実は紛争の発生は怖いことではありません。現代社会ではどこでも多くの紛争が発生しますが、権威ある司法機関があれば社会は安定します。西側でも、台湾でも、紛争が起きたら裁判所に訴えます。中国の民衆はそれができますか? できません。裁判所に訴えなさいと言ったら、民衆はみんな裁判官なんか信じられない!と言います。中国の弁護士に聞いても、信じられないと言います。なぜなら中国では法律をベースラインにしていない、そのような制度ではないからです! そうしたら民衆は、裁判所がどう裁こうと、陳情します! 陳情は信じられますか? やはり信じられません。ジュリーという名のアメリカ人は、彼女の中国人の夫のために北京に陳情に来ている外人です。彼女は教えを請いに私の家に来たことがありました。私は彼女に「アメリカだったらどうしますか?」と聞きました。彼女は「必ず裁判所に訴えます」と答えました。私は「ではなぜ中国で陳情するのですか?」と聞きました。彼女は「中国の裁判所は中央政府の話を聞かないから、裁判所に話を聞いてもらうために直接中央に訴えるのです」と言っていました。彼女は「効果はありませんでした。私が陳情する前はまだ逮捕しなかったけれど、陳情したら夫を逮捕してしまいました陳情したら地方政府にとって面倒なことになったので、既決事件にするために彼を裁いてしまいました」と言っていました。我が国には権威ある司法制度がないのです。
また、我が国に本当の代議制度があるでしょうか? ありません。今日お越しの弁護士のうち、何人が本当に投票して人民代表を選んだでしょうか? ありませんね。私たちは自分の代表が誰か知りませんし、知っていても役に立ちません。相手もあんたに選ばれたわけじゃないと言うでしょう。私は「三つの代表」〔江沢民が総書記在任中の2000年に提唱した主張〕しか知りませんが、その三つの代表を探し出せません! 我が国の代議制度が不健全だからです。
最後に、我が国に開かれたメディアがあるでしょうか? これもありません。今日のインターネットが空間を提供しているとはみなせません、インターネットの規制ができないだけです! 別の方法があれば、政府はインターネットも不要だと言うでしょう! いま新疆ではインターネットにアクセスできないんですよ。法学界でとても有名な賀衛方は私の友人ですが、いま〔追放されて〕石河子にいます。彼の最大の苦痛は私たちと連絡が取れないことだと言っていました。ショートメッセージは受信できず、インターネットには接続できないのです。私は誰があなたを石河子に飛ばしたんですかと聞きました。
中国はいつも、中国は以前よりずっと開放されたと言います。しかしそれは科学的な原因によるもので、政府自体の原因ではありません。政府の統治理念が変化したのではないのです。このような状況に直面して、一部の地方政府の役人は自分たちの仕事を批判してくれ、と言っています。本当に批判できますか? 当たり障りのないことを言うスタンドプレーならともかく、本当に彼らを批判したら、すぐに首になったり、省を越えて追いかけられたりするでしょう! そこで私はいろいろ考えて、円満な社会実現のためには明確な財産権、権威ある司法、本当の代議制、開かれたメディアが必要だと思い至りました。
今日の中国ではどれも実現が難しいですが、私は特に法律が重要だと感じています。(PPT)これは私が18日に蘇州に講演行ったときに撮ったものです。往来に「打倒無法政府」というスローガンが一つ吊るされています。なぜでしょう? 強制収用です。無法政府という言い方は面白い、法律のない政府です。庶民はいま腐敗政府と言わずに、無法政府と言っています。法律は多分私たちの社会のベースラインでしょう。ですから私は繰り返し、中国の司法はこの社会のベースラインになりうるかを問いかけています。私は中国の司法は中国のベースラインとなるべきだと思いますが、それができないのです!
中国の司法はいま多くの問題を抱えています。中心的な問題は、司法の地方化がますます顕著になり、司法が利益集団に支配される状況がますます明確になっていることです。政党が司法を管理するというのが、魏汝久弁護士の考え方です。「共産党の書記が人事を握り、市長が資金を握り、共産党政法委員会が裁判を握っている」。これはみなさんの法律界の非常に有名な人が、中央指導者に講義をした時の発言です。何年か前、彼が講義をして間もなく、中国政法大学が学生に土地問題について講義するよう、私を呼びました。話し終って帰ろうとしたら、学生が政法大学の学生むけに何か提案をしてほしいと言い出しました。私は有名人でもないし、国の指導者でもないのに、どんな提案ができますか? と聞きました。学生がそれでも提案してほしいと言ったので、私は次のように言いました。中国という宗教的信仰心のない国家で、政府がすでに部分的に合法性を失っている国家で、政党のイデオロギーが崩壊しつつある国家で、私たち法律家は法律という社会のベースラインを守らなければなりません。社会のベースラインを守るとは、つまり社会の未来を守ることであり、民族の未来を守ることであり、私たちの子孫の未来を守ることなんです!
私が話し終ると、もともと帰りかけていた人――彼は今の政法大学のトップリーダーですが――が勇んでマイクを奪って次のように言いました。「于先生は今政法大学の人がベースラインを守らなければならないと言いました。それは間違いではありませんが、私たちに守れますか? 守れないでしょ! 何日か前に政法大学で開校記念日を祝った時、湖南省高等裁判所の副裁判所長が学校に来ました。彼は『共産党書記が人事を握っているから、誰を裁判所長にするか、だれを検事長にするかは共産党委員会が決める。市長が金を握っているから、裁判所庁舎を建てようとしても、市長が認めなければ予算が出ない。共産党政法委員会が裁判を握っているから、我々に良心があっても手の打ちようがないんです!』と言っていました」。
その人が話し終って、私はそのままにして立ち去ろうとしました。ところが例の学生がまた立ちあがって、「于先生今の副裁判所長の発言に対する評価を聞かせてください」と言いました。私は「私は評価できません、私を講演に呼んで講演料までくれたのに、評価なんてできますか?」と言いました。
学生は「ちゃんと評価してください」と言いました。私は「本当に私に評価してくれと言うなら、評価しましょう。私は彼のようないわゆる著名な法学者が一体どんな資格があって政法大学の講壇に立っているのか分かりません! 『共産党書記が人事を握り、市長が金を握り、共産党政法委員会が裁判を握っている』とは何ですか? もし我々に打つ手がないのなら、中国の全ての法律家がみんなで職をかけて対抗すべきじゃないですか」と言いました。厄介なことになりました。私は話し終るとかばんを持って走り去りました。ばつが悪かったんです。次の日、于建が某氏を叱責したという書き込みがありました。某さんは何年かわたしと口を利きませんでした。同じ会議に参加しても、彼は知らんぷりをしていました。ですが今は仲直りしました。少し前にある土地紛争について、彼はまた私を会議に呼んでくれました。そこで彼は私に聞いて来ました。「于建君、君は私があの時間違ったことを言ったと本当に思っているのかい? 君は悪いやつだね。私の学生に職をなげうつようあおって、本当にみんなやめたらどうするんだ?」。
私は「あなたは別に間違ったことは言っていません。中国の現実は確かに、司法を書記と市長と政法委員会が握っている。ですが、学生の信念を失わせることはないでしょう! 中国は大勢の法律を擁護するという信念を持った人材が必要なんです。私たちが法律を守るという信念を堅持してはじめて中国には未来があるんです! あなたは教師として学生に何であんなことが言えるんですか?」と言いました。
出典:http://www.chinaelections.org/newsinfo.asp?newsid=169507
(転載自由・要出典明記)
関連記事:
社会安定のベースラインを守るために(1)
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/3d9b7c69e6a560faae20b62a338ec1e4
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http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/68c0c153f2ed66b144393aa139edf448
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http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/ba9f6e854d7e94740fd42587392474e3
社会安定のベースラインを守るために(9)
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/bca89623778adeb768f8fdd5ba6c2748
社会安定のベースラインを守るために(10・完)
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/4e1c8327a310eff2efa1f9a048ddbd81
また、我が国に本当の代議制度があるでしょうか? ありません。今日お越しの弁護士のうち、何人が本当に投票して人民代表を選んだでしょうか? ありませんね。私たちは自分の代表が誰か知りませんし、知っていても役に立ちません。相手もあんたに選ばれたわけじゃないと言うでしょう。私は「三つの代表」〔江沢民が総書記在任中の2000年に提唱した主張〕しか知りませんが、その三つの代表を探し出せません! 我が国の代議制度が不健全だからです。
最後に、我が国に開かれたメディアがあるでしょうか? これもありません。今日のインターネットが空間を提供しているとはみなせません、インターネットの規制ができないだけです! 別の方法があれば、政府はインターネットも不要だと言うでしょう! いま新疆ではインターネットにアクセスできないんですよ。法学界でとても有名な賀衛方は私の友人ですが、いま〔追放されて〕石河子にいます。彼の最大の苦痛は私たちと連絡が取れないことだと言っていました。ショートメッセージは受信できず、インターネットには接続できないのです。私は誰があなたを石河子に飛ばしたんですかと聞きました。
中国はいつも、中国は以前よりずっと開放されたと言います。しかしそれは科学的な原因によるもので、政府自体の原因ではありません。政府の統治理念が変化したのではないのです。このような状況に直面して、一部の地方政府の役人は自分たちの仕事を批判してくれ、と言っています。本当に批判できますか? 当たり障りのないことを言うスタンドプレーならともかく、本当に彼らを批判したら、すぐに首になったり、省を越えて追いかけられたりするでしょう! そこで私はいろいろ考えて、円満な社会実現のためには明確な財産権、権威ある司法、本当の代議制、開かれたメディアが必要だと思い至りました。
今日の中国ではどれも実現が難しいですが、私は特に法律が重要だと感じています。(PPT)これは私が18日に蘇州に講演行ったときに撮ったものです。往来に「打倒無法政府」というスローガンが一つ吊るされています。なぜでしょう? 強制収用です。無法政府という言い方は面白い、法律のない政府です。庶民はいま腐敗政府と言わずに、無法政府と言っています。法律は多分私たちの社会のベースラインでしょう。ですから私は繰り返し、中国の司法はこの社会のベースラインになりうるかを問いかけています。私は中国の司法は中国のベースラインとなるべきだと思いますが、それができないのです!
中国の司法はいま多くの問題を抱えています。中心的な問題は、司法の地方化がますます顕著になり、司法が利益集団に支配される状況がますます明確になっていることです。政党が司法を管理するというのが、魏汝久弁護士の考え方です。「共産党の書記が人事を握り、市長が資金を握り、共産党政法委員会が裁判を握っている」。これはみなさんの法律界の非常に有名な人が、中央指導者に講義をした時の発言です。何年か前、彼が講義をして間もなく、中国政法大学が学生に土地問題について講義するよう、私を呼びました。話し終って帰ろうとしたら、学生が政法大学の学生むけに何か提案をしてほしいと言い出しました。私は有名人でもないし、国の指導者でもないのに、どんな提案ができますか? と聞きました。学生がそれでも提案してほしいと言ったので、私は次のように言いました。中国という宗教的信仰心のない国家で、政府がすでに部分的に合法性を失っている国家で、政党のイデオロギーが崩壊しつつある国家で、私たち法律家は法律という社会のベースラインを守らなければなりません。社会のベースラインを守るとは、つまり社会の未来を守ることであり、民族の未来を守ることであり、私たちの子孫の未来を守ることなんです!
私が話し終ると、もともと帰りかけていた人――彼は今の政法大学のトップリーダーですが――が勇んでマイクを奪って次のように言いました。「于先生は今政法大学の人がベースラインを守らなければならないと言いました。それは間違いではありませんが、私たちに守れますか? 守れないでしょ! 何日か前に政法大学で開校記念日を祝った時、湖南省高等裁判所の副裁判所長が学校に来ました。彼は『共産党書記が人事を握っているから、誰を裁判所長にするか、だれを検事長にするかは共産党委員会が決める。市長が金を握っているから、裁判所庁舎を建てようとしても、市長が認めなければ予算が出ない。共産党政法委員会が裁判を握っているから、我々に良心があっても手の打ちようがないんです!』と言っていました」。
その人が話し終って、私はそのままにして立ち去ろうとしました。ところが例の学生がまた立ちあがって、「于先生今の副裁判所長の発言に対する評価を聞かせてください」と言いました。私は「私は評価できません、私を講演に呼んで講演料までくれたのに、評価なんてできますか?」と言いました。
学生は「ちゃんと評価してください」と言いました。私は「本当に私に評価してくれと言うなら、評価しましょう。私は彼のようないわゆる著名な法学者が一体どんな資格があって政法大学の講壇に立っているのか分かりません! 『共産党書記が人事を握り、市長が金を握り、共産党政法委員会が裁判を握っている』とは何ですか? もし我々に打つ手がないのなら、中国の全ての法律家がみんなで職をかけて対抗すべきじゃないですか」と言いました。厄介なことになりました。私は話し終るとかばんを持って走り去りました。ばつが悪かったんです。次の日、于建が某氏を叱責したという書き込みがありました。某さんは何年かわたしと口を利きませんでした。同じ会議に参加しても、彼は知らんぷりをしていました。ですが今は仲直りしました。少し前にある土地紛争について、彼はまた私を会議に呼んでくれました。そこで彼は私に聞いて来ました。「于建君、君は私があの時間違ったことを言ったと本当に思っているのかい? 君は悪いやつだね。私の学生に職をなげうつようあおって、本当にみんなやめたらどうするんだ?」。
私は「あなたは別に間違ったことは言っていません。中国の現実は確かに、司法を書記と市長と政法委員会が握っている。ですが、学生の信念を失わせることはないでしょう! 中国は大勢の法律を擁護するという信念を持った人材が必要なんです。私たちが法律を守るという信念を堅持してはじめて中国には未来があるんです! あなたは教師として学生に何であんなことが言えるんですか?」と言いました。
出典:http://www.chinaelections.org/newsinfo.asp?newsid=169507
(転載自由・要出典明記)
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