「……熱、あんの?」
利央と二人で体温高いって話をしていたら、横から腕を引っ張られた。
なんだ?
そう思った時には。
慎吾さんの顔が目の前にあって、何が起きたのか理解できなかった。
「……別に、なさそうだけど?」
おでこに自分より冷たい感触。
鼻先にミントの香りの吐息がかかる。
どんどん。
顔の表面温度が急上昇してくる。
「いや! なんでも!! ないっす」
慌てて顔を離した頃には、茹蛸みたいになっていたんだと思う。
「……。和己、迅熱あるみたいだから、今日は部活休み」
「おっ? そいつはまずいな。新型インフ○なんて言われたら大変だ」
「じゃ、送ってく」
「……うまく言っとく」
クスクスと笑う主将に利央が「いーなー」と指先を咥えて見送ってくれる。
「ほら、迅。帰るよ」
「あ、でも、あの」しどろもどろなオレに。
「……熱を上げたお詫びに、31のアイスでいい?」
振り返って微笑んだ慎吾さんの顔も少し赤いから。
「……っす!」
そう笑顔で返して、その傍によった。
たまにはそんな、息抜きも悪くないだろ?
そうですね。と、答えると、「本当に熱出させるぞ?」と首に腕を巻かれた。
今はまだ。
こんだけのスキンシップで。
十分、熱出そうだから、これ以上が許してください。
そう小さい声で言ったら。
屈託無く笑われて、オレも笑って返したのだった。