森岡 周のブログ

脳の講座や講演スケジュールなど・・・

学会雑感

2013年07月07日 08時10分24秒 | 日記
昨日は認知神経リハ学会にて、ATRの今水寛先生の講演の司会、ならびに対談を行いました。僕としては、最近のcerebellum-parietal cortexの運動学習における関係性に関する研究のアルゴリズムが知りたいと思い、後半にそれを聞くことができてとても勉強になりました。

2007年以降の論文を読んでも、結果、要約については理解できていたのですが、そのアルゴリズムならびに方法論が計算論的アプローチのため読解できていませんでした。その手続きを口頭で聞くことができとてもうれしかったです。その、これでもか、これでもかと行動の視点から統制していく手続きに関しては、研究者として本当に見習わなければならないと思いました。

いずれにしても、前頭ー頭頂ネットワークにおける認知段階の初期学習、頭頂連合野における連合段階の中期段階、そして小脳に内部モデルが形成された自動段階、これらの心理的概念が神経科学的手続きによって解明されつつあります。大脳ー小脳連関の重要性、ならびに、座標変換を考えながらの学習の質を問いかける治療が今後吟味されるべきでしょう。運動学習の手続きは、運動を出力させたり、感覚を入力するだけの単純な神経メカニズムではありません。

いろんなアプローチをしながら、結局はメソドロジー理論にしか生きられないのは問題です。今水先生との対談の最後に、彼からコネクティビティーを考えたオーダーメイドな治療を提供することがリハビリテーションである意見を聞けて、よかったです。これは司会の力でしょうか?笑。僕としては上頭頂小葉における予測的視点、下頭頂小葉における文脈的視点に今後の臨床展開可能性を感じ、そして側頭葉を含めたTPJのモデルと小脳のモデルの意味を考え、人間における高次な運動制御・学習(行為)を考えてみたいと思います。

後半の口述では信迫氏の成長を思い、もう私は超えられたと思い、今後は彼に仕事を少しずつ渡していこうと思います。臨床的示唆、飛躍的考察のなさ、研究手続き、そしてそれに関するサーベイ、さらには発表態度、質疑応答に対応する言動、これらのすべてがエレガントでした。

本日は若手・中堅研究者とのコラボのようです。疼痛では研究室の大住君が、運動イメージでは研究センターの信迫氏が、手の運動機能回復では院修了の大松さんが、そして発達障害では研究室の浅野氏と院修了の此上君が、それぞれ東大の住谷先生、ATRの雨宮先生、産総研の村田先生、上越教育大・さきがけの森口先生とよきディスカッションをすることでしょう。

学会は教育の場ではありません。そして概念を守る場でもありません。意見を出し合いながらよき方向に導き、今後えれを補完し合いながら、社会をよくしていくための媒体です。基礎研究者の知見をどのように応用するか、そしてそれを彼らにフィードバックし、どのような研究が今後必要か、解明すべき問題点を共有するところに意味があります。本当の意味でも学会を、私の遺伝子たちには期待しています。守破離も意識し、行動、言動に責任をもってちょうだい!

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