goo blog サービス終了のお知らせ 

Sofia and Freya @goo

イギリス映画&ドラマ、英語と異文化、昔いたファッション業界のことなど雑多なほぼ日記

追想

2018-08-01 22:05:00 | その他の映画・ドラマ・舞台


試写会にご招待いただけ、その日が自分の誕生日だったので夫を誘って観て参りました。

夫に英語タイトルを伝えたら、「イアン・マキューアン原作なんだ」という反応だったのでちょっと意外、なぜなら彼はほとんど本を読まないから。でもそんな文学に縁のない人でも英語圏ならば知っているくらい有名ということですね。

それにしても、これは結婚初夜にて何らかの理由で離婚してしまった夫婦の話、誕生日の夜にわざわざ夫婦でこれを見て、結婚の危機が訪れないとも限らない・・・とも予測されたのですが、見てみて、そんな単純な話じゃないのがマキューアンだった、と思い出しました。(と言っても私が知ってる話は「つぐない」「時間のなかの子供」「憂鬱な10ヶ月(の途中まで)」だけですが)悲劇とハッピーエンドのようなものが混ざっていて、それはそのまんま人の一生のような。

ということで夫婦で見るには結構正解の映画だったのです!少なくても、私には。

さて、ここからネタバレも含むので、回避されたい方はストップストーーーップ!!!





全国ロードショーは8/10、見てからね。





夫の方は「クリケットがいっぱい出てきて良かった」とか言い出しましたけど(彼はチームに入ってるので)見終わったあとには二人でよくわからなかったシーン、好きなキャラクター、出ていた俳優、住んでたロンドンや旅行で行ったChesil Beachの近くの海やレストランの話で盛り上がりました。デートに正解!

ところで私はシアーシャ・ローナンは「つぐない」以来のファンで、あの時はまだ13歳の役で、聡明だけれど大人ではないゆえの危なさ、清潔感を絵に描いたようなキャラで性との相容れなさを演じきっていました。

それが10年経ったこの「追想」でも繰り返されていて、綺麗な女優さんは星の数ほどいるのに、この不可侵感を醸し出せるのはシアーシャしかいない!と改めて思いました。とは言え「ブルックリン」ではちゃんと性を受け入れる若い女性も演じられてるんですよね。

そしてシアーシャの役フローレンスの恋人から夫へとなるエドワード役はビリー・ハウル。なんだかもっさりとしているような・・・と感じたのも、キャスティングの話を公式ホームページを読んで納得、もっとすでに売れてる若い俳優だと、どうしてもセクシーなオーラが出てしまい、結婚初夜に失敗する男が演じられないのだそうです。そっかー、ティモシーくんなんかがやったら違う話になっちゃうよねー

で、結婚は1962年で、愛し合っていてもふたりとも真面目なせいで性には不器用、うまくいかないことをフローレンスはフォローしようとして、自分にはセックスは合わないけど結婚は続けて幸せな家庭を作るので、もしどうしてもセックスしたくなったら他の女性としてほしいと提案しますがエドワードは屈辱に感じて怒り狂ってしまい、そのままふたりは背中合わせに遠ざかって別れてしまうのです。

どうなるのかと思ってるとこの話はなんと1975年に飛ぶのです。ヒッピーとなりレコード店を経営してるらしいエドワードのところに、フローレンスの娘らしき少女がレコードを買いに来たのでした。つまりフローレンは結婚して子供も生んだと。方やエドワードはヒッピーだから女の子にも囲まれ自由な暮らしをしているけど独身のよう。

さらにまた時間は飛んで2007年。それは原作小説が書かれた時の現在へとつながるのです。フローレンスはエドワードと結婚した時からの夢だったカルテット楽団で成功していて、エドワードの恋敵だった楽団の男の子と結婚していました。そして子供も孫も大勢います。そしてエドワードと夜の誰もいない時に忍び込んだコンサートホールで、その楽団が引退公演をするとラジオでエドワードが知ることとなります。その時もエドワードは独身のようです。

コンサートホールのステージと客席で45年ぶりの再会・・・ほとんどタイムトラベル。

性を拒んだように見えたフローレンスがちゃっかり子沢山で、そんな彼女を責めたエドワードが生涯独身・・・というのが、人生は、ものごとは時間をかけないと本当のことが見えないのかもと語りかけてきたようです。

と、大きなストーリーは大真面目ですが、二人の家族がユニークで愛すべき人たちで映画のいいスパイスやバニラエッセンスになっています。フローレンスの両親はエミリー・ワトソンとサミュエル・ウエストですよ!エドワードのお母さんはアンヌ・マリー・ダフ、双子の妹がとってもいい味を出してます!でお父さんはただの人と思わせて、息子の恋人にほぼ初対面で息子に「結婚しろ」と言うんですから普通じゃないです。

シアーシャは、また10年後にマキューアンの映画に出るかも(冗談)と言ってますが、これからどんな役をどんな風に演じるのかとっても楽しみ、というか予測がつきません。とりあえずはスコットランド女王マリーが次作でしょうか。エリザベス女王はマーゴット・ロビーですから対比が面白そう!

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (hedgehog)
2018-08-16 21:17:33
しましまさん

「追想」、観てきました! マキューアンの原作は日本語訳が出た途端に図書館で借りて読んだのに、話はあらかた忘れていて新鮮なこと新鮮なことw

>そんな文学に縁のない人でも英語圏ならば知っているくらい

新刊が出るたびメディアで大きく取り上げられる人気作家ですが、英語圏なら、というより、イギリスでなら、に近いかな? 多分、アメリカではそんなに人気は高くない気がします。日本では「待っていればそのうち日本語訳が出る、稀少なイギリス人作家の一人」かと。

>すでに売れてる若い俳優だと、どうしてもセクシーなオーラが出てしまい、結婚初夜に失敗する男が演じられない

確かに、おかげであのシーンは素晴らしい説得力でしたw

>性を拒んだように見えたフローレンスがちゃっかり子沢山で、そんな彼女を責めたエドワードが生涯独身・・・

すごい皮肉ですよねえ。あと気になったのが、ワーキングクラスのエドワードとは理解し合えなかったのに、結局同じ階級の男性とはうまくいった、ってこと。きっつい皮肉だなあと思いました。

にしても、この映画をご夫婦で観てご夫婦で語り合えるしましまさんの人生は素敵! Chesil Beachの近くにも実際に行かれたことがあるなんてさすがです!!
返信する
Unknown (しましま)
2018-08-16 22:08:10
hedgehogさん

本当は、1枚の当選はがきで2名試写会に入場できるので
お誘いしたかったんですけどご旅行中の日程だったので
仕方なく夫を誘いました。

>>多分、アメリカではそんなに人気は高くない

そうなんですね、やはり英語の世界は広くても色々ですね。
内面世界でジワジワ展開されるような話なので島国根性に合う?

>>ワーキングクラスのエドワードとは理解し合えなかったのに、結局同じ階級の男性とはうまくいった

あ、そうでしたね〜!フローレンスの両親も結構エキセントリックというか
結構きつくていじわるだったし、チェロの結婚相手もかなり変わってましたし、
中産階級の人ってあまり感情がないような振る舞いをしてましたね。
方やエドワードの家族はまあお母さんは例外としても、いやそのお母さんが
いるからなのかお父さんと妹たちがまあ人の良さがにじみ出ていて・・・
中産階級ももちろん感情はあるのだけど、知性理性のバリアがあるというのか。
バリアを持つもの同士だとお互いの本心を自然にみぬけるのでしょうかね。
興味深いテーマです。

いえ、私と夫もロンドン時代には一緒にイングランドの地方やヨーロッパに少し出かけたのですけど
日本では私が田舎に興味がないのでもうすっかり距離のある夫婦です。
返信する

コメントを投稿