森岡 周のブログ

脳の講座や講演スケジュールなど・・・

本日の授業から。。。

2013年06月26日 17時18分57秒 | 脳講座

今日の午前中は、看護学科の授業でした.学生たちにはここ数回実験を通じて,感情の変化を脳科学から学習してもらいました.彼ら,彼女たちがあげてきた問題は,麻痺後の非利き手での道具操作時の脳活動,そして,音楽聴取による認知課題時の集中力,記憶容量というものでした

非利き手による道具操作時(書く,食べる)はmPFC,音楽聴取(快,不快)時の記憶課題ではACCが有意に働くという結果であり,集中力や快・不快,ならびに記憶数などのパフォーマンスバッテリーとともに,考察を求めました.人間における感情コントロールや矛盾という問題をこれを通じて理解してもらえればと思います.

さて来週からの最後の仕上げの授業は,高次脳機能障害,運動器疼痛,自閉症,認知症の実際の事例の感情変化から脳の問題,あるべきケアを考えてもらいます.これがレポートになります.

一方、午後は、神経理学療法学の講義でした。今日は協調運動の神経メカニズム、そして、それが破綻を来す協調運動障害について話しました。小脳における運動制御・学習メカニズムに関して、脊髄小脳、大脳小脳(橋小脳)、前庭小脳の役割について話し、そのシステム障害による姿勢制御、運動制御、眼球運動制御の障害の神経学的根拠を説明し、その後、遠心性コピー・フィードフォワード制御の概念、ならびに苔状線維、登上線維、プルキンエ細胞ー平行線維の役割から運動学習のメカニズムである長期抑圧について説明をしました。具体的には誤差学習であり、実際に標的に対するフリースローなんかを取り上げ、比喩を交えて、あるいはチョークをゴミ箱に投げ入れるなどの運動といった実演を交えて説明していきました。

その後、運動失調を運動開始時遅延、反復拮抗運動不能、測定障害、運動分解に構造を分解するとともに、小脳半球、中間部、虫部の核(室頂核、中位核、歯状核)の出力核としての役割から、それぞれのメカニズムについて説明しました。また、歩行障害を立脚期における姿勢コントロール、遊脚期における下肢プレイスメントを脊髄小脳、大脳小脳、あるいは半球(歯状核)、虫部(室頂核)の役割から、どのように捉えるかを解説し、歩行運動における姿勢コントロール、下肢コントロールの理解、そしてその評価手続きについて話しました。歩行能力低下は誰でも(療法士でなくとも)見つける事ができます。もちろん、それが安定性、安全性などからactivity limitationの問題となりうるかの判断・考え方を大前提にした上、さらには代償戦略をとるべきか、治療的戦略をとるべきか、その他の基本的情報も含めた様々なボトムアップ情報、あるいは自らの視点に誘導されたトップダウン情報、これらを包含し意思決定していくプロセスが理学療法プロセスとなるわけですが、それぞれに存在する特異的な病態から、もう1ランク上の解釈を加えていかなければなりません。例えば今回は、小脳障害における歩行障害(例えば、なぜ酩酊歩行と呼ばれ、なぜそれが起こっているのか)について、どのようにリーズニング(運動を分析)していくか、ということになるわけです。このリーズニングのためには、それ相応の構造と機能の理解が不可欠なわけです。この能力によって評価や治療の視点が変わるはず(多様的、多角的視点をもつ)です。

最終的には関節運動学的視点の「運動の自由度」から、協調運動を制御するシステムについて話しました。これらの理解の上で、運動における自由度問題、そして固定ー運動の関係性を理解してもらいます。それらの理解のもと、自由度問題(脳における標的に対する視覚的運動制御)から、フレンケル体操、弾性緊迫帯、重錘負荷などを古典的な手技を考えてもらいたいと思います。手技ありきではありません。なぜそれが用いられてきたか、そして、どのように応用・更新すれば、さらによりよい治療となりうるのか、そして適応と限界から、限界の場合、何を代償として利用するかを考えてもらいたいと思います。。が、時間がありません。後半の部分は、後期の技術実習に入るのか。。けれども、私の科目ではないのです。。笑。

いずれにしても科目の再編成は必要な時期だと僕は思っています。
上手くいっている、これこそ、問題なのかもしれなせん。学内教育ー臨床実習の関係が上手くいって自動化されているシステムであれば、臨床のパラダイム変換が起こるはずがないわけですから。そこにが誤差が必要なわけです。


さてさて、細かい事をいうと、私の専門は「姿勢バランス」「知覚運動学習」です。学位もそれに関するものです。フラミンゴの重心動揺の測定を20代のときには試みようとしていたわけですから。脳の科学はそれを説明するものになります。しかし、現在はそれから枝が何十も、何重もになっている状態です。もっぱら、人間とは?あるいは人間がつくりあげる社会、あるいは社会のなかの人間とは?ということを考えていること、これが私のライフワークになっています。

だから、今学生に教えていること、この難易度は譲れないわけです。簡単にメタファーでさらっと説明する事は可能ですが、それもできるだけしたくはないのです。

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