隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1211.少年被疑者

2011年12月17日 | リーガル
少年被疑者
読 了 日 2011/11/18
著  者 松木麗
出 版 社 学陽出版
形  態 単行本
ページ数 210
発 行 :日 1997/08/01
ISBN 4-313-85111-9

 

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はなんとなくこの作者が好きだった。もちろん作品の方だ。女性検事の物語をもっと書いてほしかった、と思うのは僕だけではないだろうが、検事の職よりも政治家の方への関心が強かったのだろうな。残念!
著者の作品を読むのは多分これが(本書)が最後になるだろう。作家デビュー作の横溝正史賞受賞作「恋文」は、ドラマの方を先に見て、好きな女優さん(池上季美子氏)が主演だったこともあって印象に残り、原作を読みたいと思いながら、なかなか古書店で見つけられなかったことがずいぶん昔のことのように感じられる。
言い古された言葉だが、月日の経つのは早い。歳をとるとあっという間の一年だ。あまり聞いたことのない出版社からの刊行である本書を見ていて、作家と出版社の関係はどうなっているのだろう、などという思いがわく。テレビドラマなどでは、出版社の編集者が作家の許へ原稿を依頼に訪れる場面がよく見られるのだが、実際もそうなのだろうか?

 

 

あまり馴染みのない出版社の名前に出会うと、ふとそんなことを考えてしまう。
さて本書はタイトルが示す通り、少年犯罪を描いたストーリーで、想像できる通りの展開を示し、なんらミステリーとしての仕掛けはないものの、どういう結末を迎えるのだろうという興味は最後まで続く。
その点だけをとらえたら、ちょっと物足りない感じもするのだが、全体を見れば読み応えのある人間ドラマが描かれて、重厚な作品となっている。多分、こうした物語は多くの読者を獲得する、ということにはつながらないだろうとは想像する。
題材そのものは決して地味だとは思えないが、今の世では残念ながら決して珍しいことではなくなってしまった少年犯罪は、次第に凶悪な事件も増えて、時代の動向だとは思いたくない、が・・・・・。

 

 

性検事の丹念な仕事ぶりと、真相究明にあきらめない調査が、周囲の思い込みとは少しずつ異なる状況を示していく様が検事への共感を抱かせる。しかし、巻末の著者のあとがきによれば、「恋文」で据えた女性弁護士の主人公と、著者自身が「重ね合わせて見られることに辟易した」とあるが、それは仕方のないことだろう。
著者に限らず小説の中の人物が著者の分身のように見られるのは世の常で、僕などは決して悪いことではないと思うのだが、感じ方は人それぞれなのだな。
ところで先に僕が疑問を呈した、出版社からの依頼で作家が書くのだろうか?ということについて、巻末で著者の記述があった。この作品は出版社からのたっての依頼で、その女性検事を主人公としたシリーズの第1作として書いたもののようだ。知る限りではその後シリーズの第2作以降が書かれたということはないみたいだ。2作、3作も読みたかったな、重ねて残念!

 

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