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Narashino Geography 41 「医療地理学」を知っていますか

2021-07-31 09:02:04 | 地理学

「医療地理学」を知っていますか

コビッド19パンデミックで注目されたのがカミュの「ペスト」です。

中学生のころに読んで、それからずぅ~っとカフカが著者だと勘違いしていました。青い思い出ですね。

「スペインかぜ」が発生したのは、スペインではなくアメリカだった。現在ウイルス名に地名をつけることは偏見やヘイトを生むのでやらなくなっている

第一次世界大戦で感染が世界に広がった「スペインかぜ」も話題になり、発祥地はスペインでなくアメリカだったことを知る方も多いでしょう。現在はウイルス名に地名をつけることは偏見を生むのでWHOはやめています。トランプ元大統領などが「武漢(ウーハン)ウイルス」と呼んだことは、米国のアジア人ヘイトにつながっています。

地理学がコレラ大発生の原因をつきとめた

地理学では19世紀半ば、ロンドンのコレラ患者の分布図から、汚染原因となったポンプを突き止めた研究が有名です。まだ、細菌も知られていない時代に感染流行の結果から帰納法的に原因となった飲用水の汚染を突き止めた研究です。

ブロード・ストリートのコレラの大発生 - Wikipedia

その後、公衆衛生が注目され、ロンドンでも下水道整備が進みました。今では想像しにくいことですが、ロンドンの労働者宅にはトイレがなく、部屋に敷いてあった寝藁の一角に排泄して、藁と一緒に処分したり、地下室に排泄物を溜めたりしていたといいます。

江戸時代の日本にはトイレの循環システムができていたが、フランスなどでは排泄物を道路に投げ捨てていた

江戸時代の日本の大都市では、郊外の農家が汲み取りをして堆肥とし、採れた作物の一部を都市に返すという循環のシステムができていました。ロンドンやパリ市街でも下水道が整備されるまで、「おまる」に溜めた排泄物を窓から道路に投げ捨てるのが一般的でした。王宮にもトイレはなく、庭で用を足すのが一般的でした。

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ハイヒールも「汚物を踏むのを避けるため」発明された

映画などの場面で、女性が「チョッと風に当たりたい」と言うのは、庭に出て用を足すということです。ハイヒールも汚物を少しでも避けるための発明だったようです。

ハイヒールの由来~中世ヨーロッパの時代背景も考えれば

ハイヒールはファッションアイテムの一つですが、由来はファッションとは関係ないようです。元々は厚底サンダルのような形していたハイヒール。理由は...

サーチアイレット

 

コビッド19のコウモリ、エイズのサル。伝染病対策には、ウイルスや細菌の特定と、その背景になっている環境因子を探ることが重要

トイレ事情は今でも地域によって大きく違います。「食う、寝る。ウンチ」は人間の基本的営みですから、「ひと」が生きていくための基本となるものです。

ボクの授業で紹介していたもうひとつの研究事例は40年ほど前に日本地理学会で聞いた、当時厚生省(現・厚労省)の技官だった米山さん(記憶が曖昧です)が「日本では西から東にドミノ倒しのように人が亡くなっていく」という発表です。危篤状態の人が気圧の変化によって息を引き取るという研究で、各地の病院での死亡時刻を地図上に示すと、低気圧の西から東への移動に合わせて人が亡くなっていく様子が見られるというものでした。現在でも新しい伝染病が見つかるとウイルスや細菌の特定とその背景となっている環境因子を探ることが重要です。コビッド19ももともとは野生のコウモリが持っていたウイルスが人との接触で人に感染して流行したものと言われています。HIVウイルスもアフリカのサルが持っていたウイルスがサルの干し肉を介して人間に感染したものと言われます。人が野生動物との接触を深めたり、気候危機で野生動物の生息域が変化したりすることで、新たな感染症が人間世界にもたらされています。これからも新たな感染症の出現は想定されます。ウイルスや細菌は人類の脆弱な部分を狙って勢力を拡大しようとするでしょう。

日本のコビッド19(新型コロナ)対策が遅れたのは、「金の無駄」と言って研究費を削減し、保健所・病院・ベッド数を減らしてきたせい

日本でコビッド19感染症対策が遅れたのは、想定されていた感染症に対するワクチン研究や医療体制の構築を「金の無駄」といって怠っていた結果です。特にこの20年ほどは基礎研究への支援を減らし、保健所、病院数、ベッド数の削減に補助金を出すなど公衆衛生をなおざりにしてきました。

儲からないものに予算を使わない「新自由主義」が日本を「弱く」した

政治の結果が現在の混乱につながっています。公衆衛生は問題が起こらないように長期的な戦略を立てて進める必要があります。まさに俯瞰的で総合的な視点+長期的な計画が必要な分野です。小泉純一郎首相のころから儲からないもの、すぐ必要でないものには予算を使わないという、「新自由主義」がはびこったことが日本社会を結果として弱くしてしまいました。医療従事者、病院、保健所を急に増やすこともできず、ワクチン研究も出遅れて国民の安全を守れない状況に陥っています。千葉県でも20年ほど前にインフルエンザワクチンを生産していた研究所を閉鎖したことを覚えています。何を大切にするかは、お金や目先のことだけでなく賢く判断し、計画していく必要があることを反省したいものです。(近)

 

 

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