりぎりすは、和歌や漢詩にも多く詠まれている。たとえば、『過去種』には『山家集』の、
きりぎりす 夜寒になるを 告げがほに
枕のもとに 来つつ鳴くなり
が指摘されている。それを「白髪抜く」としたところに、俳諧的把握があることは、『蒙引』にいうとおりで、この句の手柄と見るべきであろう。元禄三年八月の作。
「きりぎりす」はコオロギ(蟋蟀)のこと。昔はコオロギと逆用されていた。秋季。その実際に触れて生かされたものであろう。
「なんということもなく白髪を抜いていると、枕の下のあたり、
蟋蟀の声がしているのに気づいた。いつかその声に引き
込まれたが、自分もそぞろ身の秋を感じたことだ」
――だいぶ涼しくなったので、『院展』を観るために日本橋三越へ行ってきた。
同人最新作と入選作合わせて300余点、力作もかなりあり結構楽しませてもらった。ただ、感心はしてもどこかで見たような作品が多く、感動した作品は17点。その作家名を順不同・敬称略で下記に記す。
吉村 誠司 大野 百樹 倉島 重友 大野 逸男 (以上同人)
阿部 任宏 大嶋 英子 奥村佳世子 鴈野佳世子
岸野 香 北田 克己 並木 秀俊 波根 靖恵
前田 力 松下 雅寿 村田 潤治 山田 伸
吉井 東人 (以上一般入選作)
この中でも特に手元に置きたいと思った作品は、次の8点。
吉村誠司 祭壇(バリ島にて) 大野百樹 陽
倉島重友 土の家 大嶋英子 時をこえる詩
岸野 香 Trip 北田克己 月の導者(しるべ)
並木秀俊 閃しゃく(火に樂) 波根靖恵 約束の行方
こほろぎの闇の彼方の少年期 季 己
発想はまことに素直で、季感と心境とが渾然融合した、境涯の句とも言うべきものである。
枕や床の下のきりぎりすは、和歌や漢詩にも多く詠まれている。たとえば、『過去種』には『山家集』の、
きりぎりす 夜寒になるを 告げがほに
枕のもとに 来つつ鳴くなり
が指摘されている。それを「白髪抜く」としたところに、俳諧的把握があることは、『蒙引』にいうとおりで、この句の手柄と見るべきであろう。元禄三年八月の作。
「きりぎりす」はコオロギ(蟋蟀)のこと。昔はコオロギと逆用されていた。秋季。その実際に触れて生かされたものであろう。
「なんということもなく白髪を抜いていると、枕の下のあたり、
蟋蟀の声がしているのに気づいた。いつかその声に引き
込まれたが、自分もそぞろ身の秋を感じたことだ」
――だいぶ涼しくなったので、『院展』を観るために日本橋三越へ行ってきた。
同人最新作と入選作合わせて300余点、力作もかなりあり結構楽しませてもらった。ただ、感心はしてもどこかで見たような作品が多く、感動した作品は17点。その作家名を順不同・敬称略で下記に記す。
吉村 誠司 大野 百樹 倉島 重友 大野 逸男 (以上同人)
阿部 任宏 大嶋 英子 奥村佳世子 鴈野佳世子
岸野 香 北田 克己 並木 秀俊 波根 靖恵
前田 力 松下 雅寿 村田 潤治 山田 伸
吉井 東人 (以上一般入選作)
この中でも特に手元に置きたいと思った作品は、次の8点。
吉村誠司 祭壇(バリ島にて) 大野百樹 陽
倉島重友 土の家 大嶋英子 時をこえる詩
岸野 香 Trip 北田克己 月の導者(しるべ)
並木秀俊 閃しゃく(火に樂) 波根靖恵 約束の行方
こほろぎの闇の彼方の少年期 季 己