悪魔がここにいる | ||
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読了日 | 2004/1/8 | |
著 者 | 今邑彩 | |
出版社 | 中央公論社 | |
形 態 | 新書 | |
ページ数 | 214 | |
発行日 | 1994/12/20 | |
ISBN | 4-12-500326-2 |
この作品は、今から14年前に「ブラディ・ローズ」というタイトルで東京創元社から出された作品を改題したものだという、が、なぜ改題したのだろうかと読み始めて思った。第1部のスタートで紹介される、古い屋敷の庭に咲き乱れる薔薇の種類や名前が、これから展開されるであろうドラマの幕開きとして、ふさわしい装いを示しており、前のタイトルがそれに似つかわしいと思ったのである。
ところが、読み終わって改題されたあとの、現在のタイトルもこれまた、二重、三重の意味を持たせたタイトルだったということが判るのだ。僕はこの著者のこうしたストーリーの語りが好きだ。なんとなく昔の探偵小説を思わせるような、悪く言えば、思わせぶりなところがなんとも言えない。
この屋敷の女主人だった、苑田俊春の最初の妻雪子の死、そして、二人目の妻良子は私(相澤花梨)の目の前で2回の部屋から石畳の上に飛び降り自殺をしたのだ。それでも、苑田を愛した私は、二人の女の血を吸った石畳や、むせ返るような薔薇の香りに包まれたこの屋敷に三番目の花嫁として屋敷の入ろうとしている。
著者の作品は、ホラーめいたストーリーが特徴だが、僕がいつも読んだ後感心するのは、そうしたちょっと怖い装いを施しながら、きっちり本格ミステリーを形成していることだ。
この作品でも、古い、曰く有りげな屋敷に三番目の妻として、苑田俊春に嫁いだ相澤花梨が誰ともわからぬ者から受け取る脅迫状や、最初の妻だった雪子の部屋の様子、無口で無愛想な薔薇園丁、古くから住み着いている家政婦、無口な若いお手伝い、そして車椅子の妹の存在などが、いかにも恐怖ストーリーの様相を呈し、この作者の物語作りに嵌ってしまうのだ。
しかも、主人公の相澤花梨、彼女の目の前で身を投げて死んだ二番目の妻・良子、屋敷の主人・苑田俊春、その妹・晶、家政婦の寿世、良子になついていたお手伝いの有美、そして園丁の壬生、という7人の登場人物しかいない中での謎解きの面白さを味あわせてくれるから、この著者の作品からはちょっと目が離せない。
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