ところどころ間違っているようですが。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f0d506d9fe1bed022059486e37653505b7089bfb
第2波に備えるにはウイルスの正体を見極める必要があるが、目下のところ謎とされているのが、地域による新型コロナの致死率(感染者に占める死亡者の割合)の違いだ。日本などのアジア諸国と欧米諸国の致死率を比較すると、明らかにアジア諸国や中東諸国のほうが低いのだ。致死率の高さは特にヨーロッパ諸国で顕著で、フランスが約15%、英国とイタリアが約14%となっている。一方、アジア諸国を見ると、日本は約5・3%、韓国が約2・4%、中国が約5・6%だ。
こうした地域差はなぜ起きたのか。その謎を解くカギは、コロナウイルスの全遺伝情報(ゲノム)にあるのかもしれない。英ケンブリッジ大学の研究チームが世界で検出されたコロナウイルスのゲノムを解析したところ、遺伝子変異のパターンは3種類に大別されることがわかった。起源とされる中国雲南省のコウモリから見つかったウイルスに近いタイプと、武漢市を含む中国とその周辺国に多いタイプ、欧州を中心に広がったタイプだ。最初に中国の武漢で感染拡大したウイルスが変異をくり返しながらアジアで広がり、欧州で強毒化した可能性も考えられる。
今後、第2波、第3波でさらに感染力や毒性の強いウイルスが現れる恐れはあるのだろうか。ゲノム医療の世界的な第一人者である中村祐輔・シカゴ大学名誉教授に話を聞いた。
新型コロナウイルスはインフルエンザウイルスと同様に、遺伝情報をDNA(デオキシリボ核酸)ではなく、RNA(リボ核酸)の形で持つRNAウイルスだ。生物の細胞内に侵入すると、自己のRNAをどんどんコピーして増殖する。今回の新型コロナを含めRNAウイルスは、その変異の勢いが凄まじいという。
「日々、変化していると言っていいほど変異をくり返しています。例えば、私たちが4月下旬に確認したデータでも4600種類のウイルスの遺伝子配列が報告されていました。いまは、万単位の情報になっています。ただ、ウイルスが何種類あるかは分類の仕方でいろいろ異なる。もともとは3種類くらいに大きく分けられていました。そうした主だったものだけを見ても、アジアで広がったウイルスとヨーロッパで広がったウイルスは、遺伝子配列がかなり違います。ウイルスの遺伝子変異と強毒化の因果関係はわかっていませんが、少なくともヨーロッパとアジアの致死率の差を考えると、ウイルスの毒性が関係している可能性も想定しておく必要があります。顕著なのは米国で、東海岸はヨーロッパ型のウイルスが多いのですが、西海岸では比較的少なく、致死率にも差があります」
東海岸のニューヨーク州は感染者数約37万4672人のうち死者数は約2万9553人(致死率は7・9%)、ニュージャージー州は約15万7818人のうち約1万1341人(同7・2%)。一方、西海岸のカリフォルニア州は感染者数約10万1555人のうち死者数は約3955人(同3・9%)となっている。同じ米国内でも、東海岸と西海岸とでは致死率が2倍ほどの差になる。
日本もアジア全体から見ると致死率はやや高いという。その理由は、3月末にヨーロッパから日本への入国が制限される前に海外在住の日本人の多くが帰国したことで、ヨーロッパ型のウイルスが部分的に入ったことも考えられる。
「ただ、日本の医療レベルを考えると、5%という致死率は高すぎる。やはり軽症者にはPCR検査をしなかったため、公表されている感染者数が実態とかけ離れているのではないか」
現在、世界で感染者は600万人に及んでいるが、感染者が増えれば増えるほどウイルスの遺伝子変異は多くなる。その中でもっと強毒性のウイルスが出現する可能性もあるという。同時に、ウイルスに耐性ができて治療薬が効かなくなることも起こり得るという。
「抗がん剤の問題と一緒で、ある薬で治療するとその薬に弱いがん細胞は消えますが、抵抗性を持ったがん細胞は生き残って再発や増悪を起こします。ウイルスも体の中で様々なかたちに変化し、薬に対して強いウイルスが生き残っていくのです」
では、予防の「切り札」とされているワクチンはどうか。実はRNAタイプのウイルスである新型コロナは、そもそもワクチンの開発が難しい。
「RNAウイルスは一般的にワクチンができにくいという特徴があります。たとえばインフルエンザはシーズンごとに違うタイプが出てくるので抗体が有効ではなくなり、毎年、新しいワクチンを打つ必要があります。やはりRNAタイプのエボラ出血熱やエイズ、同じコロナウイルスによるSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)にもワクチンはありません」
例えば、肝炎ウイルスもB型肝炎は遺伝子がDNAタイプでワクチンがある。しかし、C型肝炎はRNAタイプでやはりワクチンがない。しかも、新型コロナは変異が著しく、仮にワクチンが開発されてもすぐに効かなくなるかもしれないというのも心配な点だ。
「抗体はウイルスのたんぱく質をターゲットにしますが、その性質が変わっていると反応できなくなることはあり得ます。いま、世界がワクチン開発に向けて協力しているので期待していますが、ウイルスの変化とワクチン開発のスピード競争になると思います。このウイルスがどのくらいの速さで変化していくのかということは大事な基盤となる情報ですから、遺伝子解析がきわめて重要になってくるのです」
ウイルスの遺伝情報の解析は急ぐべきと思われるのだが、日本では組織的な取り組みが十分になされていないと中村氏は問題視する。政府の専門家会議にもゲノム医療のスペシャリストは不在。この分野での研究を阻んでいるものは何か。
「感染者の血液などは国立感染症研究所(感染研)や保健所で厳格に管理されているので、国として大きな研究チームを組まない限り、多くの技術者たちにウイルスのサンプルは回りません。本来ならばウイルスの塩基配列をどんどん調べて、重症化した人と軽症で済んだ人に何の違いがあるのか、データにして今後の備えにしなければならないはずです。遺伝情報は感染ルートの分析にも役立ちます。私は感染研にウイルスのサンプルを一括して集め、すべて遺伝子解析するべきだと思います。その代わり、得られたデータは直ちに情報開示する必要がある。検査自体は簡単で、5万人分のウイルスの遺伝子解析が1日でできるような仕事なのに、いまだに行われません」
他にも、アジアで致死率が低い理由について調査すべき課題は山積している。アジアでは風邪のコロナウイルスやSARS、MERSなどの感染が広がり、それが今回の新型コロナにもある程度、免疫反応を起こしているのではないかという見方もある。だが、SARSやMERSの患者発生がなかった日本はこれには当てはまらない。
「ほかにも、人種や民族によって白血球の型が違うので、免疫反応も異なる可能性が考えられます。新型コロナが急激に重症化するのは、ウイルスに対する免疫反応が過剰に起こるサイトカインストームが原因ともいわれています。免疫反応が強すぎて、感染した細胞だけでなく正常な細胞まで傷つけてしまうのです。ですから、抗体やTリンパ球細胞を含めた免疫反応の分析も急がなければなりません。あらゆる情報が組み合わされば、重症化の因子が必ず見つかるはずです」
これまで日本の感染症対策は後手に回ってきた。中国からの観光客の入国禁止措置が遅れ、水際対策に失敗したことや、PCR検査数の少なさが海外からも批判されてきた。それにも関わらず、感染者が減少傾向にある現状に対して海外メディアは驚きの目を向けている。
米紙フォーリン・ポリシーは日本の新型コロナ対策について「何から何まで間違っているように思える」と指摘しながら、「不思議なことに、すべてがいい方向に向かっているように見える」と伝えている。オーストラリアの公共放送ABCの記事では、日本の成功について「不可解な謎」と表現。公共交通機関の混雑ぶりや高齢者人口の多さなど「大惨事を招くためのレシピのようだった」としている。
中村医師は第1波が収束に向かっていることについて「たまたまラッキーなだけ」と言い切る。
「確かに法的な強制力がない中での、国民の自粛レベルは驚異的だったと思います。しかし、日本は遺伝子研究が必要とされる医療分野の準備を怠ってきました。そのツケが、PCR検査の立ち遅れにつながっているのです。『過ちて改めざる、これを過ちという』の典型が日本の感染症対策なのです。もし、ヨーロッパ型のウイルスが本格的に入ってきたら、現状では済まないでしょう。100年前のスペイン風邪は第2波のほうが病原性は強まり、世界中で多くの死者を出しました。第1波が広がったなかで多くの変異を遂げたからです。現在より毒性の強いウイルスが生まれてくれば、間違いなくもっと悲惨な状況になるのです。第2波が迫ってくるまでの間に、PCR検査やウイルスの遺伝子解析のためのインフラ整備をするべきです。いま、その準備ができる数少ないチャンスなのです」
さらに強毒化した第2波が世界を襲った時、日本ははたして持ちこたえられるのだろうか――。
コメントから
確かに中村教授は、ゲノム医療では有名だが、ウイルス学者ではないので、感染症に対する知識は乏しい。「やはりRNAタイプのエボラ出血熱やエイズ、同じコロナウイルスによるSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)にもワクチンはありません」は、間違い。エボラ出血熱には、Merck社のERVEBO (Ebola Zaire Vaccine, Live)が、昨年、FDA及びEMAから承認されている。
中村先生は自己増殖能力がある細菌やガン細胞と宿主の細胞を利用しないと増殖できないウイルスとを混同しています。薬剤選択性は自己増殖可能なら問題になり薬剤耐性となるのですが、ウイルスには必ずしも当てはまりません。インフルエンザのタミフル耐性ウイルスも臨床的には問題になりませんでした。インフルエンザの耐性ウイルスを誘導するゾフルーザも実臨床では耐性ウイルスも薬剤は有効で強毒化しませんでした。
殊更社会不安を煽るだけの記事は好ましくないと思います。
間違った情報の流布は、止めてもらいたい。