「またケーキ食べて、いいの?」
迅が尻尾をブンブン振りながら喜んでいる。
「あぁ、今度は俺のバースディケーキだから。ばあちゃんが気を利かせてくれたみたいだ」
はいっと切り分けてあげると「いただきまーす」と食べ始める迅に苦笑する。
見てくれの通り、甘いものに目が無いらしい。
二日前の迅の誕生日にも食べさせてあげたけど、えらくケーキとその上の生クリームが御気にめしたらしい。これでこの辺を護っている稲荷神だというんだからねぇ。
「あ!」
「どうかした?」
にじり寄ってきた迅が小さい手で顔を指してくる。
「そこにクリームついてる」
「どこ?」
俺が手を置こうとすると、またこの子は突拍子もなく行動に移してくる。
顔が近いと思った時には「ぺろり!」と。
唇の端を嘗められていた。
呆気に取られている俺を無視して、「取ってあげた」と満面の笑み。
きっと、大好きなクリームを嘗めれたってだけで、嬉しいんだな。
……こっちの気も知らないで。
そうこうしてる間にケーキを食べるのに夢中になってる迅にもクリームの洗礼が。
「迅。クリームついてる」
「どこ?」
「ここ」
迷わず迅の柔らかいホッペを固定して、唇の端を嘗め上げてやった。
マジかで見る見開かれた迅の瞳の色は、秋の空のように澄んでどこまでも高くある空色に、これから夜の帳がせまったような深い色をしてるなと、思った。
「あう」
「あいこ、な」
「う、うん」
頬を染めたその頭を撫でてやると、迅が言った。
「またついたら、嘗めてくれる?」
……こいつは!?
「いいよ。どこについたのでも、よければね?」
きっと、奥の意味まで解ってないよな。
俺は内心苦笑した。
慎吾さん、お誕生日おめでとう!
遅くなってしまってごめんなさいねぇ。なんかもう、いっぱいなんで。
もちろん、この後某稲荷神様一行乱入により、ラブい雰囲気は吹っ飛ばされます!