発信箱:ご都合主義=与良正男(論説室) 毎日新聞から
ご都合主義が目立ってきたなあと言わずにはいられない。もちろん鳩山政権の話。例えば天下り問題だ。日本郵政社長に斎藤次郎元大蔵事務次官を選んだのに続き、人事院の人事官には総裁就任を念頭に江利川毅前厚生労働事務次官を起用するという。
斎藤氏の時は「退官後14年も経過しているから」としきりと強調していたはずだが、江利川氏の場合はつい最近まで厚労次官。すると今度は「公務員制度改革を抜本的にやるためには事情を熟知した人が望ましい」のだという。
マニフェストに掲げたのは「天下りあっせんの禁止」であり、省庁があっせんせず、政治家が選んだ人事は構わないという理屈のようだ。何だ、そんな話だったのかと驚いた人は多いだろう。
あるいは内閣官房報償費(官房機密費)。民主党はかつて機密費の支払い記録書作成を義務づけ、10~25年後に公表させる法案を国会に提出していたが、一転、使途も金額も「公表せず」となった。鳩山由紀夫首相によれば、平野博文官房長官は「信頼できる人」だから、一切任せるのだそうだ。
政権につけば、野党時代の主張と矛盾が生じることも当然ある。そのくらいの寛容さを多くの人は持っていると思う。でも、方針を変える時には「変えました」ときちんと説明するなり、謝るなりしないと国民は納得しない。むしろ、へ理屈をつけてごまかそうとするほど不信感が募る時代だ。内閣支持率はなお高いが、こうした話から政権への信頼が離れ始めることを忘れてはいけない。
「自民党に言われる筋合いはない」かもしれないが、国民にはもの申す権利が十分あるのだから。
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