Sofia and Freya @goo

イギリス映画&ドラマ、英語と異文化(国際結婚の家族の話)、昔いたファッション業界のことなど雑多なほぼ日記

「パレードへようこそ」感想

2015-04-10 17:56:00 | その他の映画・ドラマ・舞台


「パレードへようこそ」。原題は「PRIDE」がなぜ?と思った方、私もです。

調べてみたら、PRIDEとはゲイ・パレードのことで、意味はマイノリティの自己やコミュニティの肯定です。日本語にもなっているのですが、おそらく知らない人も多いであろうとこの邦題になったのではないでしょうか。原題も取り込み、しかも「ようこそ」をつけて誰でもウェルカムな空気を出しいい邦題ですね。私は好きです。

そのパレードで始まり1年後の同じパレードで終わるこの映画は、「フル・モンティ」「リトル・ダンサー」「ブラス!」と同じ『80年代サッチャーと炭坑ストの闘い』+ゲイ&レズビアンの市民権運動のお話です。実話に基づいています。

80年代ロンドンの町が出て来ると知った時から「見る!」と心に決めて、ついに見て、期待どおりに好きでした!いや、郷愁や萌えだけでなく、現在進行形のメッセージも受け取れたので期待以上でした


<萌え①80年代ロンドンカルチャー>

LGSM(レズビアン&ゲイ・サポーティング・マイナーズ)のメンバーはロンドンの若者達。昔から「ゲイはファッショナブル」と言いますが、映画に出て来るゲイ・クラブのボンデージ・ファッションのような極端なものから、リーダーのマークみたいなマッチョだけどパーティーの時には揺れる大きなイヤリングもする独特のゲイ・ファッションもあり、ボーイ・ジョージみたいな仮装もあり、それはオシャレと言うより独自の世界。

しかし普通の誰が見てもおしゃれなのはカップルでLGSMに参加していた刈り上げのこざっぱりした2人とか、ヒューマン・リーグみたいな前髪の、女子にモテモテのフレディー・フォックス(パレーズ・エンドのヴァレンタインの弟)演じるジェフですね。80年代前半、レコードジャケットや音楽雑誌の写真を見て、こういう男子がいるであろうロンドンは夢の国かと思ったけれど、それはイギリスの田舎の女子も同じであった!

そうそう、ドラマ「THE HOUR」でヘクターを演じてたドミニク・ウエストが演じるジョナサンのキャラがいい意味で派手なゲイの鏡でした。ドミニク好きじゃなかったんですが見直した!売れない俳優でルックスは???なのだけど、70年代ディスコダンスが上手くて、ウェールズの田舎の女性達も単純に楽しい彼とのダンスにはじけてしまいます。それを見てゲイに最大の警戒心を持っていた男達も、モテたい一心でゲイに心を開きダンスを教わる。

ねー!やはり女子とゲイは単純に楽しいことや奇麗な物が好きだという点が共通しているのです。

それは、ウィールズのおばちゃん達が、ロンドンのジョナサンとアンドリュー・スコット演じるゲシンのフラットに来た時にも、「壁紙はローラ・アシュレーよ?!」と盛り上がることにも表れてました。炭坑夫達にはデザイナーの壁紙なんて異次元の話題でしょうから、あの時、村のおばちゃんはゲイの若者に親近感を持ったでありましょう。


<辛かった時代>

アラン・チューリングの時代には同性愛そのものが犯罪でしたが、イングランドとウェールズは1967年に同性間の性交渉は合法化されました。しかし80年代にはエイズが現れ、当初「ゲイがかかる」「性交渉で移る伝染病」「死に至る恐ろしい病気」と一般に思われていて、実際に先進国ではゲイの著名人が何人も亡くなりゲイ・コミュニティを恐怖に落とし入れました。同時にエイズが原因のゲイへの差別もありました。映画でも後半に描かれています。現在はHIV感染しても発病しない治療法が開発されていますが、当時はまだ新しい病気だったので今なら死なずにすんだ人も亡くなったのです。

<メッセージ>

ゲイがエイズの恐怖と闘っていた時代だからこそ、親が厳しくてカムアウトできず、嘘をついてLGSM活動するジョーへのマークのメッセージが心に響きました。
「家を出ろよ。人生は短いんだ。」


<萌え②ロンドンロケ地>

まったく個人的なことですが、この映画に出て来る2つの場所が、2000年代に私が住んでいた家の近くでした!

Gay's the Word(66 Marchmont Street)というゲシンの本屋は、LGSMの本拠地で、その上がゲシンとジョナサンのフラットにもなっています。そこは地下鉄ラッセル・スクエア駅からも近く、静かで同時に明るい活気のある通りです。日本にも輸入されているAlaraというオーガニック食品ブランドのショップ&カフェも並びにあります。そこでは玄米おにぎりも売っていました(笑)。すぐ近くにスーパーも入った小さなショッピングセンターがあるので毎日のように行っていたエリアなのです。



もうひとつはRegency Cafe(17-19 Regency Street)です。ええ?!また?!と腰を抜かしそうになりました。このカフェはヴィクトリア駅のあるエリアで住所のRegency Streetともう1本の道Page Streetの角にあり、私が住んでいたのがPageStreetでした。既に、ダニエル・クレイグとベン・ウィショーの映画「レイヤーケーキ」に出ていて大興奮したのですが、これから放送予定のBBCドラマ「London Spy」の撮影中ショットにも出て来て2度びっくりしてたのに。そこのフラットは、家主が売ると言うのでやむなく引っ越ししたのですが、あの時に無理にでも買っておけばよかった~~!!!あのカフェは別にどうってことのない、賑わってるわけでもなく地元の人しか行かないカフェだったんですけど、その人気(ひとけ)のなさがロケに良いのかも知れませんね。今や映画ファンの名所となっているようです。




<Bread and Roses>

村の人が映画中で歌うストの歌のタイトルです。(ケン・ローチの映画のタイトルでもある)
英語のツイートで読んだことがあって、その時に意味がよくわからなかったので覚えていました。意味はBread=正当な賃金、Roses=尊厳と尊敬。サッチャーが炭坑労働者を国の利益の犠牲にしよおうとしたので、このふたつをスローガンにかかげ労働者は闘ったのですね。