隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1657.五人目のブルネット

2016年08月15日 | リーガル
五人目のブルネット
THE CASE OF THE BORROWED BRUNETTE
読了日 2016/08/15
著 者 E・S・ガードナー
Erle Stanley Gardner
訳 者 峯岸久
出版社 早川書房
形 態 文庫
ページ数 336
発行日 1978/12/15
ISBN 4-15-070216-0

 

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日書く予定が一日延びた。やはりオリンピックの魅力は大したものだ。見始めてしまうと時間の経過も忘れるほどで、特にメダルの期待が高まる競泳、卓球、テニスなどは自分も協議に参加しているかのように、手に汗を握る。
深夜に及ぶ試合は残念ながら付き合いきれないが、録画の画面でも興奮の度合いは変わることなく、僕をスリリングな世界へといざなう。1964年の東京オリンピックを思い起こさせるが、しかし遠く遥かな地で行われていることを忘れさせて、以前と比べるべくもない高画質のテレビ映像が、一層の臨場感を醸し出すのだ。
何もかも忘れさすようなスポーツ競技は、オリンピックという最高の舞台で花を咲かせて、ギャラリーを興奮や歓喜の極致に追い込む。
そういえば、今日8月15日は、終戦記念日であると同時に、僕の住む木更津市では花火大会の夜で、その遠雷のような音を聞きながらこれを書いている。障害を持つ息子が施設に入所してからは、花火を見ることもなくなくかすかな音を聞くだけになった。

 

 

訳者・峯岸久氏の後書きによれば、本書はペリイ・メイスンシリーズ28冊目の長編だと言うことだ。若い頃の一時期僕はこのシリーズ作品にはまって、かなりの数を読んだのだが、もちろんどれを読んでどれを読まなかったのかは正確に覚えてはいない。
とにかく逆転する法廷の場面に胸躍らせて、毎回カタルシスを感じていたものだった。
陪審員制度による裁判劇は日本の法制度とは異なり、よく分からないところもあるが、我が国でも同様の制度が取り入れられる時が来るのだろうか、などということを考えながらそのストーリーの奇抜さや面白さに酔っていた。
先だって、柚月裕子氏の作品のところで、多方面のジャンルの作品を書くことも、作家としての向上を目指すことになるだろうが、一つのジャンルをとことんつい詰める作家として、ガードナー氏を例に挙げたばかりだ。
そんなことで、また改めてその魅力に酔いしれてみようと、本書を読んだ。

 

 

の記憶はあまりあてにはならないが、従来読んできたペリイ・メイスンシリーズでは、概ねメイスン弁護士の強硬な、あるいは奇抜な捜査手法が、自らとその依頼人を窮地に追い詰めるという状況を生み出してきた。
処が本書ではメイスンが自分でそんな手法を替えて、依頼人が遭遇した殺人現場に赴かないと言っているのだ。普通ならば、依頼人がそうした状態に陥ったことを知れば、何をさておいても、現場に駆け付けるというのがペリイ・メイスン流だと思っていたが、そんな冒頭から少し驚く。
しばらくぶりに翻訳小説を手にして、しばらくぶりの法廷サスペンスの醍醐味を、味わいながらも欧米の作家の巧みなユーモアと、人情味を差し挟むタイミングの良さに、思わず唸らされる。
相変わらずの巧みな法廷戦術で、真犯人をあぶりだすようなメイスンの活躍は、若い頃夢中で読んだ頃のことまで思い出させる。

 

 

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