こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
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嚥下の卒業試験

2012-03-28 23:00:02 | 訪問看護、緩和ケア
昨日は、以前にも何回か書いた摂食訓練中の患者さん(摂食訓練中・・)の担当者会議がありました。

思い起こせば、3年以上前にほとんど動けない状態で退院された患者さんです。
当時は、くりかえす誤嚥性肺炎とイレウスで、気管孔があり吸引も行っていました。
経口摂取はもう一生無理との診断で、CVポートからの中心静脈栄養をされており、家の中を歩くのさえつかまり歩行でやっとの状態でした。

それが、1年ほど前には気管孔が閉鎖され、近所を散歩できるようになりました。
やがて、ほんの少量のトロミ水から経口が始まり、嚥下サポートチームの結成で、一進一退を繰り返しながらも、嚥下評価をしながら経口食が増えていきました。

間には、嚥下訓練の徹底や、食事時の見守り、食材の吟味や形態の検討も行っていました。
途中、CVポートからの感染や、妻の病気入院、さらには最愛の一人息子さんの死も乗り越えてきました。

今年に入り、いよいよCVラインは抜去され、経口摂取のみでの生活となりました。

そのための栄養補助食品のご紹介などもしてきました。

一時は、低栄養のリスクが高まり、一時的にIVHを再開したものの、先月からはずっと経口摂取のみで経過されています。
ヘルパーさんの作ってくれるのもと栄養補助食品で、最近ではほとんど体重の減少もなくなり、ADLは公共交通機関を使って妻の病院へ通うこともできています。

昨日の担当者会議。
今度の介護保険の亢進では、へたをすると要支援になるかもしれないMさんの、自立へ向けての総決算カンファのようになりました。

本人は主治医が送迎で連れてきます。
そして、主治医、嚥下機能評価をしてくれる歯科医師と助手、クリニック看護師2名、MSW1名、訪問看護師私と担当者の2名、ケアマネ、ヘルパーのサ責、訪問入浴スタッフ、管理栄養士など総勢13人での担当者会議でした。

色々な意見がどんどん出てきました。
今後介護度が減った時、嫌でもサービスをあまり使えなくなる状況の中で、もう、これはご本人に自立して貰うしかない状況での話し合いです。

訪問入浴は、今後は自分で入浴をする方向となり、まずは風呂場の環境調整をし、しばらくは訪問看護とヘルパーでの見守りをしていくことになりました。
そして、食事はヘルパーにお願いするとともに、作り置きの物を自分でとろみをつける、温める、嚥下指導の通りゆっくり食べる、あとかたずけも、洗物も自分でするという、今までの練習成果を確実に行うということに。

そこで、ご本人曰く「先生方、私はもう普通に何を食べても大丈夫だと思うのです。」と。

嚥下担当のI先生、「本当は、まだまだ嚥下機能としては、心配な部分があります。」
「いやー。先生は厳しいから。でも自分はもう大丈夫ですよ。カレーうどんが食べたいし。」
「わかりました。そうしたら卒検をしましょう!」
一同「卒検?!おお~、それはいいかも!」

と言う事になり、ご希望のうどんを食べながらの卒検が行われることとなりました。

5月には、介護保険の更新があり、現在の介護度3から大幅に下がる事が予測され、5月からの自律に向けての訓練が本格化されるわけです。

それにして、卒検の日が訪れるとは、当初夢にも思いませんでした。

80代半ばで、CVポートと気管孔に吸引の状況から、在宅でここまで回復されるなんて、ほとんど奇跡的と言っていいような状況です。
経口開始で、当初心配されていたイレウスさえも、いまのところ排便コントロールでクリアできています。


それにしても、Mさんの嚥下サポートチームはすごい結束力でした。

これは、この地域の自慢ですね。
胸を張って、いいチームケアが出来たといえると思います。

80代半ば、独居男性のMさんの、本当の自立はこれから始まります。

いざとなれば、すぐに手は差し伸べられますが、とにかく彼の意気込みもすごくて、みんなで応援したいと思っています。
頑張れ卒検、めざせカレーうどん!!