大浜清さん(千葉の干潟を守る会 前代表)が6月9日、お亡くなりになりました。享年96歳。ご冥福をお祈りします。
埋め立てられる予定だった「谷津干潟」。大浜さんを筆頭とする多くの先人の皆さんのねばり強い活動で埋め立てを断念させ、ラムサール条約登録地になり、今も多くの皆さんの力で守られています。
在りし日の大浜清さん(「三番瀬を未来に残そう」HPより)
千葉の干潟を守る会の活動、以下のサイトから引用させていただきました。
JAWAN(日本湿地ネットワーク)JAWAN通信 No.135
千葉の干潟を守る会の結成は1971年3月27日である。当時は、東京湾の埋め立てがすごい勢いで進んでいた。1970年当時、東京湾奥では千葉県の習志野と幕張の海岸だけが残されていた。1971年、習志野市地先も埋め立て計画が認可される。
東京湾の埋め立てをなんとか食い止めたい。このままでは東京湾は死の海になってしまう──。そんな危機感をいだいた学生や若い人たちが中心になって「守る会」を旗揚げした。大浜清さんや石川敏雄さん(故人)も加わった。「いのち豊かな東京湾を子孫に残そう」「私たちの東京湾を守ろう」をスローガンにかかげて活動をはじめる。
運動のはじめは、習志野市地先の干潟埋め立てをやめさせることである。街頭署名やデモ行進、市・県との交渉、請願・陳情を活発に進めた。干潟の観察会も開いた。
運動は、習志野市の袖ヶ浦団地自治会や周辺町内会などの賛同や協力を得て盛りあがった。だが1972年、県が杭打ちを強行する。干潟はみるみるうちにつぶされていった。
その悔しさから、海をにらむ子どものポスターが生まれた。通称「寄り目のハゲ坊主」である。このポスターは、袖ヶ浦団地の3000戸の窓に吊るされた。1976年に千葉市で開かれた「第2回全国干潟シンポジウム」のシンボルマークになった。千葉の干潟を守る会のシンボルマークでもある。
◆盤洲干潟の埋め立てを中止
当時は高度成長から列島改造へと、便利さを求めて突き進んだ時代だった。命を脅かす公害激増の時代でもあった。公害対策基本法や大気汚染防止法、水質汚濁防止法などが次々と制定される。だが、その成果は十分とはいえなかった。
こうしたなかで、「守る会」は魚介類や鳥たち、そして私たち人間自身のために「干潟を守ろう」と立ち上がった。誕生したばかりの環境庁(現環境省)に干潟の保存を訴えた。国会にも「東京湾の埋め立て中止と干潟の保全」を求める請願を提出する。この請願は、1972~73年の第68回と第71回の国会で採択された。これによって盤洲干潟(小櫃川河口干潟)の埋め立ては中止になった。盤洲干潟は日本最大規模の砂質自然干潟である
◆谷津干潟を保存
千葉の干潟を守る会は、東京湾の干潟を保全するため、社会にねばりづよく働きかけた。会員は、習志野、船橋、市川、千葉の各市から全国にひろがる。全国各地の自然保護団体と協力し、干潟保全活動を拡大させた。
幸いなことに、習志野市地先の谷津干潟は大蔵省所管の国有地となっていた。そのため、公有水面埋立法では埋め立てることができなかった。だが、習志野市が谷津干潟の埋め立てを計画する。住宅用地の造成などが目的である。「守る会」は、この干潟を「谷津干潟」と命名し、埋め立て反対運動を進めた。
第1回全国干潟鳥類一斉カウントによって、谷津干潟にはシギ、チドリが全国最多の8分の1も集結していることが判明する。そこで、「谷津干潟を自然教育園にしよう」という運動もはじめた。1976年は「全国干潟シンポジウムin千葉」を主管し、海浜保全基本法の制定を要求した。
1974年、谷津干潟の真ん中に湾岸道路(東関東自動車道)を通すという計画ももちあがった。これにたいし、習志野市袖ヶ浦・谷津と船橋市若松の住民などが「袖ヶ浦・谷津・若松・稲毛 公害から住民を守る連絡会」を結成する。連絡会は谷津干潟保全運動と連携して湾岸道路建設反対運動を進めた。その結果、道路は計画変更され、海側(南側)へ500m移ることになった。また、道路の北側に100m幅の緩衝帯を設けることになった。この100m緩衝帯は、谷津干潟の鳥をはじめ、周辺住民の生活環境にとって重要な意味をもっている。
こうした運動の結果、習志野市は谷津干潟の埋め立て計画を断念した。1984年である。1988年には国指定鳥獣保護区(ほとんどが特別保護地区)に指定される。そして1993年、ラムサール条約第5回締約国会議(釧路会議)でラムサール条約湿地に登録された。日本で7番目、干潟としては初のラムサール条約登録である
その後、習志野市は6月15日を「谷津干潟の日」と定めた。谷津干潟自然観察センターでは毎年、この日を中心にさまざまな催しがおこなわれている。
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