Simplex's Memo

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岐阜市は「路面電車」をどう議論してきたか?(その15・後編)

2005-12-03 13:03:35 | 鉄道(岐阜の路面電車と周辺情報)
前編では路面電車復活を巡る議論を中心に触れた。
今回は「路面電車」の枠を超えて、岐阜市が公共交通政策や岐阜市中心部の空洞化問題をどう考えているか、その議論を見ていくことにする。

<質問4>
 本市の公共交通は、バス事業が名鉄と市営バスが岐阜バスに譲渡され、全路線がすべて岐阜バス1社の営業となり、路面電車も3月31日で廃線された。
 当分の間、主要な交通手段としてバスが担うことになった。去る7月末に岐阜市総合交通政策方針案が発表され、岐阜市の将来の交通政策の概要が示された。その中で都市内交通については、幹線・支線バス及びコミュニティーバスが適切に組み合わされた複合的バスネットワークを構築し、市内交通を支え、公共交通の利便性の向上を図るなど、バスの運用が中心となっている。
 特に新しい政策としては、現行のバス路線ではカバーできない市街地周辺や郊外の交通空白地帯においてコミュニティーバス運行の政策が位置づけられており、来年度にも試行導入がされるようである。コミュニティーバスについては、既に武蔵野市では中心市街地において平成7年11月から全国に先駆けて「ムーバス」の運行が開始され、料金は100円で高齢者と主婦を主体に利用され、高い評価を得ているようである。
 また、金沢市でも中心市街地において平成11年3月から、料金は同様に100円で「ふらっとバス」の運行がされており、主婦や高齢者の買い物、通院、娯楽などに利用され、好評を得ているようである。
 近隣市町においても来年1月に合併が予定されている柳津町では無料の公共施設循環バスが運行され、ほかに山県市、本巣市、各務原市、笠松町など多くの市町でもコミュニティーバスが既に運行されている。
 コミュニティーバスの運行は、地域住民の利便性と福祉向上の観点から、その必要性を議会において何度も提言し導入を待ち望んでいたところであるが、他都市のコミュニティーバス運行の状況を見ると、利用者による運賃収入で運行経費を賄うことは大変厳しく、行政の負担が避けられない状況である。
 本市の運行についてもこのような事態が想定されるので、運行の仕組みや利用者負担のあり方などを十分に検討の上、ぜひとも試行導入に向けての準備、努力をしていただくよう期待する。
 そこで、市長にお尋ねする。コミュニティーバス導入については、各コミュニティセンターで開かれた1日市民交通会議などでも公共交通の利用促進や、お年寄りの買い物、通院など、運転免許証を持てない方々の日常生活における交通手段を確保するため、多くの意見、提言が出されており、市民要望は大変高いと考えているが、運行に際しては税の負担も避けられない事態も想定される。その導入に向けての市長の所見をお尋ねする。
 また、市長公室長には、以下の3点についてお尋ねする。
 1点目は、試行導入に向けての今後のスケジュールはどのようになっているか。
 2点目は、政策方針案の公共交通ネットワークイメージ図の中では4カ所のモデル導入地域が想定されているようだが、具体的にどの地域を予定されているのか。
 3点目は、本市の導入地域に隣接し、既に運行されている市町との共同運行について考えているのか。

<市長答弁4>
先般、岐阜市総合交通政策方針案を公表したが、岐阜市の公共交通については、既存の路線バスを再編した幹線・支線バス網と、これから新たに導入を考えているコミュニティーバスが適切に組み合わされたバスネットワーク、バスのネットワークを構築して公共交通の利便性や利用環境の向上を図ることが必要であると考えておいる。
 一方で、コミュニティーバスは他都市の例を見ると、経営状況はいずれも厳しく、指摘のように運賃収入のみで運行経費を賄うことができず、財政的負担を実施しているというのが実態である。
 こうしたことからコミュニティーバスの運行に際しては、その利用者また地域の住民、企業、そして、行政のそれぞれが役割と責任を持って対応していくという新しい岐阜モデルの仕組みを構築しまして、運行経費の削減と利用促進を図って財政的負担を極力少なくしていくことが肝要であると考えている。
 試行導入に際しては、こうした運行に係る新しい仕組みづくりや利用促進活動のあり方など、コミュニティーバスの運行全般にわたる問題や課題への対応について、県など関係機関とも密接に連携を図り、解決に向けて行政と地域が一体となって取り組み、本格的導入に向けて検証の場としたいと考えている。

<岐阜市答弁4>
 第1点目の、今後のスケジュールについて、試行導入を予定している地区では、年度内をめどに地域住民と行政による勉強会の中で、運行主体や運行ルート等の基本的事項について検討するなど、試行導入に向けて準備を進めていきたいと考えている。
 コミュニティーバスについては、このような課題等の整理を行った上で、来年度には試行導入を行いたいと考えている。
 2点目の、試行導入の候補地区については、客観的に判断をするために、ある程度の人口集積が見られること、高齢化率や主婦比率が高いなど、一定のバス利用のポテンシャルが存在し、幹線や支線のバスサービスがない地区、また、コミバス導入に対する地域の関心が非常に高い地区や、公共施設、病院など、生活利便施設が多く立地する地区など、5つの項目を指標にして選定を行った。
 その結果、現時点では、市街地周辺地区においては、鉄道駅へのアクセス利便性向上と、公共、文化等の施設間相互の円滑な移動を可能とする、あるいは高齢化率、人口密度などが高く、鉄道駅や大型商業施設へのアクセス利便性を向上させる、あるいはバス路線を補完するといった観点で市橋地区、南部地区、日光地区の3地区を、そして、郊外の交通空白地域における幹線、支線へのアクセス機能の向上を図る観点では、北東部地区が試行導入候補地区としてふさわしいのではないかと考えており、試行導入に向け順次取り組みたいと考えている。
 最後に、3点目の、近隣市町との共同運行について、コミュニティーバス運行に当たっては、地域特性に応じ、利用者ニーズに即したルート設定や運行形態とすることにより新たな需要を喚起する必要がある。
 また、当然に経費の節減や運行の効率化を図る必要もある。こうしたことから広域連携を図ることは必要であると考えており、既に運行されている近隣市町のコミュニティーバスとの調整も念頭に置き、協議、検討したいと考えている。

<質問5>
 岐阜パルコの撤退、さきの新岐阜百貨店とあわせ、大変ショッキングな出来事であった。岐阜パルコは、若者たちのファッションのシンボル的な存在として親しまれ、長年利用されてきた商業施設であった。JR岐阜駅周辺整備は本市の都市戦略の要として、厳しい財政事情にもかかわらず、莫大な事業費を捻出して基盤を整備してきた都市空間である。
 そうした中、中核となる商業施設が次々と撤退するとはどういうことか。なるほど、JR岐阜駅から名古屋駅まで18分、利便性の向上はいや応なく皮肉にもJR名古屋駅を中心とした名古屋市への一極集中を促進し、一方、岐阜市周辺部に立地する郊外型の大型ショッピングセンターに客を奪われるなど、商圏の動態変化が著しく、多くの地方都市と同様、中心市街地の空洞化が見られる。
 また、先般の路面電車の撤退も歯どめをかけるにマイナス効果が生じているとも言える。資本主義経済下にあっては民間企業の盛衰はやむを得ないものの、将来を見据えた都市戦略の再構築が今こそ必要なときであると痛感する。
 職住混在型のまちづくりを目指すべきと考える。職の部分では、何よりも交通の結節点にあること、名古屋市への利便性のよさを逆手に生かして名古屋市の副都心の感覚で、サービス企業、知的産業の立地に駅周辺は十分ポテンシャルは高いものと思うところである。
 また、住の部分では、高齢者に重心を置いた都心居住のまちづくりを構築してはいかがだろうか。中心市街地ではショッピング、病院、娯楽施設、基本的なインフラは整っている。岐阜県民は俗に言われる小金持ちとも言われ、可処分所得を多くお持ちの方も大半が、これら高齢者の方々である。
 岐阜市郊外や近隣にお住まいの方々に都心居住への願望を結構お聞きする機会がある。団塊世代が近い将来に定年を迎えようとする状況下にあって、高齢者に魅力的な都市空間を形成するモデル都市を目指してはいかがだろう。そのためには都心空間に緑の再生、バリアフリー化、文化・芸術の振興などなど、ハード、ソフトにおけるまちづくりへの確固とした戦略が必要である。
 そこで、市長にお尋ねする。
 第1点目は、一連の大型商業施設の撤退についてどのように認識し、感じているか。
 第2点目は、中心市街地を整備する上で、ビジョン、方針と、統一して目指すべきイメージを持っているかどうか。

<市長答弁5>
 大型商業施設が相次いで撤退することはまことに残念であると思っている。
この背景として、やはり中心市街地が空洞化していること、また、名古屋へ顧客が流出しているというのが、まあ基本的な理由だと思われますが、一方、建築後約50年近くになって大変古い建物になってきているということ、あるいは名鉄岐阜駅周辺の、その土地柄が人や車がなかなか寄りつきにくいということもあって集客力の低下の要因になっているのではないかと考えている。
 ただし、この状態を悲観をするばかりではなくて、これを好機としてとらえて、当地区が何とかうまく再生されるように努力をしたいと考えているところである。その際には、当然、県のみならず、関係者の方々とも十分密接な連携をとりながら、県都岐阜市の玄関にふさわしいまちにしていきたいと思っている。
 最近、中心市街地全体の活性化の問題は、単に岐阜市だけの問題ではなくて多くの地方都市が直面をしている問題である。さまざまな課題があるが、多くの課題は共通であると思っている。課題は共通であるが、やっぱり答えはそれぞれ違うのではないか、全国一律ではないとも思っている。
 新しいこの将来に対する道を切り開くためには、持っている強みと弱みを十分認識をした上で、市民と企業と行政が力を合わせて心を一つにして対処をしていく必要があると思っているわけであり、いかなる労苦も惜しまないで、チャレンジをしていきたいと思っている。
 2つ目の、中心市街地の整備についてのビジョン、イメージについてどう考えているのかという質問について、中心市街地の整備方針は、都心居住の推進とにぎわいのある複合市街地の形成を掲げて施策の展開に当たっているところである。
 多くの方が中心市街地衰退の原因として、郊外型の大型ショッピングセンターというのが大きな問題だと指摘をされている。その背景として、過密になってきた、にぎわい、少しうるさくなってきた都心の中心部から、静かでゆったりとした、また、土地価格も安い郊外部へ人口が流出をしたと。また、その人口の流出を追っかけるように商業機能が外へ出ていったと。ある意味では自然な流れであったとも言えるのではないかと思う。
 しかし、自然の流れだから、やむを得ないというのではなく、都市の顔、岐阜市のアイデンティティーを保ち続けるためには、市民の新しいライフスタイルにまで及ぶ新たな提案であるとか、変革が必要であると思っている次第である。
 このような考えのもと、以前から歩いて暮らせるまちづくりやスローライフなど、歴史と自然に恵まれた本市のよさを生かした、ライフスタイルの変革を含めたまちづくりを提案をしてきた。
 指摘のあった知的産業の立地あるいは定年を迎えた団塊の世代が住みやすく、住みたくなるようなまち、また、そのための緑豊かなバリアフリー化された、さらに、文化・芸術活動の盛んなまちづくりという提案は、まさに我が意を得たりという気持ちである。
 現在、都市のアイデンティティーの確立と情報発信も含めた岐阜ブランド戦略を策定中であるが、その戦略やその他の施策展開の根本に議員の提案なども考えに織りまぜながら、本当に効果を生み出すことのできる中心市街地活性化戦略を構築したいと思っている。

<第4回定例会のまとめ>
岐阜から路面電車が消えて約半年後に開催された「路面電車」に関する議論を見ると、次のように分類できる。
○関市の「サン・ストラッセ」が中心になって進める路面電車復活計画に対する岐阜市の対応
○岐阜市が策定した「岐阜市総合交通政策方針」の具体化、特にコミュニティバスの運行に対する岐阜市の考え方
○新岐阜百貨店、岐阜パルコの撤退に象徴される岐阜市中心部の空洞化に関する対応

後二つの議論について、消えてしまった「路面電車」とは直接関係はない。
しかし、両者を全く関係ないとして切って捨てるのも無理がある。
廃止後の代替バスが鉄道時代より不便になっている(最近になって対応し始めているが)ことや、路面電車の廃止が「岐阜市中心部空洞化の象徴」として捉えられている事に注目する必要があるのではないだろうか。

一つ目については昨日の記事でも触れているが、岐阜市の姿勢は基本的には「傍観」を決め込んでいると見ている。
名鉄との交渉の席につけない「サン・ストラッセ」側の状況は、極めて苦しい。事業計画の根本となる名鉄からの資産譲渡額が得られないようでは「確度の高い事業計画」など作れる道理もない。
沿線自治体から同社の事業計画に対する意見書が出されているが、大前提が確定していない現状では事業計画の作りようもない。

二つ目、特にコミュニティーバスの費用負担で出てきた「新しい岐阜モデル」について、「コミュニティーバスの運行に際しては、その利用者また地域の住民、企業、そして、行政のそれぞれが役割と責任を持って対応していく」としているが、行政が費用負担に及び腰になっている事は10月29日の記事でも触れているが、市長答弁の半分は嘘を言っている事になる。
公共交通の末端を担うコミュニティーバスはどうしても、需要を喚起するため頻度を高く、そして運賃を抑えるためどうしても採算性が悪くなる。

そのような分野にあえて参入してくる民間事業者の数は少ないと思うのだが、にも関わらず岐阜市は運行事業者に補助はするものの、コミュニティーバスの運行主体への出資はしない事が明らかになっている。
事前にこの事を知っているだけに、今回の答弁を見てその「自意識過剰」ぶりに呆れてしまった。

三つ目、岐阜市中心部空洞化の問題については、新岐阜百貨店閉店、岐阜パルコ撤退は流石に岐阜市側も衝撃を受けたと思う。
しかし、具体的な施策はこれから検討する等、危機感を今ひとつ感じない。
名鉄岐阜駅の乗降者数が24年前の半分になっている事に象徴されているように、名鉄岐阜駅前周辺は必ずしも人の流れの「中心」ではなくなっている事実は統計等で岐阜市等、行政サイドは把握している。

その事実に目をつぶって旧態依然とした基盤整備を行ったのも疑問と言わざるを得ないし、状況の変化に応じた策は出て来ていない。
事実、答弁を見ていると「民と企業と行政が力を合わせて心を一つにして対処をしていく必要があると思っているわけであり、いかなる労苦も惜しまないで、チャレンジをしていきたい」とか、「都市のアイデンティティーの確立と情報発信も含めた岐阜ブランド戦略を策定中であるが、その戦略やその他の施策展開の根本に議員の提案なども考えに織りまぜながら、本当に効果を生み出すことのできる中心市街地活性化戦略を構築したい」としているが、部外者から見ると実が伴っていない。答弁を具体化した施策は何だ、と思う。

議事録を読んでいると、議員の質問の方に危機感を見て取る事が出来るのだが、行政の答弁に事業費や事業計画といった具体性が伴う部分は少なく、危機感はあるものの、何とかなるという精神論的な物を感じてしまうが、果たしてそれが「都市経営」にプラスと言えるのだろうか。


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