壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

土用波

2008年07月21日 21時51分12秒 | Weblog
 7月第3月曜日は、「海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う」日、つまり「海の日」で祝日である。
 今日も各地で最高気温をマークし、海の事故も跡を絶たない。趣旨は最初から関係なく、単に官公庁・会社が“お休みの日”というだけである。

 暦法で立夏・立秋・立冬・立春の前十八日を土用という。したがって、土用は四季それぞれにある。
 しかし、俳句のうえでは、最も暑く、農作業のうえでも大事な時期となる夏の土用を指す。
 また、一般的にも単に土用といえば、夏の土用に限るように思われる。夏の土用は、小暑(七月二十日ごろ)から立秋までの十八日間で、土用の入りを土用太郎、続いて次郎、三郎と呼び、土用三郎の日の天候で耕作の吉凶を占う俗習があった。

 歳時記には、土用波・土用東風(どようごち)・土用鰻・土用灸・土用蜆・土用凪・土用干し・土用餅・土用芝居・土用芽などと、夏の土用にちなんだ俳句の季題が、目白押しに並んでいる。

 土用波は、夏の土用のころ、太平洋沿岸に打ち寄せてくる、うねりの高い大きな波のことをいう。南方洋上で発生した熱帯性低気圧の影響により、海面に大きなうねりを生じて、日本の海岸に高い波を打ち寄せてくる。
 そのために、船は大きくローリングし、海岸には砂を巻き込んで、背より高い磯波を打ち寄せる。こんなときには、不用意な海水浴客が海に引き込まれて、とんだ災難に遭うことが少なくない。
 土用波は、海水浴には要注意の現象だが、高い波を必要とするサーフィンなどのスポーツには適しており、波乗りだけは盛んになる。

 昔から、泳ぎ自慢の若者は、幅一尺・長さ三尺位の板を持って、土用波のうねりに乗ると、文字通り怒涛のような勢いで、浜辺まで空飛ぶようなスピードで打ち上げられるスリルを楽しんでいた。
 最近は、サーフィンと称して、いっそうこの快感を楽しむ若者が増えてきたが、台風が来るたびに、サーフィンによる犠牲者が絶えないことは困ったものである。
 生兵法は大怪我のもと、自分の命を大切にしない者は、他人の命にも、尊重の念を持たぬ道理である。

 自動車やオートバイを走らせれば、制限速度も騒音も他人迷惑はお構いなし。スピードとスリルを追求する果てには、そこまで育て上げてくれた親の苦労はおろか、自分自身の生命の尊さも顧みることなく、一瞬にしてこの世とおさらばするときては、いったい何を考えているのだろう。
 若者よ、どうか“バカ者”にだけは、ならないでいただきたい。


      土用波 少年の口一文字     季 己