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ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

不条理の雨

2021-02-25 11:23:05 | 
世界中にばらまかれる不条理の雨

男であれ、女であれ
戦争であれ、平和であれ
貧困であれ、豊かであれ
それは絶え間なく降り注ぐのだ
容赦なく降り注ぐのだ

もう止むことはない
永遠に止むことはない
「残念だけど諦めなさい」と誰かが美しく笑ってる

春先の街

2021-02-25 10:46:50 | 
眠りから覚めた太陽の光が
柔らかく力強く街を照らす
人々が新しい色に変わる

こんなに暖かな休日でも数十の人は自ら死を選ぶ
楽しそうな人たちもどこかで自分を殺してる

緩やかな風に揺れる綺麗な笑顔
この季節限りの幸福な別れ
坂道をゆっくり歩けば
花の蕾たちがその時を待っている

いつの間にか時は過ぎ
夕焼けが西の空を、春先の街を染めている
かつて明日を約束してくれた夕焼けが

閉幕

2021-02-24 18:20:07 | 
夢びとたちの白い息
陽光とぶつかり宝石になった

絶望を抱えたまま氷上に降りた天使
羽を広げ飛び立ち、力尽きて雪上に降りた伝説

彼らは風よりも速く
大樹よりも力強く
虹よりも儚く
クラシックよりも上等に
見たこともない世界へ自らを連れていく
短い生涯を大粒の汗で絞り、極限に凝縮された舞台で

時の風が夢を思い出に流していく
見守った人々の記憶もいつしか点にばらけて
しかしそれは彼らの心の夜を金色として照らす

まもなく聖火が消える
そして時の風が吹き始める

星々のレコード

2021-02-24 15:49:20 | 
17歳の地図をビリビリに破られ
それは僕のノンフィクション

街には真冬の恋人たち
夏をあきらめたのが昨日のようなのに
とはいえ、春の歌にはまだ遠く遠く
心にいくつもの難破船
錆びた港に帰りたい

家路に着いた頃に陽は紅
すでに部屋は翳りゆき
不貞腐れて寝転がり、ピースやハイライトでむせ返る

 星々の本棚

2021-02-24 13:47:12 | 

潮騒がこころを揺さぶる
西の空を見上げれば斜陽が眩しい
海辺にカフカはいなかった
カフカの繊細は腹立たしい
いれば、その背中を蹴ってやりたかった

限りなく透明に近い駅に滑り込んだ銀河鉄道に乗り込む
鉄道員の合図もそこそこに銀河は出発
メロスと並べて走らせたらどちらが速いか

トンネル抜けたら案の定、雪国だった
東京の雪と違って、さらさらして心地よい
童心に帰り、寒さも忘れた
いっそすべてを忘れたい

 
あの時のいのちも
それから、あの手紙も、あの巨塔も、あの運命の人も

ガリレオみたいに強くなれない
人間失格でいいじゃないか
カリスマも模倣犯も、人みな大河の一滴と言い聞かせ


卑屈が伸びてゆく

2021-02-24 11:42:39 | 
無意識に瞼を強く握りしめていた
初冬の太陽にさしたる力はない
それでも僕はしばらく目を強く閉じていた
もう何も見たくないのかもしれない

立派なものは、より立派に映り
輝いているものは、より輝いて映り
みすぼらしいものは自分に見えた
卑屈が高く高く伸びてゆく

生きていることが恥ずかしく
だから穴に入りたいのだが
コンクリートはそれを許してくれない

 羽のような、幻想のような

2021-02-24 09:50:44 | 
豪雨がおさまり、小降りになった
世渡りの傘は持ち合わせていないが
今この軒下を飛び出し、走って目的地に向かおうかと迷う
迷っているうちに、雨は再び激しさを増した

いつになったら踏み出せるのだろうと不安になる
不安の正体は雨ではない
自分の弱さであり
前に向けない気持ちであり
時間である

雨は止んだ
しかし、空全体は分厚い黒雲に覆われている
夕方になり、西に目を向ける
夕焼けがない事を確認し、俯く
そもそも、僕の残りの人生に太陽は存在するのだろうか?

けれども未来の天気は知りたくない
そこに太陽がなければ死にたくなる
羽のような、幻想のような希望
それを携えていたからこそ、これまで生きてこられた
この先の人生、どこかに太陽は存在するという希望

膨大な苦しみ、諦めの影で
少年のような、今日にすべてを捧げる情熱を
思いもよらぬところで抱きしめながら

ホームレスの雨

2021-02-23 18:37:15 | 
追いかけてくる夏にせかされて、雨は激しさを増していく
ここらあたりで落とされる雨粒は不幸だ
勢いの良いのは今のうちだけで、まもなくコンクリートの上で乾き死ぬ
照りつける真夏の子に殺される

泥土に落とされた雨粒は幸せを感じた
柔らかな感触に飛び込む喜び
やがて誕生する小さなオアシス
しかし、その場所も幸せではない
照りつける真夏の子に殺される
順番が遅くなるだけで、むしろ長く苦しんで死ぬのだ
一瞬の快楽と引き換えに

海に落とされた雨粒は幸せだ
真夏の子らと戯れながら、真夏の子に温められて
ホームレスの雨のことなど知らずに

遥かな光よ

2021-02-23 16:22:58 | 
いま夜を眩しく照らしている星たちの光は
遥か昔に発せられたものだという

あの星はゴッホ、目に鮮やかな光
あの星はモーツアルト、耳に優しく届く光
あの星はダザイ、失格の光

自らが放った、強烈な光に苦しむ者もいる
遥か昔に発した光に
永遠に抜け出せない、どす黒い暗闇の中で

孤独の、悲しみの、苦悩の、怒りの光たちよ
輝きを搾り出せ
未来を焼き尽くすほどに

 僕らは今日にしか死ねない

2021-02-23 16:12:09 | 

見知らぬ少女が死んだという
外国で戦渦に巻き込まれたのではなく
事件や事故でもなく
闘病生活を送っていたわけでもない
元気だった少女が突然、死んだという

不条理という言葉が浮かぶが、少し青くさい
もう長いこと生きてるんだから

僕らは他の生物との違いを見せつけるため
心の土地に思想や希望
それから理想や尊厳、努力、未来
さまざまな、美しいと感じる物を作り上げてきた
良かれと思い、作り上げてきたのだ
そして、その心の風景を眺め、うっとりしていた

しかし、こうして少女が突然、死んだ時
それらの建物が揺れだし、崩れそうになり、僕らは動揺を隠せなくなる

どうしたのだろうかと?
他の生物たちが、僕らを蔑むような目で見ている

「もう、いい加減分かれよ」と
僕らは明日に死ねない
みんな今日、死ぬんだ
3日後の今日、30年後の今日、50年後の今日

僕らが生命の一員である限り、死は特別なことじゃない
そんなことまで忘れていた。忘れようとしていた
心の埋め立てに夢中になって
そんなことまで忘れていた