壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

桔梗

2008年07月14日 21時17分55秒 | Weblog
 昨年の秋、植木市で購入した源平カズラの花が満開である。
 つぎからつぎへと花が咲き継ぎ、一冬中、楽しませてくれた。
 春になり、花がなくなったので、かなり短く切り詰めた。
 数週間後、新芽が続々と出て、今、花の真っ盛りである。白いガクの中から伸び出た赤い花が、何ともいじらしく味わい深い。
 切り落とした枝のうち1本だけが根付き、葉も大きくなり、間もなく花芽を出すものと思われる。

 これに味をしめ、咲き終えた桔梗の花を切り詰め、9月にもう一度咲いてもらおうとしているのだが、はたしてどうなるか。
 “サンデー毎日”だと、いろいろなことをしてみたくなる。好奇心と同時に光輝心があれば、“濡れ落葉”とは全く無縁になれる。

 『萬葉集』巻八に、山上憶良の秋の野の花を詠める歌二首がある。

        秋の野に 咲きたる花を 指(および)折り
          かき数ふれば 七種(ななくさ)の花 (其の一)

        萩の花 尾花くず花 なでしこの花
          女郎花また 藤袴 朝顔の花 (其の二)

 陰暦七月七日の夜、いわゆる“たなばた”の宮中の儀式の供え物として、七種の草花の選定が必要となり、山上憶良が七種を創案したのではないかと思われる。
 朝顔の花は、①いまのアサガオ、②ムクゲ、③ヒルガオ、④キキョウなど諸説あるが、キキョウ説が有力である。
 そのためでもなかろうが、秋の七草といえば、今は、萩・薄(尾花)・葛・撫子・女郎花・藤袴・桔梗の七種をいう。

 いずれにしても、現代のわれわれは、栽培品種としてあまり身近な朝顔よりも、桔梗の野趣を秋の七草にふさわしく感じる。
 しかし、その桔梗、最近では、六月末の早咲きのものが多く、秋の草花という感じがしない。
 世の中、すべて促成栽培を喜ぶようになったからであろうか。
 それでも、ごく自然に近い条件で露地植えにした桔梗は、六月末から次々に咲き続けて、九月ごろまでは蕾を持つ、寿命の長いものである。
 しかも、どんなに暑い夏から咲いていようとも、あの品のよい紫の色と、さりげない釣鐘型の花の形を見ては、おのずから秋の気配を感じずにはいられない。

 俳句の世界では、桔梗を“キチコウ”と詠むこともあるが、植物学では“キチコウ”などという呼び方はない。
 園芸用としては、白色のものや紫と白の混じり合った二重咲きのものも見られる。
 山野の水辺や湿地に自生する沢桔梗、山地の岩桔梗は、桔梗という名をもっているものの、まったく別のものである。混同しないよう、注意したい。


      みちのくの日暮れ 紺屋の白桔梗     季 己