世界を知ることが、世界平和への一歩
戦争は人の心の中で生まれるもの(ユネスコ憲章)
ユネスコ憲章・前文(1945年11月)に、「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。」という有名な言葉があります。ユネスコ憲章は平和を築くためには教育が大切だと言うのです。その最初は世界を知ることで、教員の地位に関する勧告(1966)では、「パラグラフ107 教員は、外国で得た教育経験を同僚とわかち合うことを奨励されるものとする。 」と、教員の海外経験、異文化に触れることを勧めています。
緒方貞子・元難民高等弁務官(1991~2000)は「今解決しないと思われていることでも、永遠に解決しないわけではありません。時間はかかるけれど、努力を続けることで解決することもあるのです」と述べ、諦めずに努力を続けることを訴えていました。彼女は、それまで国連が手を差し伸べなかった国内避難民の現場に足を運び、支援をする仕組みを作り上げました。国際紛争としての「戦争」がない現在、国内の紛争で難民となった人たちにも手が届くようになりました。
カントの「永遠平和のために」
古くは、カントの「永遠平和のために」Zum Ewigen Frieden(1795)に「①国家=道徳的人格、②平和状態は創設されるべきもの、③共和制のみが永遠平和にかなう制度、④各国家は『平和連合』を作るべき、⑤理念上は『世界共和国』がベスト、⑥世界市民法の理念、⑦永遠平和は『いつか』必ず達成される」の7つの基本が示されています。
人間の安全保障
国連や世界平和を考えるときにこのような「資産」を生かすことが重要です。そして、戦争がないことが平和というのではなく、国連は2001年に「安全保障の今日的課題-人間の安全保障委員会報告」で新しい概念を示し、2005年のサミットで「人間の安全保障」を宣言しました。この概念は極めて精緻でさまざまな要素と要因を踏まえて構成されていますが、簡単に言えば「全ての人が人間らしく暮らせる世界を構築すること」を目標としています。この延長線上にSDGs(エスディージーズ)も存在しています。
現在の世界は複雑に絡み合い、お互いに支えあいながら世界は成立しています。その世界をリアルに理解することは容易ではありませんが、世界を正しく理解できるように自らの視点を定めることが大切です。そのためには、日々あふれる情報を吟味して、自らの頭の中に世界の情報地図を作り上げることがカギになります。
危険な「安保法」=陳腐な軍事力中心の考え方
日本では2019年9月19日に安全保障法制として「安保法」が多くの反対の声を無視して強行成立されました。日本政府の「安全保障」概念は現代的でなく陳腐な軍事力中心のものです。
医薬と種子の特許を国際企業が牛耳(ぎゅうじ)る米国の世界支配
米国のトランプ前大統領も「カネのかかる軍事力」による覇権は、古いと考え、知的財産(特許)による世界支配を進めていました。医薬と種子の特許を米国の国際企業に支配させることで、世界を支配するという戦略です。
日本が売られる
「中国と軍事力で対抗」という荒唐無稽な日本の考え方
このような21世紀型安全保障戦略と比べると、日本の安全保障は19世紀的な軍事力中心のものでアップデートされていません。例えば、国土・人口が10倍で、経済力も上回る中国と軍事力で拮抗しようという発想は荒唐無稽です。
「平和宣言をして終わり」ではダメ。行動する市民、自治体が平和をつくる
現代的な安全保障について市民レベルで考えることが重要になっています。「核兵器廃絶平和都市」を千葉県で最初に宣言した習志野市は、その後どのように行動してきたでしょうか。多くの自治体が平和宣言をして、終わりという様子です。平和宣言を出発点として行動する市民、自治体がこれからの平和をつくる淵源(えんげん)となると思っています。(近)