ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

大人になるにつれ、かなしく(44)

2017-01-01 10:17:15 | Weblog
F大学病院のカウンセリング室で、僕はインスタントコーヒーを飲んでいた。今日の仕事が終わり、一日の中で最も、安堵するひと時でもあり、後悔の気持ちが強まる時間でもある。

5分ほど前にカウンセリングを終えたIさんは40代後半の男性。同性で自分より15、16年上の患者だった。Iさんから見れば、僕は「頼りない兄ちゃん」に見えていたかもしれない。自分に限らず、同性で年長相手のカウンセリングは難しい。しかし、こればかりは経験と時を積む以外に、方法はないと諦観している。背伸びしたところでどうしようもないのだ。Iさんのカウンセリングは今日で最後だった。「今までやってきたことはゼロになることはありません」。Iさんに限らず、僕が患者とのカウンセリングの終了の日に必ずかける言葉だ。

コーヒーをすすりながら、メールをチェックする。1時間ほど前に、有紗から送信されたメール内容に僕は半信半疑だった。「お仕事中、ごめんね。藤沢が意識を回復しました」。半信半疑だった。ぬか喜びにならぬよう、自らを抑制しつつ、鼓動は高鳴る。有紗が病院にいることを確認し、僕はすぐにK病院へ車を走らせた。

4人部屋の303号室は静まり返っていた。藤沢のベッドはカーテンで仕切られていた。僕は慌ただしく、カーテンを開けた。「孝志」と心で叫びながら。
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明けましておめでとうございます。去年は、大変お世話になりました。2016年はいろいろなものが、終り、崩壊した年だったと、後々、振り返られる転換点になると思っています。

「肉体を盗んだ魂」に続き「大人になるにつれ、かなしく」も多くの皆さんに読んでいただき、感謝しています。「大人になるにつれ、かなしく」もそろそろ終盤に差し掛かっているので、ペースアップして、出来るだけ正月休み中に終了させたいと考えています。あくまでも予定です(笑)

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