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龍応台:『大江大海1949』まえがき

2009-11-20 12:01:59 | Weblog

龍応台:『大江大海1949』まえがき

時代に踏みにじられ、辱められ、傷つけられた全ての人に敬意をこめて

彼らはかつて元気いっぱいで、青春真っ盛りでした。
ある人は国家に心を動かされ、理想に心高ぶり、
ある人は貧しさに迫られ、境遇に引きずられ、
戦場に連れて行かれて、荒野で飢え凍え、谷に死体を曝しました。
時代の鉄輪が、彼らの体を轢いて行きました。
その烽火に生き残った者も、一生動揺し、万里をさまよい続けました。

彼らの世代が戦争の重圧に耐え、離散の傷に耐えてきたからこそ、
彼らが倒れて血を流した場所に、再び頭を垂れて種をまいたからこそ、
私たちの世代が、平和の中で無邪気で伸びやかに育つことができたのです。

もし誰かが、彼らのことを戦争の「敗北者」と言うなら、
時代に踏みにじられ、辱められ、傷つけられた全ての人が皆「敗北者」です。
まさに彼らこそが、「敗北」によって私たちに何が本当に追求すべき価値なのかを教えてくれたのです。

私の目を見つめて、誠実に答えてください。
戦争に、「勝利者」はいますか?

私は、「敗北者」の子供世代であることを誇りに思います。

 


龍応台『大江大海1949』天下雑誌股份有限公司、台北、2009年8月31日

http://www.books.com.tw/exep/prod/booksfile.php?item=0010444559