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消費構造の変遷と音楽消費(粗っぽい仮説) ④

2010年01月25日 | 消費構造の変遷と音楽消費-粗っぽい仮説
前回(第3回目)、ご紹介した小泉恭子氏の「音楽の三層構造」ですが、これは「モデル」です。

つまり、個人の音楽嗜好・履歴にあてはめることもできますし、
世の中の概念としての「音楽カテゴリー」(ジャンルではありません)として考えることも可能です。
但し、お読みの皆さんには、言わずもがなとは思いますが、三層間の流動性は高い。

例えば、個人の中の「コモン・ミュージック」にカテゴライズされるある曲が、
時間の経過と嗜好の変化から、いつの間にか「パーソナル・ミュージック」に、ということもあるでしょう。

『のだめ』ナンタラカンタラをTVや映画で観て、クラシックにはまった人の中には、
初めて触れたある曲が、(世間的な)「スタンダード・ミュージック」から、
(個人的な)「パーソナル・ミュージック」へ、なんてことがあったり。

自分が一番輝いてたあの頃のあの曲が、
Aさんにとってはかけがえのない「パーソナル・ミュージック」、
でも同年代のBさんにとっては懐かしさを感じつつも、
単なる「コモン・ミュージック」でしかない、なんてことはよくあるでしょう。

購買行動と絡めて単純化すれば、
「嵐」のパッケージ商品をバカスカ買う人にとって「嵐」は「パソナル・ミュージック」。
でも、モバイルの無料で十分、という人にとっては「コモン・ミュージック」。
買うにしてもレンタルしても、せいぜいシングルといったところ。

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業界の内外を問わず、「CDが売れねぇ」 なんて言われ続けて10年以上。
11年連続の前年割れで、2009年の生産額は16%減。
2桁減なんてまるで百貨店業界。
百貨店の場合、業態自体のアイデンティティの問題が根底にあるわけですけど。
(気が向いて、時間もあったら、いずれ百貨店のことも触れるかもしれません)

昨年末、今月に閉店してしまったHMV新宿サウス店の寂しい店内を歩いていて連想したのも、百貨店業界のことでした。
私も以前、当時のグループ会社のCDショップ閉店処理の仕事したことありましたが、
そりゃ寂しく、虚しいもんでした。
でも、昨年末のサウス店を歩きながら思ったことは、もっと深刻。
「こういう価格のこういう商品のビジネスモデルって・・・」。
「そもそも、“バリュー・ライン”がねぇ・・・」

「若い人達の消費が携帯に」という言い訳が耳にタコができるほど。
「違法ダウンロードが云々・・・」もね。

その辺の詳しい話はきりがないのでこの場では、なんですが、
「音楽の三層構造」モデルで考えると、まず「コモン・ミュージック」でしょうね。

「音楽はコミュニケーション・ツール」
やはり数年前からよく言われてることです。

第1回、第2回でも書きましたが、
若者(便宜的に10代、20代を一緒くたにしてます)は、
多層的な仲間うちの「同調型コミュニケーション」で大忙し、
お金の使い方も、ネットワークのインフラ維持で精一杯(しかも貯金もする)。

『情報病』の著者の一人(若いほう)、
原田曜平氏執筆の『近頃の若者はなぜダメなのか』が先日、刊行されましたが、
原田氏は、“ケータイネイティブ”達のネットワークを「新村社会」と呼んでいます。



(注)まえがきを読んで頂ければわかりますが、
原田氏は決して「若者がダメ」とは言ってませんし、むしろ逆です。
このタイトルは、光文社さんの見え透いたマーケティング戦術でしょう。

「CDはマスター」。
これもよく聞く話です。
マスター1枚あれば、コピーして友人にシェアできるし、それでOK。
(しかも、“マスター”は購入商品とは限らない・・・)

私もここで安易で思考停止的な 「若者批判」 なんてする気はありません。

そもそも、ヒットを追い求めるあまり、
「コモン・ミュージック」の世界を肥大化させてきたのは、
供給サイドである音楽業界なのです。

80年代のデジタル化=CDフォーマットの普及によって、マーケットを拡大させ、
90年代、ドラマとのタイアップ戦略で“CDバブル”。
「今のトレンドはこうなっていて、これがあなたの聴きたい曲です」。
そういう“上から目線”の“マーケティング”が効いていた。

そして、カラオケ。最強のコミュニケーション・ツールですよね。
90年代、ソニーのSDさんからオファーを受けてた友人のロックバンドは、
「これじゃ、カラオケで(素人が)歌えないね」とダメ出しされてました。
「素人がそう簡単に真似できないことを歌ったり演奏するのがプロなんじゃないかぃ?」
と私は内心思ったもんです。

時代の空気を読むのは大いに結構なんですが、
将来の“グランドデザイン”もなしに、僅かな若者のお財布を巡って、
戦略なき戦術で(当人たちは「戦略」と思ってるんでしょうけど)、目先の利益を求める。
(ビジネスマンとしては、事情はわかりますけどね・・・)
そもそも、80年代の“デジタル化”の進化形態こそ今の状況なんです。
しかし、その“恩恵”のほうが大き過ぎたんですね。
そして、時代と時代の主役たる生活者の消費構造が変化しても、
過去の“成功体験”から脱することができない。
“マーケティングのパラドクス”でしょう。
結果、音楽マーケットは80年代後半のスケールに。。。

“消費財”としての音楽商品(ひいてはアーティストやミュージシャン)。
しかも、マス向けなので、会社の規模も内容もそれなりに拡大。
CD不況になって、ダウンサイジングに迫られれば、リストラの嵐。
メーカもディーラーも優秀な人達からいなくなっていった。
(今は、そんなの関係なくのようですが・・・)

かつて音楽(商品)は、嗜好品と言われてました。
嗜好性という根本を考えれば、
「パーソナル・ミュージック」って重要ですよね。
まだ詳細に検証したわけじゃないんですが、
時間の経過の中で(いつの間にか)、「スタンダード・ミュージック」の地位を得る曲って、
ある時期(時代)、「コモン・ミュージック」であったにせよ、
やっぱ、多くの人達にとって「パーソナル・ミュージック」であったんじゃないでしょうかね。

粗っぽく言うと、どうせダウンサイジングした業界ならば、
「コモン・ミュージック」に当たる曲、“市場価値”が見極めらない新人は、
デジタル配信(モバイル配信)で流して (でないと違法DLは減りません)、
一方で、今までないがしろにしてきた“音楽ファン”に向けた、
高付加価値商品の開発にも注力していくべきじゃないんでしょうか?

すでに若者に限らず、世間のユーザーから“なめれている”んです。
(ヘビーユーザー、ライトユーザー問わずね)
いや、既になめられるを通り越して、見捨てられたかな?

少子高齢化で、若年層の人口構成比が低下。
今まで無視してきた 「スペンディング・カーブ」 にも売らにゃならん、
ということで、とりあえず 「もう一度、妻を口説こう。」 なんてコピーのコンピでね、
「売れた! 売れた!」なんてはしゃがれてもね、大勢は変わらんわけですよ。

(注)「スペンディング・カーブ」
 結婚してローンと教育費で趣味・嗜好品の支出が減少するかつての「標準世帯」。
 昔、私を救って頂いた㈱ガウス生活心理研究所の故 油谷遵先生が使われていた用語。

2000年代中頃からの「韓流ブーム」。
昨年のビートルズのボックスのバカ売れ。

これらは、業界がターゲットから外してきた人々が主役の現象です。

「俺らには、懐メロのコンピやリマスターあてがっときゃいいんかい!?」
「俺らが唸るような、スンゲェ アーティストや曲を出してみんかい」

一音楽ユーザーとしてのオッサンはこう思いますが。。。
余計なおせっかいかもね(笑)。
自分には、大切な「パーソナル・ミュージック」のカタログは揃っちゃってるからね。
別に困らんよ。

でもね、新しい“刺激”を求めてるのも事実なんです。
世の中も面白くなりますしね。

若年層だってね、昔の自分の調査結果でもそうでしたけど、
10代後半から20代前半って、CD購入意向は高いんですよ。
これってある程度普遍性があることなんです。
「意向」は「意向」でしかないですけどね。

また、第2回のときに触れましたけど、
90年以降に生まれた人=新成人たちは、
その上の世代(現在の20代後半)より音楽関与度は高い。

肝心なのは、“バリュー・ライン”でしょうね。
「意向」を「行動」に結び付けるための。
「なぜ安いのか?」「なぜ高いのか?」の説得力のある理由づけも忘れずに。

長くなりましたが、次回はもっと大きな「時間の流れ」で、
トレンドというものを考えてみたいと思います。
音楽だけの話でなく、マクロ的に。
(「今年はこれが流行る!」とか、そういう話ではありません)

勿論、別の記事を入れたりするんで、いつになるかは・・・?です。

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