朝早く起きると、今日も快晴だった。
学校に向かうのに外に出てみれば、夏に比べれば幾分和らいだ陽の光が俺を包み込む。
「あっちぃ」
今日も暑くなるのかもしれない。残暑と呼べるような暑さではないものの、動けばそれなりに汗をかく。ちょっとだけため息を吐く、と!
「おはようございます、慎吾さーん!」
いきなり腰元に飛びついてきた迅に、「おはよー。今日も朝っぱらから元気だな」と声をかけた。
ニコニコと今日も機嫌良さそうな迅の微笑みに、こっちもつられてしまう。
「何かいい事でも、あった?」訊いて見ると。
「あれ!」
と、迅の指先が空を指し示した。
「あー?」
俺もそれに合わせて空を見上げると。
突き抜けるような青い空がどこまでも高く続いていく。
そこに白い雲がポツポツと浮かんでいるのが見えた。
「いわし雲か。空もたけーし、本当に秋なんだな」
「いわし大好き。お魚美味しい」
迅が嬉しそうに尻尾を振った。俺は噴出す。
「お前が食ってるのは川魚だろ? 鮎とか虹鱒とか」
「でもたまに山ちゃん先輩がお土産って、海の魚くれてたの」と鰯以外の魚の名前を挙げ始めた。……神様ってやっぱグルメなんかなぁ?
「油揚げも好きだけどー」
狐耳が横に数回ピクピク動いた。
「……慎吾さんも、大好きだよ」
……だから!
「ほら。途中まで一緒に行くか? 手、繋ぐ?」
真っ赤になったであろう顔を隠すように前を向いて、それでも俺は右手を迅の方に差し出して促した。
「うん! 一緒に行く」
そっと掴まれた俺の右手には、迅の両手がそっと乗っかっていた。
……食べ物の好きと同列なんか? 俺。
隣で楽しそうに歩く迅の頭の天辺を見下ろしながら、ちょっとだけ。
嬉しいけど複雑な心境になった秋の朝。
きっと、食べちゃいたいくらい、大好きなんだ。
書きたい話がいろいろ煮詰って、オーバーフローしているみたい。
いけない! こういう時はかえって何もできないんだもん! とほほのほ。