こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
在宅緩和ケアのお話や、日々のあれこれを書き留めます。
看護師さんも募集中!!

看護師ブログのランキングです。ポチッってしてもらえると励みになります。(^^)/

にほんブログ村 病気ブログ 看護・ナースへ
にほんブログ村

やっぱり、「人のレールに乗りたくない!」

2012-03-03 20:51:50 | 大学の事
「人のレールにのりたくない!」
そう断言したS次郎さんが、いよいよ退院しました。

ご本人の意思で、腹水でパンパンのおなかを抱え、たった一人の家に帰ってきたのです。

退院後に介護ベットが入ったはずなので、私が一番乗りで様子をみに伺うこととなりました。
古い小さな文化住宅の、玄関の引き戸をがらっりとあけると、すぐ目の前の居間にS次郎さんが胡坐をかいて座っていました。

「こんにちは!久しぶりの家はいかがですか?ご様子見に来ました。」というと、彼は毛糸の帽子を被ったまま、ニカッと笑って「よお、悪いね!」と一言。

「さっきベットが入って、今布団自分で敷いたんだよ。あれでいいのかな?」

介護ベットの耐圧分散マットの上に、しっかり敷布団が・・。

でも、一生懸命自分で敷いた布団・・。

ベットの搬入した業者さん、一言説明してくれればいいのに・・と思いつつ、
「敷き布団、あった方がいいですか?これ、そのまま寝ても体が楽なマットなんですけれど・・。でも、せっかく敷いたから、今夜一晩様子見てみます?」と聴いてみました。
「おお、そうするよ!」

思いのほか、ふかふかな感じのお布団がしっかり敷かれ、電気毛布も入っていて、すごくほっとしました。
確かに、何にもないがらーんとしたお部屋ではありますが、火の気のない部屋のちゃぶ台の前で、美味しそうに煙草をくゆらせるS次郎さんの顔を見ていたら、なんだかうれしくなりました。
悲壮感なんてどこにもなくて、自由になったぞー!的オーラを発散していましたので。

食事は自分で調達できるさ。
冷蔵庫は、トモダチがリサイクルショップで5000円で探してきてくれることになってるよ。
フロは、たぶん使えるよ。

10日、自分でなんとかするよ。
もしかしたら、その前にヘルプするかもよ。
でも、今はいい。
おれ、身体に触られるの好きじゃないんだよ。

そんな話をしました。

翌日、もう一度だけ書類にサインをもらいに行きましたが、確かに自分で食料を調達されていました。

食事内容は、ちょっと心配な内容で、インシュリンも自己注射しているので、低血糖をおこすリスクはありますが、彼は自分で決めた生活のスタートを誰からも乱されたくはないのでしょう。

足取りも、病院で見た時よりしっかりとして、これならしばらくは大丈夫そうです。
「わかりました。それじゃあご希望どうり、さ来週から週一回伺いますね。何かあったらいつでも連絡ください。それじゃあまた。」と言って帰ろうとする私を、「おおきに!」とお国ことばで送ってくれました。

彼は、自分の命の期限を知っています。

「今のうちに合いたい友達がいっぱいいるんだ。だから、入れ代わり人が来ることで、それを邪魔されたくはないんだよ。」「友達に合いに行きたいって・・。ははは、俺も年取ったな。」

今この時間と一人の生活を、同か存分に味わってほしいなと思いました。
大きなお世話は、なるべくしないように、そっと見守れればいいなと思っています。