壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

初茸

2010年09月10日 21時18分11秒 | Weblog
        初茸やまだ日数へぬ秋の露     芭 蕉

 初茸のみずみずしさをほめた句である。事柄は新鮮なのだが、表現に乾いたものがある。おそらく、「まだ日数へぬ」に考えられたあとがあるからであろう。この中七は、上五に対して述語ふうにも、また下五に対して修飾語ふうにもとれる。ここは素直に、上五の切字「や」で切れていると考え、後者で解したい。

 季語は「初茸」で秋。他の茸にさきがけて、松林や雑木林に生えるので、この名がある。傘の表面の中央部分が少しへこんで、年輪のような環紋がある。淡い赤褐色で質はもろい。傷をつけると汁が出て、空気に触れると青緑色に変わるので、「藍茸(あいたけ)」というところもある。食用キノコとして知られ、味は淡泊である。
 「秋」・「露」も、ともに季語。元禄六年七月ごろの作。

    「その名のように、いちはやく出はじめた初茸の一群を見つけた。
     それは、秋に入ってまだ幾日もたたない露にぬれて、いかにも
     みずみずしいうるおいが見える」


      月夜茸 傘かたむけてうふふふふ     季 己