思いつくまま

みどりごを殺す「正義」はありや?
パレスチナ占領に反対します--住民を犠牲にして強盗の安全を守る道理がどこにあろう

ヤスン:野生のハト(Yawa Kepter、Wild Pigeon、野鴿子)(2)

2009-11-11 12:08:06 | 中国異論派選訳
 「坊や起きなさい、どうしたの?」僕が目を開けると、母さんが僕を見つめていた。ああ神様、僕はまだ生きてる! 足に触ってみても何の傷もなかった。
 「悪い夢を見ていたのね」母さんは言った。「すごく怖い夢を見たんだ」僕は母さんに抱きついて、夢の中の出来事を話した。
 「坊や、お前は子孫の運命を夢で見たんだよ。人類はだんだんと私たちの住む場所に迫ってきているんだよ。そして私たちを昔から住んでいる領土から追い出そうとしているんだ。人類は私たちの領土を奪おうとしているんだよ。彼らは私たちが受け継いできた性質を変えようとしているのよ。私たちから知恵ときずなを奪い、自分たちの同胞のことさえ分からなくさせようとしているのよ。もしかしたら、近い将来ここに高層ビルや工場がたくさんできるかもしれない。そうなったら、私たちに必要のない工業製品を作るために排出されるばい煙で、私たちの土地と水が汚染されるでしょう。今のようなきれいな川の流れはなくなり、工場の排水で黒く汚れた水が流れるようになるでしょう。人類の侵略はとても怖いのよ。坊や、今はまだ分からないでしょうが、今のようなきれいな環境は、私たちの子孫は見ることができなくなるの。彼らは生まれた時からそういうものだと思って、人類の罠にはめられるでしょう。人類はだんだんと私たちを排除するの。彼らはもうすぐそこに迫っているわ。もうすぐ食い止めることができなくなるでしょう。誰もこの運命から私たちを守ってくれないから、自分たちで守らなければならないの。外に出ましょう。あなたのお父さんのことを話す時が来たわ」。
 母さんは僕を連れて外に歩み出た。僕の家の周囲は全て野の花と緑の草に覆われ、道は全くなく、足跡もない。ここは見渡す限り果てしない草原だ。僕たちの家は川岸の崖にある。ここでは数千羽のハトが巣を作って子孫を育てている。崖の下に流れる清らかな川の水は、僕たちに優しい子守唄を奏でてくれる。僕にとってここは世界で最も美しく、また最も安全な領土だ。もし人類がいなければ、僕たちは永遠にこの幸せな場所で生活できるだろう。ああ、人類というのは全く……

父さんはどうして彼らの手に落ちたのか?

 「ここがお前の領土よ。ここはお前の祖先が生活してきたところよ。お前のお爺さんとお父さんはこの土地を一段と美しくしたわ。彼らはかつてここに住むハトのグループのリーダーだったのよ。だから私たちはハト仲間の中で信望を集めているのよ。私たちの責任はとても重いの。お父さんのような勇敢な人になってね。私は毎朝早起きして、お前をつれて数百キロも遠くまで飛んで、お前の翼と筋肉を鍛え、知恵と警戒心を育ててきました。お前の体は今はもう成熟したから、これからはもっと知恵を成熟させて、人間に備える必要があるわ。人は地面の上しか動けないから、私たちに害は加えられないなんて考えちゃだめよ。彼らは銃を持っていて、お前を数千メートルの上空から打ち落とすこともできるのよ。お前はお父さんが何で亡くなったか知ってる?」
 「知らない。前に聞いた時母さんは、まだそのときじゃないと言って、話してくれなかったよ」。
 「今がその時よ。何日か前、何人かの人間がここを偵察していたのよ。つまり、私たちに目をつけたの。だから彼らが来る前に、私たちはもっと安全なところを見つけなくちゃならないの。お前のお父さんも彼らに殺されたのよ」。
 「母さん、父さんがどうやって彼らの手に落ちたのか教えて」。
母さんは考え込んだ、心を痛めていたんだと思う。
 「その日、お前のお父さんはグループを引き連れて私たちのために食べ物を探しに行ったの。いつもは安全で食料の多い所に行くのよ。お前のお父さんは強くて責任感の強いリーダーだから、場所探しの任務は彼の肩にかかっていたの。その時、お父さんは出発してから何日も戻ってこなかったから、とても心配だったわ。いつもなら、もし半日かかる場所に豊かなえさ場を見つけたら、そこに引っ越すの。お父さんが遠くまで探しに行くなんてありえないの。私は彼に何かあったと感じたわ。その時、お前とお前のきょうだいは生まれたばかりだったから私はお前たちを置いてお父さんを探しに行くことはできなかったの。何ヶ月か経って、お父さんと一緒に出かけたハトが一羽戻ってきたの。彼からお前のお父さんが人が仕掛けた罠にかかったということを聞かされたの。その後、生き残った彼の仲間は次々にみんな帰ってきたけど、お前のお父さんは帰ってこなかったわ。」
 僕は母さんが泣き出すかと思ったけど、母さんの目からは勇敢な光が射していた。
 「父さんは何で戻ってこれなかったの?」僕はせきこんで聞いた。
 「お前のお父さんはハトの王様だから、王族の精神を持っているのよ。自分を守れないで、他のハトを守れるわけがないでしょ? 王が人の奴隷になったら、もう一度ハトのリーダーになれるわけがないでしょ? 彼のただ一つの道は、人の奴隷になることを絶対に拒否することなの。お父さんは人に捕まってハト小屋に入れられたとき、野生のハトの王家の慣習に従って、お父さんは舌を噛み切ったの。彼はハト小屋に一秒でも閉じ込められるのが許せなかったの。ハト小屋は彼の鮮血で赤く染まったわ。お父さんは人が与える水と食物を食べず、一週間生き続け、最後に彼らの手の中で勇ましく死んだのよ。これこそ本当の自由の精神よ。坊や、お前もお父さんと同じように、永遠に自由の守護者になりなさい。」
 「母さん、父さんはなぜ他のハトみたいに、逃げ帰ることができなかったの?」
 「お父さんは自分の子供が奴隷になるのが嫌だったのよ。彼らはお前のお父さんを捕まえて、お父さんと別の飼いならされたハトを交配させようとしたの。だけど、お父さんは絶対に自分の子孫を奴隷の環境に置きたくはなかったの。それは彼の良心が許さなかった。お前が夢に見たハト達は自分の子孫を奴隷にすることによって、生き延びられたハトの子孫よ。坊や、彼らの魂は奴隷化され、いまでも人の手の中で生活しているの。死はそんな不名誉な生より何千倍も尊いわ。お前は勇敢なハトの子孫だから、永遠にその精神を忘れちゃいけないよ。」
 母さんの話は、長い間僕の魂を揺さぶり続けた。僕は勇敢なハトの子であることに限りない喜びを感じた。僕はとても誇らしく幸福な気持ちが心の底から湧きあがるのを感じた。僕の心には力と誇りがみなぎった。僕は心の中の愛情全部できつく母さんを抱きしめた。
 「行きなさい、坊や。私はお前を祖国とハトの群れに捧げました。ハトの群れにはリーダーが必要です。最近、人はいろいろな方法で私たちを捕まえています。お前は、もっと安全な場所を探しに行きなさい。さようなら、私の坊や。」
 僕の翼は母さんの涙でぬれた。僕の夢は出征の暗示だったということが分かった。だがそれは僕が人の罠にかかることは決して意味しない。僕ははるか遠くまで飛んだ。最初のうちは、川に沿って飛び、後からは人の住宅地に入った。これは僕の夢に現れた住宅地ではなかった。そして、夢の中のように恐ろしくもなかった。たとえそうでも、僕は注意深く、高いところを飛んだ。僕の翼は十分な力がある。僕の耳に聞こえるのは、人の話し声ではなく、風の音だった。飛んでいる間、目印からあまり遠くへは行けない。あまり遠くなりすぎると、僕たちの引っ越しがうまくいかなくなる。実のところ、僕は母さんの引っ越し計画にはあまり賛成できない。僕らの領地はとても高い崖にあるから、人どころか猛禽類さえも降りてこれない。僕たちはそこで何世代にもわたって楽しく暮らしてきた。なぜ引っ越さなきゃいけないんだろう。人類は僕らが思っているほど強くないかもしれない。いま人の領土の上を飛んでも、なんの危険も感じない。母さんは心配し過ぎじゃないだろうか?
 空はだんだん暗くなって、周りの物すべてが暗闇に消えて行った。丸一日飛び回って、僕は少し疲れた。僕は人のいるところに降りようと思っていなかった。夜間飛行は方向を見失いやすいので、休まないわけにはいかない。僕はもう西側、北側、南側を見て回ったが、まだ僕らの生活に向いた土地は見つからない。もしかしたら高く飛びすぎたのかもしれないから、明日東側を少し低く飛んでみようと思った。星が夜空に瞬いていた。この美しい世界で、こんなに恐ろしい生活を送るとは、なんと愚かしいことだろう。僕はゆっくりと降りてゆき、一本の木に止まった。明日はどんな風景の中で目覚めるのだろう?
 美しい声で、僕は甘い夢から覚めた。疲れのために、僕はとてもよく眠れた。一群のハトが僕の周りを飛んでいた。その翼の下から心地よい声が聞こえてきた。僕は驚いた。ここのハトは僕とそっくりだ。見ると、彼らは僕の夢に出てきたハトにも少し似ているが、よく見るとあまり似ていない。昨日は一日飛び続けて、何も食べていないので、すごくお腹がすいている。彼らに、このあたりに安全に食物を探せるところはないかと聞こうと思った。すると、彼らは突然方向を変えて、住宅地の外に飛び去っていった。僕も彼らの後を追った。
 「君たちどこへ行くの?」僕は遅れたハトに聞いた。
 「水車小屋に行くんだ。」
 「そこで何するの?」
 「餌を探すんだ」
 「君達が食べるものを探すの?」
 まるで怪物を見るような眼で睨まれた。
 「君は野生のハトなのかい?」
 「そうだよ、僕はイチゴの原から来たんだ。」

再び捕まる

 僕は彼らについて水車小屋に着いた。そこには本当にたくさんの小麦が麦藁に覆われて蓄えてあった。とても美味しい。僕はここは人は影さえも見えないから、なかなかいい場所だと思った。他のハト達の無警戒な様子を見て、僕も安心して大胆に食べ始めた。外の世界は、決して母さんが言うように危険ばかりじゃないな。僕は無警戒に目の前にあった大粒の麦に首を伸ばした。すると突然、すさまじい力で首をつかまれた。僕は矢のようにそれから逃れようとしたが、僕はつながれていて、わけのわからない力で引き戻された。僕は隠れようとしたが駄目だった。僕はのたうち回った。ハト達は「バタバタ」と一斉に飛び立った。ついに僕は力尽きて倒れた。これは僕が夢に見た光景とよく似ている。人の手に落ちてしまったのだろうかと思った。だが、この近くに人はいなかった。どれぐらい時間が経ったか分からないが、突然二人の人が現れた。ああ、人に捕まったのか、と僕はひとりごとを言った。彼らは僕の首の枷を緩めた。
 「野生のハトだ」若い方が言った。
 「気をつけろ、逃がすな。ハトの翼を縛れ。」彼らは一緒に僕の翼を縛って、僕の首を持って、僕の目を調べ始めた。
 「おお、いい品種だ。運がいいや。」年上の方が僕を手に取り、じろじろ見た。「このハトは俺たちには何の役にも立たないから放そう。みろ、こいつもう舌を噛み切っている。こういうハトはどうしようもないから、放すしかないんだ。普通はリーダーバトじゃなきゃこういうことはしない。」
 「一回ぐらい繁殖できないかな。」
 「こいつは餌を食べないし、水も飲まないだろう。死ぬまで反抗し続けるさ。」
 若い方が言った「みすみす逃がしちゃうわけにもいかないでしょ?」
 「勝手にしろ。だけどすぐに俺の話が本当だってわかるさ。俺も前にこういうハトを捕まえたことがある。初めはもったいなくて放さなかったが、一週間でそいつは死んでしまった。」
 「すぐに飼いならしてみせるよ。」若い方は自信たっぷりに言った。
 僕は絶対飼いならされないで、何とかして逃げてやると思った。母さんの話をちゃんと聞かなかったからこんな目に遭ったので、僕はとても恥ずかしかった。僕は彼の手の中からもがき出て、飛び立ったが、すぐに石のように「ポトン」と落ちてしまった。
 「畜生、羽を縛っておいたからよかったが、そうでなかったらどこかに行っちまうところだ。」
 彼は僕を袋の中に入れ、どこかに連れていった。彼は僕の翼をもっときつく縛って、鉄のかごの中に入れた。鉄かごにいた何羽かのハトは、一斉に片隅に身を寄せた。
 「お前はすごく腹が減っているみたいだな。そうでなきゃ俺の罠に引っ掛かるわけがない。」そう言うと、彼は鉄かごの中に餌を撒いて、水を入れた。ハト達は一斉に食べ始めた。この時僕の怒りは極点に達した。もしできるのなら、頭をぶつけてかごの中で死にたかった。だけど、翼がきつく縛られていたから、少しも動けなかった。僕は無理に頭を上げ、頭上の太陽を見た。ああ、家を出発して1日にもならないのに、人の手に落ちてしまった。ああ、もし母さんが見たらなんて思うだろう? 僕は力尽きて地面に横たわった。

奴隷のように生きるか勇敢に死ぬか?

 夢の中で紺碧の空の向こうから僕を呼んでいる母さんを見た。突然、父さんもその横に現れた。がっちりした父さんの体を僕は誇りに感じた。彼らは僕を呼んでいるようだった。少なくとも僕は彼らの呼び声を聞いたように感じた。僕は彼らの方に向かって飛んだ。飛べば飛ぶほど彼らは遠くなった。僕が飛ぶのをやめると彼らも止まった。飛び続けたので、僕は口がカラカラに乾いた。「母さん、水!」僕は叫んで目が覚めた。あの若い男が僕の目の前にいた。
 「このハトはなんて強情なんだ。もう5日も何も食べてない。」
 「だから、餌付けできないって言っただろう」不機嫌そうにあの時の年上の男が言った。
 「このままだったら死んでしまうから、子供のためにスープをとろう。」
 「どれだけ出汁が出るっていうんだ。いま食べたら病気になるかもしれないよ。放してやれよ。こんな風にゆっくり死なすのはかわいそう過ぎる。」
 「だけど、放したからって何もいいことはないじゃないか。」
 「このままだって、いいことはないさ。」
 「最初からスープにすればよかった。」そう言いながら、若い男は僕の束縛を解いて、かごの床に放した。紺碧の空に、強い日差しがさしていた。僕は全身の力を振り絞って飛び立とうとしたが、鉄の網に行く手を遮っていた。ここ数日、自分の体で鉄かごを破ることはできないと感じていた。それでも僕は体中の力を集めて鉄かごにぶつかっていった。網を破ろうと思ったが、鉄かごはとても丈夫にできていた。この技術は人類の最高の知恵の結晶だろう。中からは外の自由な広い世界を見られるが、自由を得ることは絶対に不可能だ。
 鉄かごの中の空気は外と同じだが、生活は全く違う。鉄かごを作った人は、腹黒い人たちなのだろう。僕がこの小さな体で、自由のために不屈に戦っていることは、少しも彼らの心を動かさない。彼らは、僕が何の役にも立たないことをはっきり分かっているのに、僕の魂を奴隷にしようとしている。彼らは徒手空拳の小さな命を虐待することによって、彼らの目的を達しようとしている。もっとも卑劣なのは、彼らが僕を死のうと思っても死ねない状態においていることだ。僕は心の底から絶望的に叫んだ「ああ、自由の虐殺者、冷酷な人類よ、僕を殺すか、さもなければ自由を返せ!」
 突然、僕はよく知っている匂いを嗅いだ。すると僕の体に元気が湧いて来た。「母さん…」僕は興奮して頭を上げた。母さんのまなざしは緊張していた。彼女は悲しそうに僕の抜かれた羽毛、割れて垂れ下がったくちばし、汚れてねじれた翼を見た。

究極の自由

 「母さん、ごめんなさい。僕は母さんの息子として全然ふさわしくなかった。僕は母さんの息子として失格だね。」僕はまるで犯罪者のようにうつむいて言った。僕は恥ずかしさと後悔で、母さんが来る前になぜ死ねなかったのかと思った。
 「いいえ、お前はできることはすべてやったわ。もう終わらせる時よ。」
 「でも母さん。僕は囚われの身になって、死のうと思っても死ねないほど力をなくしてしまった。」
 「それは分かるわ。私が来たのはお前を自由にするためよ。」
 「僕の今の状態は、母さんの息子としてふさわしくないから、今は自由は要らないよ。」
 「私はお前に自由を持って来たのよ。お前は私の勇敢な息子だから、奴隷のように生きるのではなく、勇敢に死ななくてはいけないわ」彼女はそういうとお腹の中から食べ物を取りだした。「これは毒イチゴよ。これを食べたら彼らの辱めから脱することができるわ。それはまた私たちの群れの名誉を守ることにもなるのよ。覚えておきなさい。自由は決して祈りによって得られるものではないの。自由のためには、必ず代償を払わなければならないのよ。くちばしを近づけて。」
 僕は最後に母さんのしっかりとしたまなざしを見た。彼女はこんなにも安心し、こんなにも勇敢だ。僕は割れて垂れ下がったくちばしを彼女に向けて伸ばした。くちばしは僕の一番強い武器だが、自由の敵、金網の犠牲になってしまった。僕のくちばしがこの冷酷な金網に激突したとき、こんな風に割れてしまった。僕の体に入る毒イチゴは、自由の代弁者だ。最後に僕は自由のために死ぬチャンスを得たことに慰めを感じた。僕の魂は、解脱の中で燃え始めた。空はこんなに晴れ渡り、周りはこんなに静かで、世界は依然としてこんなにも美しい。かご隅に集まったハトたちが、怪訝そうな目で僕を見ていた。〔完〕
                    2004年3月24日 マラルベシにて

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